鹿児島県鹿児島市本港新町に「いおワールドかごしま水族館」が設けられている。ジンベエザメの展示やイルカショーなどで人気の水族館だ。夏休みで賑わう8月半ば、「いおワールドかごしま水族館」を訪ねた。
いおワールドかごしま水族館
いおワールドかごしま水族館
いおワールドかごしま水族館
鹿児島県鹿児島市、鹿児島本港に望む本港新町に「いおワールドかごしま水族館」が設けられている。鹿児島市立の施設として1997年(平成9年)に開館したもので、公益財団法人鹿児島市水族館公社が運営に当たっている。正式な名称は「かごしま水族館」で、「いおワールド」は愛称である。「いお」は「うお」、すなわち魚のことだ。特に鹿児島の方言というわけではなく、魚を意味する古語であるようだが、少なくとも鹿児島や宮ア辺りでは、日常的に魚のことを「いお」、あるいは「いを」と言う。

「いおワールドかごしま水族館」は鹿児島の観光施設として人気を集めている。ジンベエザメの泳ぐ「黒潮大水槽」をはじめ、「錦江湾水槽」や「かごしまの海」、「鹿児島の深海」といった、地域性を活かした展示は、ぜひ見ておきたいものだ。他にも興味深い展示が多く、「サンゴ繁殖センター」や「うみうし研究所」、「南西諸島の海」、「クラゲ回廊」といった展示も時間をかけて見学しておきたい。構成としては他の水族館と同様のものと言っていいが、展示内容には錦江湾や奄美諸島などを含む鹿児島ならではの特色があって楽しく見学できる。
いおワールドかごしま水族館
いおワールドかごしま水族館
いおワールドかごしま水族館
ジンベエザメが飼育されている水族館は、この「いおワールドかごしま水族館」を含め、日本には数えるほどしかない。「いおワールドかごしま水族館」を訪れたら、まずは「黒潮大水槽」を見学し、悠然と泳ぐジンベエザメの姿を見ておきたい。ジンベエザメは世界最大の魚類である。成魚になると20mに達するものもあるという。そしてまた絶滅が心配される「絶滅危惧種」でもある。

3月から10月にかけての時期、鹿児島近海にもジンベエザメが回遊してくる。その中には定置網に入ってしまうものもある。年間で数頭のジンベエザメが網にかかってしまうという。そのほとんどはすぐに海に帰されるのだが、条件に合う小さな幼魚があった場合、「いおワールドかごしま水族館」で預かり、一定期間飼育、水槽での展示を行い、全長5.5mになる前に海に帰す。そうした方法で、「いおワールドかごしま水族館」ではジンベエザメの保護と水族館での展示とを両立させているというわけだ。

したがって「いおワールドかごしま水族館」のジンベエザメは個体が入れ替えられながら飼育、展示が続けられている。「いおワールドかごしま水族館」のジンベエザメは代々「ユウユウ」の愛称で呼ばれている。2018年夏現在、水槽を泳ぐのは八代目ユウユウである。
いおワールドかごしま水族館
各地の水族館で人気を集めるもののひとつに、イルカのショーがある。もちろん「いおワールドかごしま水族館」でもイルカのショーが楽しめる。1階フロアの一角に設けられた「イルカプール」で、「いるかの時間」と名付けられたショーが基本的に毎日実施されるでのぜひ見ておきたい。行楽シーズンの日曜休日には客席が毎回満席状態となるので、早めに席に着いておくことをお勧めする。
いおワールドかごしま水族館
展示の中には「わくわくはっけんひろば」と名付けられたコーナーもあり、主として子どもたちが体験しながら楽しく学べる工夫も施されている。ただ見学して回るだけでなく、やはり実際に自分の手を伸ばして体験することが子どもたちにとっては重要だろう。
いおワールドかごしま水族館
一時期話題になった「沈黙の海」が、現在も展示されている。まったく生き物の姿のない、ただ水で満たされた水槽が展示されているだけだが、多種多様な生物を育む海の環境の大切さを考えさせる、意義深い展示である。水槽の横には一編の詩のようなコメントが添えられている。「いおワールドかごしま水族館」を訪れた際には、ぜひ「沈黙の海」を見ておこう。
いおワールドかごしま水族館
いおワールドかごしま水族館
上階部分の東側には「展望ホール」が設けられ、窓外、正面に桜島の姿を望むことができる。ひととき桜島を眺めながらのんびりと過ごすのもいいものだ。「展望ホール」の一角には「タイヘイヨウアカボウモドキ」というクジラの仲間の全身骨格が展示されている。2002年(平成14年)に鹿児島県川内市(現在の薩摩川内市)付近の海岸に打ちあげられた個体の骨格標本という。成体の「タイヘイヨウアカボウモドキ」の完全な骨格標本は世界で最初のもので、この「いおワールドかごしま水族館」でしか見ることができないという。
いおワールドかごしま水族館
館内にはレストランやアミューズメントショップも設けられている。「Dolphin Kitchen(ドルフィンキッチン)」と名付けられたレストランからは窓外に桜島フェリーのターミナルが近く、ひっきりなしに発着する桜島フェリーを眺めながらの食事が楽しめる。アミューズメントショップにはここでしか変えないグッズもあり、お土産や来館記念に買い求めるのもお勧めだ。
いおワールドかごしま水族館
いおワールドかごしま水族館
「いおワールドかごしま水族館」の建つ本港新町の区域は、1980年代以降になって埋め立てられたところだ。周辺には「新波止(しんはと)」、「一丁台場(いっちょうだいば)」、「遮断防波堤(しゃだんぼうはてい)」といった鹿児島旧港の遺構がある。「鹿児島旧港施設」として2007年(平成19年)に国指定重要文化財(建造物)に指定されたものだ。新波止と一丁台場は弘化嘉永年間(1845〜1855年)頃と1872年(明治5年)頃に築かれ、遮断防波堤は1904年(明治37年)に竣工したものという。「いおワールドかごしま水族館」を訪ねた際には、こうしたものにもぜひ目を留めておこう。
いおワールドかごしま水族館
「いおワールドかごしま水族館」の本館の北側は港湾に面してボードウォークとなった散策路が延びている。散策路脇にはワシントン椰子が風に揺れて南国ムードを醸しだし、すぐ横のフェリーターミナルで桜島フェリーが発着する様子も旅情を誘う。東端まで歩けば正面に桜島の姿も望める。水族館内部の見学の後は、港湾の風景を眺めながらのんびりと散策を楽しむのもお勧めだ。
いおワールドかごしま水族館
その一角に、1971年(昭和46年)に建造された自航式有人潜水艇「はくよう」が展示されている。「はくよう」は操艇者1名、乗員2名の自航式有人潜水艇で、潜水可能な最大深度は300m、当時の最新技術を結集して建造された潜水艇だった。「はくよう」は2013年(平成25年)に役目を終えて引退、42年間に述べ8134回の潜航を行ったが、世界でも類を見ない記録だという。中でも鹿児島の海は最も多く潜航を行ったところであるらしい。「はくよう」の展示に目を向ける人はあまり多くはないようだが、これもまた「いおワールドかごしま水族館」を訪れたときにはぜひ見ておきたいもののひとつだ。
いおワールドかごしま水族館
1980年代以降になって埋め立てられた本港新町地区でも、特に「いおワールドかごしま水族館」の建つ一角は水路によって市街地側と隔てられ、“島”のような様相になっている。この、両者を隔てる水路は「イルカ水路」と呼ばれている。水族館内部と繋がっており、水族館のイルカが水路に出てくることができるようになっているのだ。
いおワールドかごしま水族館
この「イルカ水路」で、水族館のスタッフによるイルカの訓練の様子を見ることができる。水路を渡る橋の上や、水路脇のボードウォークから見学することができて、なかなかの人気だ。館内の「イルカプール」でのショーも見応えがあるが、青空の下で豪快なジャンプを見せるイルカの姿も素晴らしい。
いおワールドかごしま水族館
ときには、訓練が終わった後もイルカたちが自分たちだけで遊ぶ姿を見ることもある。水族館スタッフの指示がなくても、イルカたちが自らの意思でボールを使って遊ぶ。イルカの表情はわからないが、イルカたち自身も楽しんでいるように見える。その可愛らしい姿に、時の経つのを忘れて見入ってしまう。

「イルカ水路」は水族館の“外”であるため、入館料を支払う必要もなく、周辺の散策のついでに楽しむことができる。お勧めだ。
いおワールドかごしま水族館
「いおワールドかごしま水族館」はジンベエザメをはじめ、地域性を活かした展示も多く、鹿児島観光に訪れた立場でも充分に楽しめる。フェリーターミナルのすぐ横、正面に桜島を望むという立地もいい。館内の展示をじっくりと見学し、その後は周辺の散策を楽しむのがお勧めだ。鹿児島旧港の遺構などもぜひ見ておこう。「イルカ水路」での訓練の様子も、見逃せない。鹿児島観光の際の、お勧めスポットのひとつである。
いおワールドかごしま水族館
参考情報
「いおワールドかごしま水族館」は、当然のことながら入館料が必要だ。営業日、営業時間、交通アクセスなどの詳細については公式サイト(頁末「関連する他のウェブサイト」欄のリンク先)を参照されたい。

「いおワールドかごしま水族館」内は基本的に写真撮影、ビデオ撮影は可能だが、フラッシュ撮影が禁止されている展示もあるので注意されたい。

交通
「いおワールドかごしま水族館」へは「カゴシマシティビュー」を利用するのが便利だ。「かごしま水族館前」バス停で下りれば、目の前が水族館だ。

市電を利用する場合は「水族館口」電停や「市役所前」電停で降りるのが近い。いずれも電停から水族館まで700mほど。10分ほど歩けば着く。「朝日通」電停からも800mほど、徒歩で10分強といったところか。

桜島側からフェリーで訪れる場合は、フェリーターミナルのすぐ横が水族館で、フェリーターミナルからそのまま水族館入り口に降りてゆくことができる。

水族館の駐車場は用意されていないが、近隣に県営駐車場が複数設けられている。

遠方から車で訪れる場合は九州自動車道などを利用して、まず鹿児島市街地中心部を目指し、それから水族館周辺へ向かうとわかりやすいだろう。

飲食
水族館内にレストランがあり、各種の食事メニューが用意されている。

飲食物の持ち込みも可能だが、飲食は展望ホールとイルカ館スタンド(「いるかの時間」以外の時間)でのみ可能とのことだ。

水族館を出れば、南西側に少し離れて「ドルフィンポート」というショッピングモールがあり、飲食店もあるので利用するといい。

周辺
「いおワールドかごしま水族館」の南側には「ウォーターフロントパーク」という臨港公園がある。「ドルフィンポート」と併せて立ち寄ってみるのもいい。

フェリーターミナルからは約15分ごとに桜島とを結ぶフェリーが運航している。桜島へ渡るのも気軽だ。

「カゴシマシティビュー」などの周遊バスや鹿児島市電を利用すれば、仙巌園石橋記念公園鶴丸城趾や城山、西郷隆盛像、照国神社天文館といった市街地と周辺に点在する観光名所も便利に回ることができる。
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