八王子市別所
−長池公園−
晩冬の長池公園
Visited in January 2021
八王子市別所の長池公園は雑木林の丘を中心に構成された公園だ。寒さの厳しい一月下旬、長池公園は冬枯れの風景だ。葉の落ちた雑木林は日溜まりとなって暖かく、のんびりと散策するのも楽しい。梅林ではそろそろ開花の時期を迎え、春の兆しが感じられる頃である。
長池公園は20ha近い面積を有する広大な公園だが、「里山文化の継承と創造」を公園のテーマとしており、そのほとんどをかつての里山だった雑木林が占めている。雑木林を構成する木々はコナラやクヌギなどの落葉樹が中心だ。当然のことながら、それらの落葉樹は秋に落葉し、春に新緑の芽吹きを迎え、冬にはいわゆる“冬枯れ”の風景を見せている。
冬枯れの雑木林は風景としては少しばかり殺風景だが、日射しが入り込んで明るく、日溜まりとなって比較的暖かい。寒さの厳しい季節にのんびりと散策を楽しむのもよいものである。葉が落ちて見通しの利く林は野鳥観察にも好適だ。ときおり聞こえる鳥の声にその姿を探してみるのも楽しい。
長池公園の北東側の隅辺り、小さいながらも梅林が設けられている。南西側を向いた斜面の一部を切り拓き、梅を植栽したもののようだ。日溜まりとなって暖かいからか、すでに梅が咲き始めている。
梅林に植えられた梅は20〜30本ほどか。詳しくない身では品種がよくわからないが、小ぶりな花の紅梅だ。梅林の中は梅の木を間を縫うように散策路が辿り、梅の花を間近に観賞できるのが嬉しい。
長池公園の南端部に設けられた「やまざとひろば」も冬枯れの風景だが、よく晴れた冬空の下、開放感が素晴らしい。空気は冷たいが、青空の下でのんびりと過ごすのも楽しい。
「やまざとひろば」の広場脇では蝋梅の花が咲いている。蝋梅(ロウバイ)は「梅」の文字が付けられているが「ウメ」の仲間ではなく、クスノキ目ロウバイ科ロウバイ属の樹木だ。艶のある花弁が蝋細工のようだというので「蝋梅」の名がある。蝋梅は晩冬から早春の頃に花を咲かせる。春が遠くないことを教えてくれるかのようだ。
「やまざとひろば」近くに設けられた「夕陽展望台」にも立ち寄っておきたい。それほどの高みではないが、展望台からは周囲に視界が開けて爽快だ。
長池公園の北端部に設けられた長池見附橋周辺にはたくさんの人たちが散策を楽しんでいる。かつての四谷見附橋を移築復元した長池見附橋はたいへんに美しく、「八王子八十八景」の一つにも選定された“名所”だ。冬の澄んだ空気の中、長池見附橋の姿がひときわ美しく見える。
長池見附橋の下は「姿池」という名の池になっている。長池見附橋の姿を映すことからこの名がある。寒さの厳しい一月末、お昼になっても池にはかなり氷が残っている。冬の退く日射しを氷が弾いて煌めく。その様子が美しい。朝方には池の全面が凍りついていたのだろう。その様子も見てみたい気がする。
一月下旬と言えば「大寒」の真っ直中、寒さが最も厳しい時期だ。風は冷たく散策の足も鈍るが、天気が良ければ雑木林の中は比較的暖かく、何より澄んだ冬空が爽快な気分にさせてくれる。のんびりと長池公園を巡ってこの季節ならではの風情を楽しむのがお勧めだ。