横浜線沿線散歩公園探訪
横浜市西区老松町
−野毛山公園−
野毛山動物園
Visited in October 2016
野毛山動物園
横浜市の中心市街地の西方に位置する野毛山公園に野毛山動物園が設けられている。その名は、おそらく「野毛山公園」の名より広く知られているに違いない。開園以来、入園無料の動物園として市民に愛され、親しまれている動物園だ。
野毛山動物園
野毛山動物園の設けられた野毛山公園はそもそも大正時代の関東大震災からの復興事業の一環として整備されたもので、開園当初は日本庭園・西洋庭園・折衷庭園の三つの様式を持つ公園だったという。戦時中は陸軍が使用し、戦後は米軍に接収されたが、接収解除後に再整備が行われた。その時、日本庭園だった部分を使用して造られたのが今の野毛山動物園だ。以来、横浜市中心部近くに位置する動物園として永く市民に親しまれてきた。

1999年(平成11年)春にズーラシアが開園した際には、それに伴って野毛山動物園は閉園の予定もあったようだが、存続を望む市民の声もあって廃園を免れ、1999年(平成11年)から2002年(平成14年)にかけて改修工事が行われ、2002年(平成14年)11月23日に現在の形でリニューアルオープンを迎えている。
野毛山動物園
園内は緑に覆われ、街の喧噪から離れた落ち着いた雰囲気がいい。起伏に富んだ地形は元来の丘陵の地形の名残だろうか。その園内に園路が巡り、園路に沿ってさまざまな動物たちの飼育舎が設けられている。のんびりと園路を辿って動物たちの姿を見学してゆくのは楽しいひとときだ。

出入口近くにはレッサーパンダの飼育舎があり、レッサーパンダの愛らしい姿は人気の的だ。その奥へ進むと爬虫類館があり、さまざまな種類のワニやトカゲ、リクガメなどの姿を見学できる。

野毛山動物園
爬虫類館のさらに奥、動物園のほぼ中央には「ひだまり広場」という広場と休憩棟が設けられている。この「ひだまり広場」と休憩棟のある場所は、2003年(平成15年)までアジアゾウの「はま子」が飼育されていたところだ。戦後間もなく横浜にやってきて以来、野毛山動物園のシンボルとして愛されてきた「はま子」だったが、2003年(平成15年)10月7日、59年の生涯を終えた。「はま子」が亡くなった時には多くの人たちが来園、別れを惜しんだという。

野毛山動物園
出入口から外周に沿った園路を時計回りに進むと、園路脇になぜか古い路面電車の車両が置いてある。これはかつて横浜市電で使用されていた車両の実物を保存展示しているものだ。「1500型」と呼ばれる型式の車両らしい。休憩所も兼ねた展示で、中に入ることもできる。運転台の機器もそのままになっており、小さな子どもたちに人気があるようだ。

野毛山動物園
さらに外周に沿った園路を辿ると斜面の上下に園路が二重に辿り、それぞれの園路脇にライオンやトラ、キリンやフラミンゴなどの飼育者が並ぶ。犬猫や牛、馬などとは違って、これらの動物たちはやはり動物園でなくては見ることができないから、その姿を間近に見ることができるのは楽しい。

園内東南側、低地となった部分には小動物との触れ合いを楽しめる「なかよし広場」が設けられている。小動物との触れ合いを楽しめるコーナーは、以前は野毛山公園の南側区域に「どうぶつ広場」として設けられていた。「どうぶつ広場」は1971年(昭和46年)のオープン以来、34年間に渡って市民に愛され続けてきたが、野毛山動物園のリニューアルに伴って2002年(平成14年)11月17日をもって閉園、その後を引き継ぐ施設としてオープンしたのが現在の「なかよし広場」だ。小動物との触れ合いコーナーは以前も今も子どもたちに大人気のコーナーだ。動物たちとの触れ合いは大人にとっても楽しいもので、愛らしい動物たちの姿は見ているだけでも心が和む。ひととき童心にかえって楽しむのもよいものだ。
野毛山動物園
野毛山動物園は特に珍しい動物がいるわけでもなく、広大な敷地を誇るわけでもない。しかしいわば“昔ながらの”動物園としての在り方にかえって魅力を感じる。横浜の市街地にありながら緑も多く、手軽な行楽にはよいところだ。京急日ノ出町駅から徒歩10分ほど、桜木町駅からでも徒歩20分ほどと近いのも嬉しい。家族連れで訪れたり、あるいはカップルのデートコースとしてもよいところだ。もちろん一人でふらりと訪れても楽しめる。素敵な動物園である。
野毛山公園