公園は旧流路の地形をそのまま利用した細長い窪地と、“河岸”の散策路などから構成されている。窪地はまさに“川の跡”という様子で、数メートルの高さの石垣に挟まれ、その中が親水施設として整備されている。両岸には桜を中心とした木々が枝を広げ、園内は緑に包まれた印象だ。施設内にはせせらぎが流れ、小さな滝も設けられている。この滝はかつての「王子七滝」のひとつである「権現の滝」を再現したものという。中央部に架かる木造の橋は1958年(昭和33年)の狩野川台風で流された橋を復元したものだそうだ。せせらぎを流れる水は濾過装置を用いた循環水で、夏には水遊びを楽しむ子どもたちで大いに賑わうのだそうだ。訪れたのは六月だったが、すでに一組の親子が水遊びを楽しんでいた。
この親水施設はもちろん人工的に造られたもので、“自然のままの姿を彷彿とさせる”とは言い難い。それでも市街地の直中にこれほどの緑濃い親水施設があるというのは驚きに値するものかもしれない。かつて、昭和30年代から昭和40年代にかけての高度成長期、都市の河川は生活排水で汚れ、治水工事によって護岸が固められ、巨大な排水溝のような有様になってしまった。それから時代が巡り、河川の改修工事によって残された旧流路に昔のような清流を取り戻したいというのは地域の人たちの切実な思いだったのだろう。その成果として、この音無親水公園はある。小さな公園であるにもかかわらず「日本の都市公園100選」に選定されているのは、そうした意義が認められたからだろう。