横浜線沿線散歩公園探訪
八王子市長沼町
長沼公園
April 1999
現況と異なる内容を含んでいます
長沼公園
京王線の「長沼駅」を出て南に向かい、五分ほど歩くと長沼公園に辿り着く。ひとつの山の北側斜面をそのまま公園としたと言っても良いような都立の公園で、谷戸と尾根とが入り組んだ園内は鬱蒼とした雑木林に覆われている。ほぼその全貌が実は京王線の車窓から見えるのだが、そこが公園だと気付く人はあまりいないかもしれない。両脇には造成された住宅地が迫るが、自然のままに残された多摩丘陵の姿は魅力的で、手軽な山歩きを楽しむ場所として多くの人々に親しまれているようだ。
「霧降の道」にて
京王線の「長沼駅」のすぐ東側の道路を南に向かい、北野街道を横切り、小さな川に沿った細道を歩いて行くと都立長沼公園の入口に辿り着く。公園入口は他にも数ヶ所あるが、ここはそのうちの「長沼口」と呼ばれるところだ。周囲には水田も残り、庚申塚などの姿もあって、かつてののどかな田園風景を偲ぶことができる

「六社宮」という名の社を右手に見ながら公園内に入って行くと石畳の散策路だ。これは「霧降の道」と名付けられており、長沼公園のメインの散策路のひとつとなるものだ。初めて訪れる人はまずこの「霧降の道」を登ってゆくのが良いだろう。高低差が100メートルあるという公園だけあって、散策路はなかなかの坂道だが、下方では沢に添い、登るに連れて緑溢れる林を眼下に見ての散策はとても気分の良いものだ。途中、ベンチなどを設置した休憩所もあるので、無理せずのんびりと林の中の散策を楽しむとよいだろう。ふと足を止め、揺れる木漏れ日の中に野鳥の声を聴く瞬間は心安らぐものだ。

「頂上園地」付近にて
「霧降の道」を登り切ると丁字路に突き当たるが、その小道は長沼公園を含む丘陵の尾根を東西に辿る「野猿峠ハイキングコース」という散策路になっている。このコースをまず左(東)に折れてみよう。しばらく歩くと「展望園地」と名付けられた広場に着く。ここは標高190メートルあるそうで、長沼公園で最も高所に当たる場所だ。ここからの北側への眺望は実に見事なもので、眼下の町並みから遠くの山並みまで素晴らしい景観が広がっている。京王線や、中央線の姿も遠くに小さく見え、その姿はここから見るとなかなか可愛らしい。「展望園地」には桜やモミジの木もあり、その季節には美しい姿を見せてくれそうだ。

「展望園地」を後にしてさらに東に進むと、「野猿峠ハイキングコース」は「平山口」の階段に辿り着く。右方(南)には南陽台の住宅街が見える。「野猿峠ハイキングコース」は本来ならそのままさらに東へと続くのだが道路に分断された形になってしまっている。そこから左手(北)へと分け入って行く小道があるが、これは「栃本尾根」を辿る尾根道で、進んで行くと「長沼口」より東の「中谷戸」の付近に降りることができる。かなりの細道で急坂もあり、山歩きに慣れた人以外は避けておいた方がよいかもしれない。こちらの道から登ってくる人の姿もあるが、長沼公園の散策に慣れた人たちであろうと思われた。

「野猿峠ハイキングコース」を「平山口」から引き返し、「展望園地」を過ぎ、「霧降の道」が繋がる部分を過ぎるとすぐに「頂上園地」という広場がある。屋根付きのベンチなどが設置され、一休みするには良い場所だ。お弁当を広げるにも好適の場所と言えるだろう。ここもまた桜の木が多く、桜の季節に合わせて訪れるのもよいだろう。また園内でトイレが設置してあるのもこの「頂上園地」のみであるので注意が必要だ。

「西尾根」にて
「頂上園地」の少しばかり西側、林の中に分け入ってゆく小道の入口の脇に立てられた「やせ道があるので自信のある方だけお通り下さい」の旨の注意書きが眼を引く。実は「長沼口」から「霧降の道」へと進んでゆくところで、右手の沢を越えるあたりに同様の注意書きがある。これは「長沼口」から「頂上園地」の傍らまで「霧降の道」とは別ルートで繋ぐ尾根道のことを指している。「西尾根」と呼ばれるその尾根を辿るこの小道はまさに山道と呼ぶべきもので、よじ登るような坂道もあり、わずか数十センチほどの幅で両脇は崖となっているような部分もある手応えのある尾根道なのだ。注意書きも決して誇張ではない。それでもここを通る人は少なくないらしく、尾根道はしっかりと人の足によって踏み固められている。山歩きに慣れた人ならぜひ通ってみて欲しい。長沼公園が二度目、三度目という方も挑戦してみるとよいだろう。

「野猿峠口」からの眺望
「頂上園地」で休憩した後はそのまま「野猿峠ハイキングコース」を西に辿るとよいだろう。しばらく進むとやがて視界が開けて住宅地の脇に出る。絹ヶ丘の住宅街だ。このあたりが「野猿峠口」で、ここから北側の公園部分は林ではなく草原の斜面になっていて眺望も開けて気分が良い。このあたりも桜やモミジの木が多く、それらの季節に訪れてみたいと思わせてくれる。今回訪れたのは桜の盛りが過ぎた四月の中頃だったが、草原の斜面の中程には遅咲きの品種の桜が新緑を背景に美しい姿を見せてくれていた。

木道
草原の斜面を眺めながら「殿ヶ谷の道」と名付けられた散策路に辿って「絹ヶ丘口」まで進むと、下方の谷戸部分へ降りて行く小道がある。下方には階段状の木道が見えるが、初めて眼にするとそれが何なのかよくわからないかもしれない。実際に通ってみるとフィールドアスレチック風に設計された木製の階段で、谷戸部と「井戸たわ尾根」の尾根道とを結ぶ木道であることがわかる。木道の頂上部は展望台となっており、雑木林の園内にアクセントを添えて楽しい。下から登って尾根道を辿って「野猿峠口」へ向かってもよいし、尾根道から降りてくるのも楽しいので余裕があればぜひ歩いてみたい。木道の下から沢に添って下って行くと、やがて「長沼口」の「六社宮」の傍らに出る。

京王線の長沼駅から歩いて「長沼口」から公園に入り、「霧降の道」を登り、「野猿峠ハイキングコース」に出たら「展望園地」や「頂上園地」に寄り道をしつつ「野猿峠口」へ向かい、木道や「殿ヶ谷の道」を歩いてまた「長沼口」へ戻るというコースが、園内の主要部分をほぼ一周する形になり、初めて長沼公園を訪れる人には最適のコースだろう。園内には桜やモミジも多いので、桜の季節から新緑の季節、あるいは紅葉に染まる季節などを選ぶとより楽しめるに違いない。園内はもちろん、長沼駅近辺にもお店などは無く、訪れる際は水筒やお弁当などを持参した方がよい。
「野猿峠口」からの眺望
園内は沢の流れる谷戸部と尾根とがいくつも入り組み、それぞれが季節毎の表情を見せてくれて飽きない。緑溢れる中での野鳥の声もまたすがすがしい気分を誘ってくれるものだ。二度、三度と訪れる人はまだ歩いていない尾根道に分け入ってゆくなどして楽しむとよい。駐車場は無いが京王線の長沼駅から近く、気軽に訪れることができる。溢れるような自然は子どもたちにも見せてあげたいと思うが、せめて小学生以上でないと園内を歩くのがたいへんだろう。園内に遊具類などはなく、小さな子どもたちの遊び場としては退屈かもしれない。小さな子どものいる家族連れや、自然を楽しみたいが山歩きは苦手という人なら、バスで北野駅あたりから絹ヶ丘まで行き、「殿ヶ谷の道」近辺から比較的平坦な「野猿峠ハイキングコース」のみの散策でも充分に楽しむことができるだろう。
追記 上記内容は1999年4月に訪れたときのものである。この後、公園北東部の「中谷戸」と呼ばれるあたりの一角に駐車場が設置されている。駐車場は十数台分の駐車スペースがあるようだが、北野街道から駐車場へ至るルートがわかりにくく、また付近の道がたいへんに狭いため、大型車や運転に自信の無い人は車で訪れるのはやめておいた方がよい。また、「殿ヶ谷の道」北側の谷戸部と「井戸たわ尾根」の尾根道とを繋いでいた木道階段は撤去されたようだ。その他、問い合わせ先などについては東京都公園協会のサイト(頁末「関連する他のWEBサイト」欄のリンク先)を参照されたい。
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