横浜線沿線散歩街角散歩
横浜市港北区篠原町
秋の篠原町
November 2006
秋の篠原町
横浜市港北区の南端近く、新横浜駅の南方に篠原町という町がある。新横浜や六角橋といった市街地が近いにもかかわらず、起伏に富んだ地形の中に緑濃い風景を残した町で、以前から気になっていた場所だった。秋晴れとなった11月中旬、この篠原町を歩いた。
秋の篠原町
横浜線を新横浜駅で降り、篠原口へと出た。実は篠原口へと出るのは初めてだった。横浜線を新横浜駅で降りるのは専ら市営地下鉄や新幹線への乗り換え、あるいは駅北方の市街地へ出るばかりで、篠原口を利用することがなかった。いずれ機会を設けて篠原口から篠原町へと足を延ばしたいと思っていたのだった。篠原口の駅前には小さなロータリーがあり、自転車置き場がある。ロータリー脇にコンビニエンスストアが一軒あるだけで他には目立った商業施設らしいものはほとんどない。すぐ近くまで緑の丘が迫っており、駅北側の市街地の賑やかさとは対照的な、閑寂ささえ漂う風景に少しばかり驚く。

秋の篠原町
ロータリー横から南へ延びる道路を辿ろう。特に予定していたルートがあるわけではない。とりあえず途中で東へ折れて八幡神社を目指すことにしよう。住宅地の中を細道がくねくねと辿っている。やがて篠原中学校が見えてくる。中学校の裏門横の道を進む。道は坂道で、次第に丘の上へと登ってゆき、周囲に視界が開けてくる。道脇には住宅の間に畑も残り、住宅街に変貌する以前の風景を偲ぶことができる。その畑地の向こうに新横浜の高層ビルが見えるのもひとつの興趣かもしれない。やがて道の勾配が緩やかになり、丘の上へ出たことがわかる。丘の上と言っても周囲には住宅が建ち並ぶ。その家々の隙間から遠方の景色が見え隠れし、けっこうな高みであることがわかる。やがて前方に八幡神社の境内に茂る木々が見えてくる。
篠原八幡神社
篠原八幡神社は、境内の御由緒書に依れば、鳥羽院の建久3年(1192年)に武蔵国太知波奈郡(橘樹郡)(むさしのくにたちばなごうり)鈴木村の鎮守として鎌倉八幡宮より勧請され、同村会下谷(えがやと)に創建されたものという。当初は鶴崎八幡と称していたが、寛永8年(1666年)に社殿を再建し、若宮八幡と改称され、後に鈴木村が篠原村と改称された際には、八幡大神と改称されたという。天保6年(1835年)には10年の歳月をかけて社殿を再建し、現在の社殿構造は当時のものであるらしい。関東大震災では拝殿が傾いてしまい、昭和3年(1928年)に再建されたとある。この時に拝殿は茅葺きから銅板葺きに改められ、昭和48年(1973年)には本殿の修復に伴ってすべてが銅板葺きになったものという。平成3年(1991年)には創建800年の祭典が行われたようで、境内の一角に記念碑が置かれ、祭典委員会の人たちの名が刻まれている。

篠原八幡神社
八幡社であるから祭神は誉田別命(ほんだわけのみこと)、すなわち応神天皇で、例大祭は8月最後の土日に執り行われ、たいそう賑わうらしい。見ているとお参りに訪れる人の姿が少なくない。地元の人たちが通りがかりに参拝してゆくといった様子だ。訪れたとき、境内には見事な鉢植えの菊の花が飾られていた。見れば「篠原青年部寄贈」とある。参拝の人の中には菊の花をゆっくりと観賞してゆく姿もあった。歴史の古い神社だけあって境内にはクスノキの大木やイチョウ、ケヤキ、サクラといった木々が頭上で枝を広げている。鳥居横で悠々とした姿で聳えるケヤキも横浜市の名木古木に指定された御神木で、ひときわ眼を引く。こうした大木に興味のある人であれば、この御神木のケヤキだけでも見ておきたいところだ。
篠原八幡神社篠原八幡神社
秋の篠原町
篠原八幡神社を後にして篠原町の散策を続けよう。御神木のケヤキの横から南へ道が延びている。道脇には住宅が建ち並んでいるがどうやら尾根筋を辿る道のようだ。道脇には昔からの農家らしい佇まいの家もある。尾根道は町の境界になっており、西側は篠原町、東側は富士塚一丁目、少し南へ下れば篠原東三丁目の町になる。尾根道はところどころで視界が広がり、爽快な気分が味わえる。やがて尾根道の右手西側に木々の茂った一角があり、下へ降りる石段があった。降りてゆくと「篠原会下谷公園」という小公園だった。「会下谷」は篠原八幡神社の御由緒にあった地名だ。公園は木々に包まれるようにして広場が置かれている。公園を出て、住宅地の中を進んでゆく。道は緩やかな下り坂だ。途中、篠原町公園という小公園がある。篠原町の名を冠した公園だが、団地の一角の小公園という佇まいだ。そのまま住宅街の中を西へ進もう。

秋の篠原町
やがて新横浜駅篠原口から南下してきた道路に出る。道路は南で横浜上麻生道路に繋いでおり、意外に交通量が多い。道沿いに南へ辿ると東林寺という寺がある。まだ11月中旬だが山門横のイチョウが黄葉に染まり始めており、日差しを浴びて美しく輝いている。東林寺前を過ぎ、なるべく裏道を選んで南へ向かう。道脇にはお地蔵様の姿もあり、市街化する以前の姿を想像しながら歩くのも楽しい。進んでゆくとやがて大きな道路へ抜け出る。横浜上麻生道路だ。すぐ東側に横浜市営地下鉄の岸根公園駅があり、道路の向こうに岸根公園が広がっている。岸根公園も今は秋の装いだ。道路沿いのコンビニエンスストアでおにぎりでも買って、篠原池の岸辺で遅い昼食にすることにしよう。
篠原池に立ち寄った後は横浜上麻生道路を通るバス路線で鴨居駅へと向かい、帰路を辿った。今回は篠原八幡神社に立ち寄って篠原町の一部を通り抜けただけだった。次の機会には別の季節と別のルートを選んで、古い時代の面影を残す町の別の表情を楽しんでみたい。
秋の篠原町