日南線は宮崎市の南宮崎駅から鹿児島県志布志市の志布志駅までを繋ぐ。日南線の起点駅は南宮崎駅だがほとんどの列車は日豊本線へと乗り入れ、宮崎駅方面へと行き来する。もちろん電化されていない単線の路線だが、1996年(平成8年)の宮崎空港線開業に伴って新設された田吉駅まで電化され、空港利用客を運ぶ列車が多く走るようになった。
南宮崎駅から志布志駅までは90kmほどの距離で、二両編成、あるいは一両のみのディーゼル車が二時間半ほどの時間をかけて結んでいる。本数は少なく、およそ一時間に一本、一日に十本をわずかに超えるほどの列車が走るのみだ。
主要な駅を除いてほとんどの駅が無人駅となり、ぽつんと建つ駅舎も侘びしげな風情を漂わせている。通学の高校生をはじめ、今でも地元の人々にとっては重要な「足」だが、いつ廃止になってもおかしくはないような気がする。事実、国鉄再建法によって各地の赤字ローカル線が廃止になった時、大隅線や志布志線とともに日南線も廃止になるはずだったものが、代替バス路線が無いという理由で辛うじて廃止を免れたのではなかったかと思う。
観光地として知られる日南海岸を走る日南線はかつては観光客の輸送という役割を持っていたが、人々が車で移動することが普通になってしまった現在では観光目的の交通機関としては決して便利とは言えない。青島や飫肥などは最寄り駅があるものの、鵜戸神宮や都井岬といった有名な日南海岸の観光名所には遠く、車窓から美しい海岸の景色が楽しめるのもあまり長い区間ではない。
それでも海岸から山間までガタゴトと走るディーゼル車の風情は鉄道ファンならずともそれなりに楽しく、都会暮らしの人などには郷愁さえ感じさせるものかもしれない。時にはローカル線の座席に身を委ねてゆったりとした旅を味わうのもよいものだろう。