横浜線沿線散歩街角散歩
日野市旭が丘〜八王子市高倉町
旭が丘から高倉町へ
April 2015
旭が丘から高倉町へ
新緑も眩しい四月の下旬、JR中央線豊田駅に降りた。豊田駅から日野市旭が丘の町を抜け、八王子市高倉町へと辿ってJR八高線北八王子駅を目指そうと思ったのだった。この辺りは主要道を車で通り抜けることは多いが、町中を歩いてみることはほとんどなかった。気の向くままにルートを選んで歩いてみたい。
豊田駅前交差点
JR中央線を豊田駅で降り、北口へ出る。春の日差しの中、駅前から100mほど北へ歩けば「豊田駅前」交差点だ。この辺りは以前から商業施設が建ち並んで駅前の繁華街を成していたところだが、2014年(平成26年)に交差点の北東側に「イオンモール多摩平の森」がオープンし、ずいぶんと景観の印象が変わっている。イオンモールが建ったところは、かつては多摩平団地で、豊田駅前から北へ延びる都道235号線沿いには「多摩平名店街」というアーケードのある商店街があった。今は交差点に面して大きなショッピングモールが建っている。もはや昔日の面影はまったく感じられない。

富士電機横
「豊田駅前」交差点から左へ折れ、西へ向かおう。スーパーの横を通り過ぎると道の北側には富士電機株式会社の敷地が広がっている。道に面した外縁部は生垣になっており、木々が並ぶ。そのため、工場にありがちな殺伐とした印象が、ここでは感じられないのがいい。豊田駅前から500mほどで「富士町」交差点、都道155号(平山通り)との三叉路を成している。「富士町」という名の町は、この交差点の北側に位置するが、もちろん富士電機株式会社の社名が由来となっている。企業名が地名の由来となったところは日本全国にある(近いところでは「府中市東芝町」がそうだ)が、ここもそうした地名のひとつだ。

まつり塚脇
「富士町」の交差点から都道155号を西へ辿ろう。都道155号に沿っても100mほどの区間が富士電機の敷地に面し、生垣が続いている。その途中、日野市指定史跡「まつり塚」について記した解説板が立っている。その解説によれば、ここは旧平山村と旧豊田村との村境にあたり、「まつり塚」と呼ばれていたという。道の両脇に松が植えられ、その根元に土壇が築かれて数基の石仏が安置されていたそうである。昔は村を疫病から守るための祈祷がこうした村境や辻の道祖神などで行われていたが、この「まつり塚」でも同様の祈祷が行われていたそうで、そうした風習は明治初期まで続いていたらしい。しかしいつしかその風習は失われ、土壇も取り払われ、石仏も散逸した。往時の面影を残すクロマツが近年まで残っていたそうだが、その最後の一本も1986年(昭和61年)3月の大雪に倒れてしまったという。現在は富士電機敷地内に新しい松が植えられ、周囲が整備されているそうだ。富士電機の敷地内であるため、普段は見学することができないが、毎年秋に開催される東京都教育委員会の東京文化財ウィークに行われる「塚つかウォーク」で一般公開されるらしい。興味のある人は参加してみるといい。

ビバヒルズ横
「富士町」交差点から100mほど、富士電機の西隣には「ビバヒルズ」という集合住宅が建っている。この場所はもともとは富士電機の敷地だったところで、敷地の西側の一部を利用して分譲マンションが建てられたものらしい。それを物語るように、ビバヒルズの住所は「日野市富士町」である。「ビバヒルズ」の横の歩道では植え込みのツツジが咲き、見上げればハナミズキが春の日差しを浴びている。ビバヒルズの南西側の角は「旭が丘一丁目」交差点だ。交差点を北へ入り込むと、ビバヒルズの(おそらく)敷地内、道路に面して緑地スペースがあり、「まつり塚公園」という小公園として整備されている。公園名の由来はもちろん前述の「まつり塚」だ。ここにも「まつり塚」についての解説が立てられている。こちらの解説にも目を通しておきたい。
ビバヒルズ横

ファナック遠景
「旭が丘一丁目」交差点の角に立つと、南西側に建つファナック株式会社日野支社の建物がよく見える。特徴的な黄色い外観がよく目立つが、この黄色はファナック株式会社のコーポレートカラーであるようだ。ファナック株式会社とはどのような企業なのか、一般には知らない人の方が多いと思うが、金属加工業に携わった経験のある人なら知らない人はいないと言ってもいい企業だ。ファナックは1956年(昭和31年)に日本で最初に、民間でのNCの開発に成功した会社だ。「NC」と言っても、これも一般の人にはわからないと思うが、「Numerical Control」、すなわち「数値制御」という意味で、各種の工作機械を座標値の情報によって制御して加工する方法のことだ。工作機械は予めプログラムされた座標値と動作の指定によって、自動で切断や切削などの一連の加工を行う。これによって高精度の製品を短時間で大量に製作することが可能になった。そのNC工作機械の頭脳とも言える制御装置を、ファナックは開発、製作しているのだ。さまざまメーカーが工作機械を製造販売しているが、そのNC制御部はファナック製ということが少なくない。

「旭が丘三丁目北」交差点から桜並木を見る
ファナックの敷地を左に見ながら都道155号を西へ歩く。ファナックの北西側の角は「旭が丘三丁目北」交差点だ。交差点の名が示すように、都道の南側は旭が丘三丁目の町だ。「旭が丘三丁目北」交差点からさらに200mほど西へ行くと「旭が丘六丁目」交差点、旭が丘三丁目の町の西隣が旭が丘六丁目の町だ。旭が丘六丁目には旭が丘中央公園がある。旭が丘中央公園はグラウンドやテニスコートを置いた比較的規模の大きな公園だ。旭が丘中央公園はまた改めてゆっくりと訪ねることにしよう。今回は軽く一回りして、「旭が丘三丁目北」交差点に戻る。「旭が丘三丁目北」交差点から北へ、旭が丘二丁目の町を貫くように桜並木の道が延びている。この桜並木の道を辿って行こう。

旭が丘二丁目の桜並木
桜並木というものは、道路の両脇、歩道脇に沿って桜が並んでいるものが多いが、旭が丘二丁目の桜並木は少し違う。道路中央部に中央分離帯を兼ねたグリーンベルトが設けられ、そこに一列の桜が並んでいる。この桜並木は「旭が丘三丁目北」交差点から北へ、数百メートルの長さで延びている。「旭が丘三丁目北」交差点から200mほど行くと、道はわずかに西寄りに曲がる。西側は日野第四中学校だ。桜はなかなかの大木だ。訪れた四月の下旬、桜は新緑に覆われている。美しい緑陰を楽しみながら歩く。満開の時期の光景は素晴らしいものだろう。その頃にまた訪ねてみたいものだ。やがて桜並木の北端部、交差する道路は八王子市との市境で、北側は八王子市高倉町になる。
旭が丘二丁目の桜並木

旭が丘二丁目の風景
このまま高倉町へと歩を進めてもいいが、横道へ逸れて少し旭が丘二丁目の町の中を歩いてみたい。この辺りは閑静な住宅街だ。戸建ての住宅やアパートなどの集合住宅が建ち並ぶ中に畑も残っていて、長閑さも感じさせる風景が広がっている。気の向くままに歩いているうちに旭が丘二丁目の東側、多摩平三丁目の町まで足を延ばした。日野市立第六小学校の北側に小さな公園があった。多摩平第9公園という公園だ。公園を一回りしてゆこう。豊田駅を出発したときには良いお天気だったのだが、多摩平第9公園を訪ねた頃には空は急に曇り始め、今にも雨が降り出しそうな様子だ。雨にならないことを願いつつ、多摩平第9公園を後にした。

新田公園脇
多摩平第9公園から北へ数十メートル進むと国道20号日野バイパスに出る。日野バイパスの北側は「コニカミノルタ東京サイト日野」の敷地が広がっている。この辺りは日野バイパスに信号のある交差点がなく、横断歩道もない。少し西へ移動して日野バイパスを横断しよう。日野バイパスの北側、コニカミノルタの西側は市境を越えて八王子市高倉町だ。住宅や企業などが立ち並ぶ中を気ままに抜けて行くと新田公園という公園があった。この辺りは江戸時代に新田開発が行われたところで、公園の名はその“新田”を今に残すものだろう。公園は広場を中心に遊具などを配した小さな街区公園だ。新田公園脇の住宅の庭で、ハナミズキが鮮やかな姿を見せていた。

高倉稲荷神社
新田公園から北西側に出ると「高倉町」交差点、東西に走っているのは甲州街道(都道256号)だ。「高倉町」交差点の北東側には高倉稲荷神社が鎮座している。創建は1719年(享保3年)、この辺りが新田開発されたとき、鎮守として創建された神社のようだ。稲荷神社であるから穀物の神である倉稲魂命(ウカノミタマノミコト)を祀り、阿吽の狐が社殿を護っている。交通量の多い甲州街道に面して建つ神社だが、境内は木々が茂って神域らしい佇まいだ。この神社の境内には火の見櫓が建っている。おそらく地元の消防団のものなのだろう。この火の見櫓はマニアの間ではなかなか有名なもののようで、この火の見櫓を見るために高倉稲荷神社を訪れる人もあるらしい。
高倉稲荷神社の火の見櫓

高倉公園
この辺りまで来るとすでにJR八高線北八王子駅が近い。徒歩で10分ほどの距離だ。相変わらず曇り空で、新田公園ではぽつりぽつりと雨粒も落ちてきたが、何とか本格的な雨にならずにすんでいる。そろそろ北八王子駅へ向かおう。駅へ向かう途中、高倉公園の中を通り抜けて行く。高倉公園は野球場を備えた公園で、この日も野球を楽しむ人たちの姿があった。野球場の南側はケヤキの林に各種の遊具を配した広場だが、天候のせいもあってか、子どもたちの遊ぶ姿はない。

北八王子駅前
高倉公園の横を北へ抜けると、すぐ西側が北八王子駅だ。橋上駅舎が線路を跨いでいる。時刻表を確かめると、電車の到着まで少し時間がある。駅の西側へ行ってみよう。北八王子駅周辺はさまざまな企業が集まっている土地柄だが、駅の西側には住宅や学校もあり、駅前には少ないながらも飲食店も軒を構えている。駅前ロータリーではツツジが鮮やかに咲いていた。駅前を一回りして改札を通った。ホームで待っていると、真っ直ぐに延びる単線の線路の向こうから八王子行きの電車がやってくる。八王子駅まで約4分、車窓からの風景を眺めながら今回の散策を終えることにしよう。
八高線の車窓
日野市桜ヶ丘から八王子高倉町の辺りは“知らない街”というわけではないのだが、こうして時間をかけて歩いてみると新たな発見があって楽しい。JR八高線も普段は利用する機会がなく、敢えて帰路に八高線を使おうと思って選んだコースだった。後半は少し天気に恵まれなかったが、なかなか楽しめた散策だった。
旭が丘から高倉町へ