横浜市緑区北八朔町
−北八朔公園−
晩秋の北八朔公園
Visited in November 2005
北八朔公園はいわゆる里山保全型の公園で、雑木林の丘と谷戸との織りなす風景の美しい公園だ。落葉樹の多い林は春から初夏にかけての瑞々しい新緑の風景が美しいが、紅葉に染まった晩秋の風景もまた違った魅力を感じさせてくれる。
北八朔公園の最大の魅力は四季折々に見せる雑木林の表情だが、公園の東側は草はらの広場になっており、この広場にケヤキやモミジなどが植栽され、それぞれに秋の色彩に染まって風景を彩ってくれる。モミジの木はまだ小さなものだが、真っ赤に染まった姿はやはり見応えがある。紅葉に染まる樹木はさまざまな種類があるが、やはりイロハモミジはその代表格、美しさという点では筆頭に挙げられる樹木だと言っていい。日の光を照り返して輝く姿も、逆光に映える姿もそれぞれに美しい。やがて木が大きく育てばさらに美しい景観を見せてくれることだろう。広場には随所にテーブル付きのベンチも設置されているから、紅葉を眺めながらのんびりとランチタイムを過ごすのもお薦めだ。
草はらの広場の西側、公園中央部に池が横たわっている。その池の岸辺、遊歩道の脇に印象的に一本のモミジが立っている。このモミジの木がたいへんに美しい。紅葉の染まったその姿そのものももちろん美しいのだが、傍らに横たわる池や周囲を取り囲む林を背景に見る姿がとてもいい。間近に見るのもいいし、少し離れて池を回り込んだ反対側の岸辺から池越しに見る姿も素晴らしい景観だ。少し逆光気味の斜光線を受けて輝く姿が、やはりもっとも美しい姿を見せてくれる。見る場所が変わればモミジと背景との組み合わせが変わり、日の光の方向が変わり、景観はさまざまに表情を変える。それぞれの姿が美しく、ついあちらこちらと歩き回ってカメラのレンズを向けてしまう。この池の岸辺のモミジは晩秋の北八朔公園のシンボルツリーと言っていいのではないか。
池脇の遊歩道を西へ、公園の「奧」へと進めば、晩秋の色彩を纏った雑木林が出迎えてくれる。遊歩道を歩きながら公園奧へと眼をやれば、向かって右手、北側の林が日の光を浴びる形になり、木々が赤や黄に陽光を照り返して輝く。その様子がとても美しい。見る場所が変われば日の光を照り返す様子も変わる。くすんだ赤褐色の樹木が見る角度によっては鮮やかな深紅に輝いて見えたりするのも面白い。その木々の色彩に誘われて、林の中を辿る小径を歩く。落ち葉を踏みしめつつ、秋の色に染まって木々を間近に見ながらのんびりと歩くのは心安らぐひとときだ。小径の先に眼をやったり、上を見上げてみたり、赤く染まったツタの葉に眼を凝らしたり、日差しに浮かぶように輝く黄葉の様子に見とれたり、晩秋の雑木林は飽きることがない。
公園の北西端、林の中の小径を抜け出ると、眼下に東名高速道路が見える。東名高速道路を小さな橋が跨いでいる。この橋を渡って北へと辿ると、右手(東側)は千草台、左手(西側)は梅が丘の住宅街だ。道路はイチョウの並木で、この季節には美しい黄葉に染まっている。少し北へ進むと交差点があり、東へ降りる道路もまた黄葉のイチョウ並木だ。イチョウはそれほど大きなものではなく、周辺は住宅地だから景観としても特筆するほどのものはないが、晩秋の北八朔公園へ訪れたときには少し足を延ばして千草台のイチョウ並木を歩いてみるのも悪くないかもしれない。
北八朔公園は規模の点で言えば少しばかり物足りなさを感じるところもあり、また東名高速道路が近いために北側の雑木林の中では車の騒音が響いてくるのが難点だが、端正に整備された公園の佇まいと里山を彷彿とさせる雑木林の様相はとても魅力的で、晩秋の表情を求めての散策も充分に楽しめるものだ。有料だが駐車場が用意されており、地理的にも車での来訪が便利だが、東急田園都市線藤が丘駅から千草台の住宅街を抜けてのんびりと歩いて訪ねてみるのも楽しいかもしれない。