横浜線沿線散歩街角散歩
八王子市別所
別所のせせらぎ緑道に沿って
May 2000
せせらぎ緑道
八王子市別所の街は、その中を水路が流れている。水路の脇は遊歩道として整備され、のんびりと散策するのも楽しい。この水路に沿って、八王子市別所の街を歩いてみた。
水路は南の長池から堀之内駅近くまで、ほぼ別所の街の中心を抜けて流れている。かつて多摩ニュータウンとして造成される以前の雑木林の丘陵であった頃にも同じような流れがあったのらしく、そのイメージを復元した「せせらぎ」として街造りの中心として据えたものであるという。

長池見附橋
「せせらぎ」は長池見附橋の下の池から流れ出ている。この池の水は別所の街の南端、かつては谷戸の奥まったところにあった長池の水を水源としているが、現在では地中に貯まった雨水なども利用されているのだという。かつて雑木林の丘陵だった頃には、そうした里山には自然の保水機能があったものだが、造成されて現代的な住宅街となった今では地中の雨水管や地中ダムなどの技術によって保水機能を持たせており、この「せせらぎ」の水量も一定に保たれているのだという。
別所お月見公園
長池見附橋の下の池から北へ向かって、自然石などを使用して渓流を模した「せせらぎ」が流れている。「せせらぎ」の両脇には樹が植えられ、両脇に舗道が沿っている。少しばかりゆくと左手に小さな公園がある。別所お月見公園という。広場と遊具があるだけの小さな公園だが、小さな子どもを連れたお母さんたちの姿が多い。近所に暮らす人たちなのだろう。公園の隅には円形のデッキが設置されており、そこから「せせらぎ」沿いの舗道へ向けて滑り台が造られていて子どもたちが遊んでいる。

公園脇の「せせらぎ」の舗道には小さな竹林もあって、傍らにはベンチが置かれている。「せせらぎ」では水浴びをする鳩の姿もある。舗道沿いの低木などには木々の名を記したプレートも付けられており、それらを確かめつつの散策も楽しい。
せせらぎ
下流に下って道路を渡ると、「せせらぎ」は渓流風の造りから現代的な造形の水路へと姿を変えた。遊歩道的な雰囲気は少々失せてしまい、水も滞りがちのように見えるが、こうした住宅街のただ中をこのような形で水路が通っているというのも面白い。さらに面白いのは、その水路はそのまま歩道橋の上を流れてゆくことだ。「せせらぎ橋」と呼ばれるこの歩道橋は、水路を通すためなのか、通常のものより堅牢な造りで、片側二車線のバス通りを水路を背負って跨いでいる。水路の中を覗き込むと小魚の泳ぐ姿が見えた。

「せせらぎ橋」の北にはスーパーがあり、その向こうに蓮生寺公園の雑木林が見えている。「せせらぎ橋」を渡ると、水路は左に大きく曲がる。目の前には日枝神社の鳥居が見える。神社の向こうは別所公園だ。

ノナ由木坂あたり
日枝神社の横を過ぎると「せせらぎ」はノナ由木坂という地区の中を流れて行く。岸辺に柳などが植えられ、また水辺の花なども景観に彩りを添える。時には鴨の姿も見ることができて、その愛嬌のある姿に心が和む。ノナ由木坂はコーポラティブ方式によって建設、分譲された団地で、「せせらぎ」を街の景観の一部として取り入れた美しい街だが、1998年の東京都住宅供給公社による未入居住戸の値下げ販売問題によって知られることになったところでもある。ノナ由木坂を過ぎると堀之内駅も近く、「せせらぎ」は地下へと流れ込んで姿を消す。
この「せせらぎ」沿いの舗道は「せせらぎ遊歩道」とも「せせらぎ緑道」とも呼ばれて、この街に暮らす人たちに親しまれている。「せせらぎ」は残念ながら「消毒していないので中に入らないでください」との表示があるが、夏には子どもたちの水遊びする姿があるのではないかという気がする。この「せせらぎ」を中心にした美しい街並みの周囲には別所公園蓮生寺公園をはじめとして大小の公園も点在し、住環境としては良いところだろうと思える。

またこの地域は「NPO・FUSION長池」に見られるように住民のコミュニティ意識の高さでも知られる。そのコミュニティの象徴が長池を利用した「長池公園」と言ってもよいだろう。造成された住宅街に移り住んで来た人々が、その地に昔から在った風景を拠り所に結束して行くというのも、とても興味深いように思える。
別所お月見公園近く