日野市南平
南平丘陵公園
Visited in June 2008
日野市南平八丁目に南平丘陵公園という自然溢れる公園がある。公園の南東側には多摩動物公園が背中合わせのように隣接しており、多摩動物公園と同じ丘陵の南と北をそれぞれが利用していると言ってもいいかもしれない。公園は多摩丘陵の地形と樹林とをそのまま利用して造られたもののようで、樹林の中を縫うように辿る散策路は起伏に富み、野趣溢れる散策が楽しめる。
公園は東側が高く、西側の低い丘陵地の斜面に当たっており、住宅街に面した西側にメインエントランスが設けられている。そのすぐ南側には東京都立南平高校が建っており、公園内の散策路からも高校の校舎が見え隠れする。メインエントランスから公園内に入ると左手に管理所が置かれ、その前は小さな谷戸の地形を利用したちょっとした広場になっている。広場の最も奥まったところは小さな野外ステージが造られており、地域のイベントが行われることもあるようだ。野外ステージの傍らには印象的にホウの木が立っている。
その広場のあちこちから周囲の丘陵へとさまざまに散策路が登っている。管理所手前から北側の尾根に上ってゆくと、尾根上の広場にフィールドアスレチック風の木製遊具がいくつか置かれている。尾根筋がそのまま散策路となっており、管理所のある広場の周囲を一巡りするように南側の尾根へと辿って降りてくることもできる。尾根筋の散策路からは眺望も良く、木々からは鳥のさえずりが聞こえ、吹き渡る風も爽快だ。北野街道や京王線の線路もそれほど遠くはないはずだが、車や電車の音はずいぶんと遠くから聞こえる感覚があり、それがかえって静けさを際だたせているようにも思える。この尾根筋を辿っての散策の愉しみだけでも、充分にこの公園の魅力だと言っていいだろう。
尾根筋の散策路には南東側に分岐があり、そこから公園東側の谷戸に設けられた「ひょうたん池」へと降りてゆくことができる。途中には「展望台」も設けられ、「展望台」からは北方への眺望が楽しめる。冬になって木々が葉を落とせばさらに眺望は開けることだろう。尾根筋の散策路と「ひょうたん池」とを繋ぐ小径はかなりの急坂だ。小径はもちろん階段状に整備されているが、降りるときには設けられた手すりを掴み、一段一段足元を確かめながら慎重に降りなくてはならなかった。丘陵地を利用して造られた公園は少なくないが、これほどの急坂の散策路があるのは珍しい。
尾根筋の散策路から「ひょうたん池」のある谷戸へと降りると、谷戸の奥まったところに吊り橋が設けられている。吊り橋はもちろん堅牢に造られたものだが、それでもやはり吊り橋、歩くとふわりふわりと小さく揺れるのが楽しい。「ひょうたん池」は湧き水を集めた池らしい。谷戸の奥に静かに横たわり、岸辺には四阿が設けられている。周囲には鬱蒼と木々が茂り、辺りは薄暗いほどだ。「ひょうたん池」から北へ散策路が辿り、住宅街へと抜け出ることができる。散策路脇には小川が流れており、その岸辺で紫陽花が花を咲かせ始めていた。
南平丘陵公園は京王線南平駅から歩いても10分ほどの距離だ。京王線の南側には北野街道が通り、駅周辺には店舗なども建ち並んで繁華な佇まいを見せる。そこから遠くないところにこれほどの自然を残した公園があるというのは素晴らしいことだろうと思える。遊具は丘上の木製遊具しかなく、小さな子どもたちの遊び場としては少し物足りないかもしれない。4ヘクタールほどの面積は決して規模の大きなものではなく、園内のほとんどを樹林が占めているためにあまり大きな公園という印象はないが、尾根筋の散策路や池を抱えた谷戸の佇まい、吊り橋など、野趣に富んだ散策が楽しめるのは嬉しい。園内にはスズメバチやマムシに注意するようにとの旨の警告がある。散策の際には注意を怠ってはいけない。また尾根筋の散策路はもちろん未舗装で、「ひょうたん池」とを繋ぐ坂道は前述したようにかなり勾配がきつい。訪れる際にはしっかりとした靴、できればトレッキングシューズなどを履いてゆくのをお勧めする。