横浜線沿線散歩公園探訪
城山町〜津久井町
津久井湖城山公園
Visited in June 2001
(本頁の内容には現況と異なる部分があります)
津久井湖城山公園
神奈川県北部に位置する津久井湖の周辺は県内有数の景勝地として有名だが、現在その一部は県立津久井湖城山公園として整備が進んでいる。特に以前から津久井湖園地として親しまれてきた城山ダムの両岸のエリアはそれぞれ「水の苑地」、「花の苑地」として整備され、以前にも増して多くの人々が訪れて賑わっている。

津久井湖城山公園
城山町に位置する城山ダム東岸が「水の苑地」で、芝生の広場や噴水などを配した「水の広場」やボート乗り場、津久井湖記念館などもあり、休日にのんびりと訪れる行楽地といった雰囲気だ。津久井町に位置する西岸は「花の苑地」として再整備され、その中に津久井湖観光センターを置く。「花の苑地」は奥相模観光の拠点のひとつとして、あるいはまた国道を行き交う車の休憩所としての役割もあるように思える。県立公園の範囲はさらに津久井城址があることで知られる城山も含み、その面積は100ha近くにもおよぶ。

湖畔の苑地は春は桜の名所として知られ、夏は湖畔の涼しげな風情が魅力だ。緑に包まれた津久井湖と城山の周辺は初夏の新緑や秋の紅葉も美しく、四季折々に訪ねたい景勝地としての魅力に溢れている。
津久井湖城山公園
国道413号線を城山町から津久井町へと城山ダムを渡る直前、城山高校の傍らの丁字路交差点を右折すると津久井湖城山公園の「水の苑地」だ。津久井湖記念館の傍らに入口広場があり、さらに少しばかり進んだところに駐車場も設けられている。この道路から湖畔へかけての斜面が「水の苑地」として整備されており、芝生の広場やテニスコートなども置かれて湖畔を望む憩いの場として訪れる人も多い。

津久井湖城山公園「水の苑地」
入口広場から湖畔に向けて降りるとカスケードが設けられており、さらにその下が「水の苑地」の象徴とも言える噴水と芝生の広場がある。入口広場からカスケードへ至る階段の両脇はバラの花壇で、花の季節には鮮やかな色に染まって視界を彩ってくれる。噴水の設けられた池は水路となって芝生広場を円形に取り囲んでいる。噴水の飛沫などはいかにも涼しげで、夏場の子どもたちの水遊びによさそうなのだが、残念ながら水が汚れているために水遊びはできないとの旨の注意書きがある。

芝生広場のさらに奥は津久井湖を望む展望デッキが設けられ、湖の景色を眺めながらくつろぐ人の姿も多い。左手間近に城山ダムがあり、国道413号線がその上を通る。対岸には「花の苑地」が見え、その背後にそびえるのは津久井城址のある城山だ。緑濃い山々に囲まれて穏やかに満々と水を湛える湖は、その景観を見ているだけで心落ち着くような気がする。

津久井湖城山公園「水の苑地」
展望テラスの傍らには小さな売店があり、その横から湖畔のボート乗り場へと降りて行ける。行楽シーズンには利用客で賑わうが、静かに湖面に浮かんで利用客を待つボードの表情も風情があっていい。ボート乗り場への階段脇から湖岸に沿ってさらに奥へと小道が延びるが、やがて行き止まりになる。奥まった場所であるためか、静かな一角で、津久井湖の景色を楽しみながらお弁当でも広げるのによさそうだ。

「水の苑地」は城山高校に近く、平日の午後などには授業の終わった高校生たちがのんびりとくつろぐ姿も見かける。苑地のほぼ中央にはテニスコートが置かれており、ラケットを携えて訪れる人の姿も多く見かける。春は桜の名所としても知られるところで、休日には行楽客で賑わう苑地だが、普段は近辺に暮らす人たちの憩いの場として親しまれているのだろう。
【追記】
2001年当時には設けられていた、展望テラス横の売店とボート乗り場は現在は閉鎖されている(2020年4月確認)。
「水の苑地」から企業庁管理局城山事務所の傍らを抜け、国道を歩道橋で越えて城山高校の脇の小道を進むと城山ダムを望む展望台へと行くことができる。「水の苑地」の一部としての位置づけではないようだが、時間があれば行ってみるとよい。湖側とは反対の方向から城山ダムを間近に見ることができ、なかなかの景観だ。谷間に築かれて川の流れをせきとめ、その上流に大きな湖を出現させた構築物の姿を威容と見るか、あるいはそこに醜悪なものを感じるかは個人の視点によるだろう。しかしダムの上流側に水を湛える津久井湖の姿と下流部分の渓谷の風景とのギャップには言い知れぬ畏怖のようなものを感じる。

津久井湖城山公園 城山ダム
城山ダムは県内三番目のダムとして1965年(昭和40年)に完成している。津久井湖はそれによって出現したダム湖だ。城山ダムの建造に際しては水没地域住民の反対の声は大きく、1953年(昭和28年)に発表された城山ダム建造計画から1961年(昭和36年)の工事着手までに実に八年以上の期間を費やしている。城山ダムは水道用水や電力の供給など多大な恩恵を神奈川県民に与えることにはなったが、ダムの建設によって代々受け継がれていた土地が湖水の下に沈むことになった人々の思いは想像を超えるものがあったに違いない。

津久井湖を望む城山町の湖畔、「水の苑地」の傍らに立つ津久井湖記念館は、ダム完成から一年後の1966年(昭和41年)に建てられたもので、運営は財団法人津久井湖協会によって行われている。水没地域の補償交渉の最後に県から提示された「城山ダム建設に伴う総合施策要項」に基づき、水没者の共済事業とともにこの記念館がスタートしたのだと、記念館のパンフレットにはある。記念館内部には津久井湖記念館資料室が設けられ、水没地域の人々から収集された生活用具や往時の風景を伝える写真などが展示されている。ダム完成からすでに三十数年が経過し、ダムを取り巻く状況も変わってきたようにも思えるが、静かに水を湛える津久井湖を眺めながら、その湖底にかつて人々の暮らしがあったことに思いを馳せるのも感慨深いものがある。
津久井湖城山公園
津久井湖城山公園「花の苑地」
「水の苑地」から津久井湖を挟んで対岸に位置するのが「花の苑地」だ。「花の苑地」はその名が示すように花々の美しい「ガーデンテラス」をメインに据えた施設だ。ハーブを中心とした宿根草が植えられたテラスは整然とまとめられ、散策路に据えられたベンチに腰を下ろしてのんびりするのもよいものだ。緩やかな傾斜を伴った芝生の広場も穏やかな印象がいい。

花々を愉しめるのも魅力だが、やはり津久井湖畔という立地がよく、湖面を見下ろすような視界が爽快だ。苑地の端に立って木立の間に見える津久井湖の景観を楽しむ人の姿は多い。対岸には「水の苑地」があり、ボート乗り場の様子などが小さく見えている。そうした対岸の景色や静かに水を湛える湖面の様子を眺めていると時の経つのを忘れてしまう。

津久井湖城山公園「花の苑地」から「水の苑地」を見る
苑地の中央には津久井湖観光センターが立っている。周辺の観光案内を兼ねて売店も併設する施設だが、地場野菜の販売なども行っており、それを目当てに訪れる人もいるようだ。駐車場脇には蕎麦屋などもあり、手軽な食事を済ませることも可能だ。国道413号線沿いの立地ということもあり、車で行き交う人たちの休憩所としての利用も多いのだろう。国道413号を挟んだ背後の山は津久井城址のある城山で、山頂へと至る小径が延びている。麓の国道沿いは桜が植えられて「桜の小道」として整備され、春は美しい景観が楽しめる。四阿なども置かれており、木々の間に見える津久井湖を眺めてのんびりするのもいいだろう。
「花の苑地」はまた城山への登山口のひとつとしての役割もあるだろう。城山山頂へ向かう道はいくつもあり、こちらからのルートもそのひとつだ。標高350メートルほどの城山は歩き慣れていない人にはそれなりの手応えがあると思えるが、木々の間に見え隠れする津久井湖や城山ダムの姿を見ながら自分なりのペースで登ればいいだろう。野鳥の声を聞きながら鬱蒼とした樹林の中を歩くのも楽しく、ところどころ視界の開けたところからの展望も爽快だ。
津久井湖城山公園
以前から景勝地としてよく知られている津久井湖畔だが、県立公園としての整備によってますます魅力が増しているように思える。特に「水の苑地」は噴水などによる涼しげな風情が夏の行楽地として最適だろう。湖畔のテラスでのんびりとくつろぐのもいいし、ボートに乗って遊ぶのもいい。家族でお弁当を持って訪れるのにも良いところだろう。駐車場はそれぞれの苑地に設けてあり、駐車スペースにも比較的余裕があるが、行楽シーズンや桜の季節の休日には満車となってしまうことが多い。バスを利用するのもよい方法だろう。
【追記】
2001年当時、津久井湖城山公園は津久井郡城山町と津久井郡津久井町の両町に位置していたが、2006年(平成18年)3月30日に津久井郡津久井町が、2007年(平成19年)3月11日には津久井郡城山町が、それぞれ相模原市に合併されている。2001年以降も公園は整備が進められ、城山の南裾に「根小屋地区」が整備され、公園管理事務所もこの一角に置かれている。交通アクセス、利用案内などの詳細については公園公式サイトや津久井湖記念館公式サイト等(頁末「関連する他のWEBサイト」欄のリンク先)を参照されたい。
津久井湖城山公園