飫肥駅を出発して南へ向かう日南線は少しだけ酒谷川の河岸を走り、岩崎稲荷神社への参道を横切り、岩崎稲荷神社の鎮座する星倉新山の西側から南側へと回り込み、
日南駅へと向かってゆく。星倉新山の南側へと回り込んだ日南線の線路がほぼ真っ直ぐな軌道を描き始める辺りに、この藤棚踏切が設けられている。
踏切を渡ってゆく道路は車1台分ほどの幅で、踏切を越えて北へ辿ると谷戸地の奥に家々の点在する集落がある。集落を過ぎてさらに道を北へ辿れば星倉新山の懐へと分け入って行き、岩崎稲荷神社へと至っている。要するに岩崎稲荷神社の裏参道的な役割を果たす道だが、普段はこの道を辿って岩崎稲荷神社へ参拝する人は多くはなく、もっぱら踏切北側の集落に暮らす人たちが行き来するだけだろう。踏切の南側は、昔は田畑の広がる長閑なところだったが、今は時任町という名の住宅街になっている。
踏切の南側、道脇には「庶民の守護神 岩崎稲荷神社」と記した大きな案内標識が建てられている。その背後にこんもりと木々を茂らせた丘が星倉新山である。緑濃く長閑な風景だ。踏切のすぐ脇に立つ家の生け垣の様子も素敵だ。
辺りの風景を楽しみながら写真を撮っている間、踏切を越えてゆく車は一台も無かった。男性が一人、北から南へ踏切を渡っていった。挨拶を交わし、カメラを構え直した。静かな夏の午後の藤棚踏切である。