東京都江東区の亀戸天神社は初夏の藤や早春の梅の名所として知られ、花の天神様と謳われている。梅の花が咲き始めた二月下旬、亀戸天神社を訪ねた。
早春の亀戸天神社
早春の亀戸天神社
「東風吹かば 匂ひおこせよ 梅の花 あるじなしとて 春な忘れそ」と、菅原道真は京を去る時に詠んだ。その梅は一夜にして太宰府の菅原道真のもとへと飛んでいったという。いわゆる「飛び梅」伝説である。その菅原道真を祀る天神社であるならば、その境内に梅を多く植えるのも当然のことか。

東京都江東区の亀戸天神社は初夏の藤の名所として広く知られているが、早春の梅もまた見事で、毎年多くの観梅客を集めている。市街地の中の天神社の境内だから野趣には乏しいが、端正に剪定された梅が境内を彩る様子はなかなか良い風情があって見応えのあるものだ。境内には50種類、300本ほどの梅が植えられているらしく、早いものは正月明けた頃から咲き始め、2月中旬から3月上旬にかけて見頃を迎える。亀戸天神社の梅は剪定から梅の実取りまで、ほとんどの作業を神職自ら行っているという。そうした日頃の手入れに応えるように、紅白の梅が美しい姿で咲き誇る。
早春の亀戸天神社
今回訪れたのは2月の下旬だったが、今年(2008年)は各地で梅の開花が遅く、ここ亀戸天神社でも残念ながらまだ咲き揃ってはいなかった。それでも観梅客の姿は多い。そもそも梅というものは蕾の中に花を咲かせ始めた頃を愛でるのが「風流」なのだという。菅原道真を祀る天神社の梅であるならば、古人(いにしえびと)の嗜み方に倣ってようやくほころび始めた梅の花に早い春の訪れを感じて楽しむことにしよう。
早春の亀戸天神社
こうした神社の境内では、よく木々の枝におみくじが結びつけられている光景を目にするものだが、亀戸天神社では梅の木におみくじが結びつけられて梅の木を痛めてしまうのを防ぐために「おみくじ結び所」が設けられている。張られた縄に結びつけられた数多くのおみくじが、まるで花のように見えてしまうのも面白い。
早春の亀戸天神社
天神社の祭神である菅原道真は学問の神様として人々の信仰を集めている。この時期、受験シーズンもそろそろ一段落といったところだろうか。合格祈願の絵馬が数多く奉納されており、合格祈願のために参拝に訪れた人の多さを物語っている。彼らにも春は訪れただろうか。
参考情報
本欄の内容は亀戸天神社関連ページ共通です
交通
亀戸天神社へはJR総武線「亀戸駅」、JR総武線「錦糸町駅」、東京メトロ半蔵門線「錦糸町駅」から徒歩十数分というところか。少しばかり総武線亀戸駅の方が近いようだが、それほど大きな違いはない。

車で訪れる場合は首都高速7号小松川線の錦糸町ICを利用するのが近い。亀戸天神社にも参拝者用の駐車場があるが、規模の大きなものではない。駅周辺に民間駐車場が点在しているので、それらを利用してもよいだろう。

飲食
亀戸天神社の北側にはあまり飲食店はないようだが、南側の蔵前橋通沿いから亀戸駅にかけての商店街に飲食店が数多い。

周辺
亀戸天神社東側の道路を北へ辿って行くと、やがて北十間川を越えて墨田区となり、さらに進むと東武亀戸線小村井駅南方の市街地の中にひっそりと香取神社があり、神社の境内に梅園が設けられている。規模は小さいが梅の種類や数はなかなかのものだ。亀戸天神社から歩いて十数分といったところだ。併せて訪ねてみるといい。なお、江東区亀戸三丁目の「明治通」沿いには亀戸の香取神社があり、距離も近いが、小村井の香取神社とは別の神社なので注意が必要だ。

小村井駅からさらに西方へと歩くと京島の町だ。京島の町は戦災を免れたところで、戦前の建物が残り、下町情緒溢れる商店街もある。足を延ばしてみるのも楽しい。
梅散歩
東京23区散歩