横浜市青葉区荏田北
小黒公園
Visited in May 2004
横浜市青葉区荏田北の北端あたり、丘の上に広がる住宅街の中に「小黒公園」がある。広場を中心に、木々に覆われた緑濃い公園だ。
公園の敷地はほぼ正方形に近く、その北西側に円形の草はらとなった広場を置く。広場は木々に囲まれ、開放感と閉塞感とがバランスよく落ち着いている。訪れたとき、この広場で遊ぶ二組の親子連れの姿があった。二組とも小学生くらいの年頃の男の子と若いお母さんだった。子どもたちが遊ぶ横でお母さんたちは立ち話をしていたのだが、やがて子どもたちに混じって一緒に遊び始めた。二組の親子四人での「野球」だ。男の子がピッチャーになり、お母さんがバッターになったり、キャッチャーになったり、入れ替わりながら遊んでいる。なかなか素敵な光景だった。
公園の北東側の一角は遊具が置かれて、小さな子どもたちのための遊び場だ。木立を背負って複合遊具が設置されている。フィールドアスレチック風の大型の木製遊具で、滑り台などが組み合わされている。こうした規模の公園で一般的に見る複合遊具より大型で造りもなかなか凝っている。複合遊具の前はちょっとした広場になっていて、パーゴラとベンチが置かれ、その傍らに砂場も置かれている。訪れたときには遊具で遊ぶ子どもたちの姿はなかったが、休日などには子どもたちの歓声が聞こえるのだろう。このときにはどこかの幼稚園か保育園か、先生に引率された子どもたちの姿があった。すでに遊び終わった後だったのか、複合遊具の横にみんなで整列して座り、先生が読み聞かせてくれる絵本に見入っていた。
公園の東南側はさまざまな樹木が植えられた一角で、その中を散策路が辿り、パーゴラとベンチが置かれている。時期に恵まれれば藤の花など、さまざまな花々を楽しむことができそうだ。園内のところどころにヤマボウシの木があり、すでに盛りは過ぎていたが、少しばかり白い花を残していた。西側の散策路脇にはサツキも咲いていて、緑濃い公園内に彩りを添えていた。
西南側の角には木立に囲まれた円形のスペースがあり、木製のテーブルとベンチが設置されている。周囲を囲む樹木は桜で、春には美しい景観となることだろう。地元では花見の名所としても親しまれているという。今は青々と葉が茂り、爽やかな木洩れ日を落としている。
周辺は丘の上に広がる住宅街で、街並みも美しい。公園は1.2haほどの面積で、こうした住宅地の中の公園としては標準的なものだが、近くに暮らす人たちのための日常的な憩いの場として充分なものだろう。種別としても「街区公園」だから、遠方からの来訪者を前提にしておらず、もちろん駐車場はない。トイレも設置されていないのが残念なところで、のんびりと長い時間を過ごすときには少々不便かもしれない。そうした意味では公園近くに暮らす人たちの「共有の広い庭」のようなものと考えるのが妥当であるかもしれない。
公園は1982年(昭和57年)の開園だから、丘の上のこの一帯が住宅地として造成された際に同時に整備された公園なのだろう。すでに開園から20年以上を経過しているわけだが、端正に整備された美しい佇まいが印象に残った。「小黒公園愛護会」があるようだから、愛護会の方々による整備が丁寧に行われているのに違いない。訪れたときにも愛護会の方と思われる年配の男性が園内の植栽の手入れをしておられた。
「小黒」は「おぐろ」と読むのか、「こぐろ」と読むのか、ちょっと興味を覚えて愛護会の方らしき男性に話のついでに訊ねてみた。正式には「こぐろ」と読むべきところと思うのだが、自分たちは「おぐろ」と呼び慣わしているとのことだった。市が尾駅前に設置された地図には「Oguro」というローマ字表示があるが、青葉区のWEBサイト内の公園情報ページでは「か行」の欄に記されているから「こぐろ」なのだろう。けっきょくはどちらでもかまわないというところだろうか。