横浜線沿線散歩公園探訪
町田市野津田町
野津田公園
Visited in June 2000
(本頁の内容には現況と異なる部分があります)
野津田公園
町田市野津田町の北部から一部は小野路町にまたがり、多摩丘陵の緑の中に横たわるようにして野津田公園がある。野津田公園は面積も広く、西南部には陸上競技場が置かれ、その周囲を囲むようにして多摩丘陵の雑木林が残されている。
野津田公園
野津田公園の西側部分は陸上競技場やスポーツに最適な多目的な広場があり、市販の地図には「野津田総合運動公園」とも書かれているところを見ると、そもそもそういった用途を前提に整備されたものなのだろう。陸上競技場はふだんはひっそりとしているが、傍らの多目的広場では常に人の姿があり、またテニスの「壁打ち」用の場所も設けられていて、テニスの練習に励む人の姿は多い。

多目的広場の西は丘陵へと上り、四阿も置かれた広場がある。そこからは視界も開けて陸上競技場が一望できて爽快だ。近くには野津田高校や町田養護学校、多摩整形外科病院などもあり、広場の脇を通る道には人々の往来も多い。この広場から散策路に沿って陸上競技場を右手に見ながら進むと、散策路は木立の中を抜けて公園の西口へと至る。
野津田公園
陸上競技場の東側には平坦な芝生の広場がある。周囲を丘陵に囲まれているせいか、開放感溢れるという雰囲気ではないが、適度な閉塞感が落ち着いていてのんびりと過ごすのによい場所だ。広場の脇にはテーブル付きのベンチなどもいくつか設けられていて、そこでお弁当を広げてランチタイムを楽しむ家族連れの姿などを平日でも見ることが多い。芝生の広場の脇にはフィールドアスレチック風の大型の木製遊具の置かれた一角があり、ここは小さな子どもたちの遊び場として最適で、休日には大勢の子どもたちの歓声が響いている。
芝生広場の北には雑木林の中に包まれるように小野路屋敷がある。芝生広場の脇に小さな門があって雑木林の中へ分け入るように小道が延びており、そこから小野路屋敷の横へと出ることができるが、公園の西口からなら車でも小野路屋敷の前まで来ることができて駐車場も用意されている。小野路屋敷は会議やお茶会などの催し物に使用できるということで、端正で美しい庭園なども持っているが、普段はあまり人の姿もなく閑散としている。
村野常右衛門生家
一方、芝生の広場のさらに東には、村野常右衛門の生家が復元移築されている。村野常右衛門は自由民権運動に於ける重要な人物で、1859年(安政6年)、野津田町に生まれている。傍らに設けられた案内板によれば、江戸時代末の創建時には茅葺きであった生家を、1924年(大正13年)に大改修を行い、鉄板葺きに改めたという。鉄板葺きは当時は珍しかったらしく、当時の村野常右衛門の政治家としての活躍ぶりがうかがえる。この生家は町田市が村野家から譲り受けたもので、1994年(平成6年)に町田市指定有形文化財となっている。
湿性植物園
湿性植物園
村野常右衛門生家から公園北口を出て、道路を渡ると、その向こうに一段低くなって湿性植物園がある。調整池を利用して整備したもので、「台風時には冠水の恐れがあります」などと案内板には書かれているのがおもしろい。公園北入口の門の横の入口を降りてゆくと、眼下に池が見えてくる。もちろんそもそもは調整池なので山間の池のような風情はないがひっそりと沈むような佇まいがいい。

池の向こう側は湿地になっており、セキショウ、ノハナショウブ、キショウブ、カキツバタ、コガマ、ミソハギ、セリ、ヘラオモダカなど、10種類約20,000株以上の植物が見られるという。湿地の周囲には散策路が巡っており、それらの植物を観察しながらのんびりとした散策を楽しめる。植物園入口の傍らに主な植物の解説が書かれた案内板が置かれているので、興味ある人は見ておくとよいだろう。

これらの植物は丹誠込めて栽培されているというわけではなさそうで、ほとんど自生に近い形で育っているように見える。例えば花菖蒲なども観賞用の菖蒲田のような豪華さとは無縁で、どちらかと言えば野性味を感じる咲き方だが、そこに魅力を感じる人も少なくないだろう。またこの湿性植物園は紫陽花の名所でもあり、湿地の周囲や湿地から一段高くなったところに設けられた散策路沿いなどに植えられた紫陽花を楽しむことができる。
【追記】
2012年6月下旬に訪れたとき、湿性植物園にも周辺にもほとんど紫陽花が咲いていなかった。時期的な要因もあると思うが、野津田公園ではあまり紫陽花を積極的に管理していないようにも思える。
野津田公園
湿性植物園の西、公園北入口から入って道路の左手には臨時駐車場も兼ねた広場があり、その一角にはテニスコートも設けられている。その広場の南側には多摩丘陵の雑木林が広がっており、「こもれびの路」と名付けられた散策路が林の中へと延びている。散策路は木立の中を山道のように縫って抜ける部分があり、また少しばかり開けた場所を通り抜けたりと、変化に富んでいて楽しめる。

散策路を辿って一山越えるような感じで南へ抜けると「上の原広場」と名付けられた開けた場所に出る。訪問時は残念ながら整備中とのことで大型の建設機械が動いていて立ち入ることができなかったが、丘陵の中にぽっかりと開いた広場はなかなか爽快で楽しめるように思える。このあたりは鎌倉古道が未整備のままに雑木林の中に残る場所でもあるらしい。

雑木林の一帯は公園用地と私有地が入り組んでいるようで、散策路の両脇にロープが張られて「両脇は私有地であるので立ち入らないように」との旨の注意書きもあった。このあたりは丘陵の中に開かれた畑の風情がのどかで、多摩丘陵散策の楽しみを存分に味わえるだろう。散策路をさらに南に辿るとやがて公園の区域外へと出て、車一台がようやく通れるほどの舗装路がある。この道路を降りると芝溝街道の華厳院の傍らへと抜ける。芝溝街道沿いには「野津田公園入口」を示す古びた案内板が立っていた。
野津田公園はスポーツする人たちにとっても施設の充実が魅力的であろうし、陸上競技場脇の芝生の広場のあたりは家族でのピクニック気分での利用にも最適であり、また雑木林や里山歩きの好きな人にとっては南側部分の丘陵が心惹かれるものだろう。それぞれの楽しみ方で休日の一日を過ごすことができるに違いない。

駐車場は西口側と北口側とに十分な広さで用意されているが、芝生の広場や雑木林などが目当ての人には北口の駐車場が便利だろう。バスを利用するのであれば、町田駅や小田急鶴川駅からの「野津田車庫」行きバスで「野津田車庫」下車、徒歩10分ほど。里山散策の趣味の人であれば、芝溝街道を通るバス路線や小野路方面のバス停などを利用して野津田公園を横断するようなコースでの散策もよいものだろう。
野津田公園
【追記】
本WEBページ内容は基本的に2000年6月に野津田公園を散策したときのものである。その後、野津田公園はさらに整備が進められている。東端部には多目的に使用可能な「上の原グラウンド」が設けられ、周辺には草はらの丘などが整備されている。それに伴って「東入口」が設けられ、グラウンド横に駐車場も設置された。また小野路屋敷の北側には「ばら広場」が整備され、200種超、約600株のバラが初夏と秋に花を咲かせ、来園者を迎えている。他にも種々の改良改修が行われている。多目的広場や「小野路屋敷」など、各種施設の利用案内、問い合わせ先については指定管理者によるサイトや町田市サイト(頁末「関連する外部ウェブサイト」欄のリンク先)を参照されたい。
野津田公園