横浜線沿線散歩公園探訪
横浜市鶴見区三ツ池公園
三ツ池公園
May 2001
三ツ池公園
横浜市鶴見区の三ツ池公園は、「かながわの公園50選」、「かながわの花の名所100選」、「かながわの探鳥地50選」などに選ばれ、その規模、知名度ともに横浜市内でも屈指の公園だと言ってよいだろう。特に桜の名所としては財団法人日本桜の会による「桜の名所100選」にも選ばれ、首都圏の桜の名所として必ず名が挙がるほどのものだ。その名が示すように公園は三つの池を抱え、その周囲を雑木林が取り囲んでいる。緑濃い公園には絶えず野鳥の声が聞こえ、市街地の直中に位置するとは思えないほどの穏やかさに満ちている。
正門から管理事務所の横を抜けて園内に入ると出迎えてくれるのは「噴水広場」だ。長方形に整然とまとめられた広場で、中央には噴水が設けられているが残念ながら訪れた際には噴水を見ることはできなかった。広場の左右には雑木林の木立が迫り、公園の雰囲気を予感させてくれる。

三ツ池公園 馬超龍雀像
さらに進むと「天馬の広場」という一角があり、駆ける姿の馬の像が目を引く。「馬超龍雀像」というもので、中国遼寧省から友好の印として寄贈されたものであるらしい。寄贈されたものは複製だが、実物は1700年以上前のものであるらしく、1969年に中国西北部の漢墓から出土したものなのだそうだ。躍動感に富む馬の姿は一本の脚のみによって支えられ、力学的平衡原理が正確に計算されているといった旨の解説が添えられている。そうした像の由来には何の関心も無いように、像の上には数羽の鳩がとまっている。

「天馬の広場」の前方右手には「コリア庭園」が設けられている。神奈川県と韓国京畿道との友好提携を記念して造られたもので、白砂の印象的な庭園は異国情緒漂う落ち着いた空間だ。
「コリア庭園」の前あたりまで行くと、眼前には池が見えてくる。ここから見えるのは三つの池のうちの「下の池」だ。「下の池」から左方へ回り込むように「中の池」、そして「上の池」と並んでいる。それらの池はいずれもかつて農耕用の溜め池として造られたものだ。園内に残る水神祠の石碑には1787年(天明7年)と刻まれており、歴史の古さを偲ばせる。

三ツ池公園
現在では公園の周囲はすっかり市街地となってしまっているが、池が造られた時代には水田が広がるのどかな土地だったのだろう。昭和初期あたりまではまだ周辺には水田が残り、こうした溜め池も数多くあったのらしいが、戦後は急速に市街化が進み、水田も溜め池も姿を消していったのだという。三ツ池公園はそうした中に残された溜め池の周辺を公園として整備したものだが、その歴史は1950年(昭和25年)の失業者対策事業として始まっている。池の護岸や広場の整備を経て、1954年(昭和29年)には県立公園に指定、以後野球場やテニスコートなどの施設を増設、整備が重ねられて現在に至っている。

総面積29.7haという公園は、池の周囲を巡る散策路の距離のためか、実際の数値以上に広く感じる。公園は基本的に雑木林の丘の間に横たわる池という地形で、そのため明るい開放感を与えてくれるという印象ではないが、その雑木林によって周囲の市街地からは完全に隔たり、町中の喧噪とはまるで無縁の穏やかな空間を形作っていると言っていいだろう。
「コリア庭園」の前から「下の池」の南岸に沿って回り込むと「中の池」だ。「下の池」と「中の池」とは堤によって分けられ、堤を歩けば対岸へと渡ることができる。「中の池」の岸辺をさらに辿ると「上の池」に至る。かつては丘陵に囲まれた谷戸の奥であったのだろう。公園内の丘陵部には雑木林が残され、木立の中を散策路が辿っている。林の中の散策も木漏れ日が美しく、絶えず聞こえる野鳥のさえずりや木々の間に見え隠れする池の風情がいい。

三ツ池公園 水の広場
「上の池」は細長く南へ延びて、岸辺の通路の途中には「滝の広場」という場所が設けられている。小さな滝と池とで形作られた空間だが、人工的な雰囲気が少々風情に欠けるようでもある。「上の池」の奥まったところは「水の広場」と名付けられ、子どもたちのための水遊びの場所になっている。噴水が置かれ、そこから小さなせせらぎが流れ出て「下の池」に注いでおり、裸足で水に入って遊ぶ子どもたちの姿がある。「上の池」の西岸には「ジャンボすべり台」の置かれた一角がある。横に広いコンクリート製のすべり台で、子どもたちに人気の場所であるようだ。

「下の池」から「中の池」の岸へと辿り、西へと回り込むとちょっとした広場がある。園内の案内図には「ロータリー広場」とある。のんびりと穏やかな雰囲気と花壇の花々の美しい広場で、シートを広げてくつろぐのに良いところかもしれない。木陰でランチを楽しむグループや家族連れの姿も少なくない。この広場からさらに西の高所へ登ると「遊びの森」という一角だ。案内図には「トリム広場」とあるが、2000年度に整備し直されたもののようだ。丘陵の斜面を利用して造られた各種の遊具が特に小さな子どもたちに最適であるように思える。

三ツ池公園 子どもの広場
遊びの森」の一角から抜け出て「中の池」の岸辺を進むと「子どもの広場」という一角がある。ここも子どもたちのためのスペースで、遠足で訪れた子どもたちの遊ぶ姿があった。「子どもの広場」の前から木漏れ日の美しい岸辺の散策路をさらに進むと「下の池」の辺に休憩所が設けられている。休憩所には売店があり、各種ドリンク類やお菓子などを売っている。休憩所からは「下の池」から「中の池」にかけてが一望でき、なかなか美しい景観だ。

「下の池」の西岸を進むと公園の北端部分に至る。公園の北側部分は各種グラウンドが占めており、テニスコート、プール、野球場、運動場などが置かれている。そのさらに北は公園の北門で、駐車場も用意されている。さらに公園を取り巻く道路で隔てられて分区園もあるが、道路を横切るのが少々面倒ではある。テニスコートと「下の池」との間の通路を辿ると「コリア庭園」の前から正門へと至る。
三ツ池公園
池の岸辺を辿る散策路、林の中を辿る散策路、それぞれにのんびりと歩けばかなりの時間を要するが、緑に包まれた園内の散策は決して退屈ではない。池の水は美しく澄んでいるというわけではないが、やはり水辺の涼しげな風情が特に初夏から夏にかけては魅力的だ。歴史の古い公園であるためか、広場の在り方や遊具類などはその考え方に少々古くささを感じさせる部分もあるが、子どもたちのための遊び場としても充分に魅力的なものだろう。園内に売店はあるが飲み物とお菓子などを少々売っているだけで、食事のできる施設などはない。家族やグループでのんびりと訪れる時にはお弁当持参がよいだろう。

池とその周囲の雑木林によって穏やかな空間を形作る三ツ池公園は、テニスコートや野球場などの各種スポーツ施設も抱え、古くから市民の憩いの場として親しまれてきた。細部を見れば少々古びた観があるとしても、市街地の直中に悠然と横たわる有り様は依然として神奈川の代表的公園のひとつとしての名に恥じない。公園利用者が公園に求めるものはそれぞれに違っていて、公園の整備は難しいものがあるのに違いない。三ツ池公園では「再生三ツ池公園づくり」として、市民参加型で公園の今後の在り方などを模索し、整備を進める試みが行われているようだ。この公園がこれからどのように姿を変えてゆくのか楽しみではある。
三ツ池公園

三ツ池公園