日南海岸風景
道の駅なんごう
道の駅なんごう
国道448号を南下し、外浦から贄波の集落を過ぎて、山肌に張り付く道路を上ってカーヴを曲がってゆくと、道の駅なんごうがある。開業したのは2002年(平成14年)春のことだ。「道の駅」は一般道路に於ける無料休憩施設で、例えば高速道路のサービスエリアに相当するものだが、設置される各地域の文化や名所の紹介、特産品の販売といった「地域情報発信」の役割も大きい。近隣では日南市西部の国道222号に設けられた「道の駅」酒谷や北郷町から田野町に抜ける峠に設けられた「道の駅」田野などがある。宮崎市の青島から串間市の都井岬に至る「日南海岸」の区間に於いては、堀切峠近くに道の駅フェニックスが2005年4月に開業している。

道の駅なんごうの名の「なんごう」はこの地域が「南郷町」であることに由来するものだ。現在は日南市南郷町として日南市の南部を占める地域だが、道の駅なんごうが開業した2002年(平成14年)当時、南那珂郡南郷町という日南市とは別の自治体だった。その後、2009年(平成21年)3月30日に日南市と南那珂郡南郷町、南那珂郡北郷町の一市二町が合併して現在の日南市となったというわけだ。
道の駅なんごう
道の駅なんごうは2016年(平成28年)に大幅なリニューアルが施された。新たに指定管理者となったのは株式会社南郷包装だ。株式会社南郷包装は内海の人気店「デモン・デ・マルシェ」を運営しており、そのノウハウが道の駅なんごうにも活かされたようだ。物販コーナーを別棟で設ける形でレストランを拡充、以前は24席だったものが76席に増えた。食事メニューも豊富になって人気を集めている。トリップアドバイザーの「旅好きが選ぶ!道の駅ランキング 2017」で1位を獲得したことにも、その人気ぶりが窺える。
道の駅なんごう 道の駅なんごう
日南海岸に位置する「道の駅」に相応しく、敷地内にはジョオウヤシを初めとする亜熱帯の植物がふんだんに植栽されて南国的雰囲気を漂わせている。レストラン前のデッキ部分からは、眼下に外浦の美しい景観を望む。その景色は素晴らしいもので、岬や大小の島々の織りなす景観が国道脇に植えられたフェニックスの樹形と重なって一枚の絵画のような景色を見せてくれる。そもそもこの辺りからの景観は地元では絶景として知られ、国道脇のスペースに車を停めて眺めを楽しむ人の姿も少なくなかった。そうした景観の美しさも、「道の駅」がこの場所に設置された大きな理由のひとつなのだろう。レストランにはデッキ部分を使用した“テラス席”も用意され、陽気の良い季節であれば日南海岸の絶景を眺めながらの食事が楽しめる。
道の駅なんごう
道の駅なんごう
道の駅なんごう
南郷町は昔から漁業の町で、さらに日向夏やポンカン、デコポンなどのフルーツの栽培も盛んだ。加えて近年ではマンゴーの栽培も注力されており、マンゴーは南郷の特産品として広く知られるようになった。そうした土地柄を活かし、レストランではマグロやカツオなどの魚介類を使ったメニューが揃い、マンゴーソフトクリームも人気を集める。物販コーナーにはマンゴーや日向夏を使ったお菓子やジャムなどが取り揃えられ、シーズンであれば完熟マンゴーも並ぶ。一時期、“「道の駅」マンゴー”に“改名”して、南郷の特産であるマンゴーの認知度向上が図られたこともある。「道の駅マンゴー」と記された垂れ幕をバックに記念写真を撮るのも楽しいかもしれない。
道の駅なんごう 道の駅なんごう
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道の駅なんごうの背後の山肌には宮崎県亜熱帯作物支場の有用植物園が隣接しており(厳密に言えば宮崎県亜熱帯作物支場内に道の駅なんごうが建っている)、「道の駅」からそのまま境無く散策路が辿っている。レストラン前のデッキ部分からそのままボードウォークが東側へ延びており、国道に添うように進むと「トロピカルガーデン」と名付けられた一角に至る。「トロピカルガーデン」からも、そこへ至るボードウォークからも、海を見下ろす景観は美しく、場所が変われば景観も変わってそれぞれに違った表情を見せてくれて楽しい。レストランの背後にあたる場所の上には「オーシャン広場」という広場があり、レストラン前よりさらに高みからの景観が望める。

林の中の散策を辿ると、「ジャングルクルーズ」と名付けられた谷があり、バナナやビロウなどの茂る鬱蒼とした森の雰囲気がまさに「ジャングル」を彷彿とさせて楽しい。山の高みには亜熱帯性の花木であるジャカランダを植栽した「ジャカランダの森」や、岩山を模した中にサボテンなどを配した「ロックマウンテン」などもあり、さまざまに趣向を凝らしたポイントが設置されている。「ロックマウンテン」はこの付近での最も高所にあたるところで、そこから眼下に広がる景色を眺めるのはとても爽快だ。他にも随所に展望台などが設けられ、景観を楽しみながらの散策は飽きない。
有用植物園の木道 ロックマウンテン
有用植物園の範囲はなかなか広く、高低差もかなりあるので、散策路のすべてを回るのには相応の時間と体力とを要する。「道の駅」のエントランス部分の傍らから山の斜面を越えてゆく道路が造られ、何カ所か駐車スペースも設けられているので、それらを利用するのもよいだろう。その道路はそのまま峠を越えて山の反対側の斜面に造られた宮崎県亜熱帯作物支場のトロピカルドームへと至り、さらに夫婦浦へと降りてゆくことができる。道の駅なんごうは、宮崎県亜熱帯作物支場と融合して、ひとつの新たな観光名所を創出しているように思える。ドライヴ途中の休憩場所としてももちろん良いところだが、「日南海岸」観光の際のひとつの目的地として考えても、充分に魅力的な場所であるだろう。
ジャカランダの森付近から外浦を見る
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道の駅なんごうのエントランス部分から道路を挟んだ斜向かいに茶碗山展望台がある。以前はほとんど立ち寄る人もなく、少々荒れた印象だったのだが、道の駅なんごうの開設に伴って再整備が施されてリニューアルされたもののように思える。国道脇の駐車場からスロープになった通路を辿ってゆくと、山の頂上部分に着く。頂上部分は広場になっていて、ベンチなどを配した中に散策路が辿っている。海側の一角には塔のような展望台が造られ、そこに上ると眼下に広がる美しい景観を堪能することができる。その高みから見下ろす視界には、外浦の入江や大小の島々、さらに道の駅なんごう付近までが収まり、圧倒的な開放感がある。道の駅なんごうとは国道を挟んでいるためか、人の姿はあまり多くはなく、のんびりとしたひとときを過ごすことができる。「日南海岸」の景勝を楽しむための、ひとつの「穴場」的スポットと言えるかもしれない。
茶碗山展望台
茶碗山展望台
茶碗山展望台
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道の駅なんごうのエントランス部分から国道を南へと辿るとすぐにトンネルがある。トンネルを抜けた先は夫婦浦だ。トンネルの手前に、左側に逸れる路がある。トンネルが開通する前の旧道で、もう少し崖に沿って辿り、古いトンネルを抜けて夫婦浦に至っている。

旧道を辿ると、カーヴの続く道路の脇に駐車スペースを設けた一角がある。道脇にはフェニックスなどが植栽され、四阿も置かれて、ちょっとした展望所のような場所だ。新しいトンネルが造られる以前、さらに道の駅なんごうが開設される以前には、この場所がこの付近の休憩所のような役割を果たしていた。ドライヴ途中に立ち寄り、眼下の絶景を楽しみながらひと休みする人の姿も少なくなかった。道の駅なんごうが開設されてからはこの展望所の存在価値も薄れ、新しいトンネルが開通してからは旧道を辿る車もほとんどなく、この展望所に立ち寄る人の姿もないが、敢えて立ち寄ってみるのもよいかもしれない。
旧道の四阿
旧道からの景観
この一角に「人間魚雷回天訓練之地」碑が建っている。眼下に広がる美しい入江で、かつて人間魚雷回天の訓練が行われたのである。戦時の史跡などを訪ねるのが好きな人ならぜひとも訪れてみるべきところだろう。
人間魚雷回天訓練之地碑
人間魚雷回天訓練之地碑近くから見る外浦の入り江
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道の駅なんごうの展望デッキから望む景観は、「日南海岸」の中でも屈指の美しさである。外浦の入江や大小の島々の織りなす景観の美しさはまさに絶景と呼べるものだ。近年、道の駅なんごうと共にその知名度が高まり、「日南海岸」でぜひ見ておきたい景観のひとつとして知られるようになった。「日南海岸」観光の際にはぜひとも訪れてみるべき景勝である。
道の駅なんごう
INFORMATION
道の駅なんごう
【所】日南市南郷町贄波
【問】道の駅なんごう
【問】日南市観光協会
【参】九州「道の駅」ガイド(国土交通省九州地方整備局道路部)
このWEBページは「日南海岸散歩」内「日南海岸風景」カテゴリーのコンテンツです。
ページ内の写真は2002年夏、2018年夏、2020年夏に撮影したものです。本文は2021年10月に改稿しました。