横浜線沿線散歩街角散歩
相模原市中央区上溝〜南区当麻
番田駅から原当麻駅へ
Visited in September 2022
番田駅から原当麻駅へ
夏の暑さも退いた9月半ば、JR相模線番田駅に降りた。番田駅からあちこち寄り道をしながら南へ辿り、原当麻駅まで歩いてみようと思ったのだった。相模線と併走するように辿る県道46号(相模原茅ヶ崎線)を車で通ることは少なくなく、いつか機会を設けてこの辺りを歩いてみたいと思っていた。秋晴れに恵まれた日、ようやくその機会を得たというわけだ。
番田駅から原当麻駅へ JR相模線番田駅が開業したのは1931年(昭和6年)のことで、当初は相模鉄道上溝駅だった。1944年(昭和19年)に国有化、その際に相模線番田駅となった。1987年(昭和62年)には国鉄からJR東日本となり、2016年(平成28年)に無人駅になっている。

かつては地方の駅を思わせるような小さな駅だったが、2017年(平成29年)から翌年にかけてリニューアル工事が行われ、2018年(平成30年)5月から現在の駅舎になっている。小さいながらも現代的なデザインの駅舎である。
番田駅から原当麻駅へ 番田駅から西へ(正確には南西の方角へ)向かうと100m足らずで県道46号(相模原茅ヶ崎線)に出る。「上溝」交差点から茅ヶ崎市へ繋ぐ県道で、交通量は少なくない。ひっきりなしに車が通り過ぎる。

県道46号を南へ(正確には南東の方角へ)辿ろう。番田駅前から250mほどで「上番田」交差点だ。交差点の角に立派な樹木(おそらくケヤキだろう)の立つ家がある。一般の民家のようだ。おそらく昔からこの地に住まわれているのだろう。

番田駅から原当麻駅へ 「上番田」交差点から県道46号をさらに南へ進もう。100mと少し行ったところ、道の東側に「八王子道」と記された石標が建っている。石標は古いものではなく、かつて八王子との往来の人々が行き交った道であることを示す目的で近年になって造られたもののようだ。

傍らには庚申塚なども祀られている。複数の塚が並んでいるのは、おそらく付近に点在していたものをここに集めたものだろう。今の県道46号は地域の重要な路線として交通量も多いが、昔から南北を繋ぐ街道があり、多くの人々が行き交っていたのだろう。

番田駅から原当麻駅へ 八王子道の石標から300mほど進んだところで、県道46号から東へ細い道が入り込んでいる。すぐに「小野沢踏切」で相模線を越える。県道を逸れて、少し回り道をしてみたい。

「小野沢踏切」から250mほど進むと「諏訪橋」が鳩川を跨いでいる。鳩川は巨大な溝のような様相だが、河岸には鬱蒼と草木が茂っている。

諏訪橋から鳩川を覗き込んだら、来た道を戻ろう。「小野沢踏切」と鳩川の間に十字路があった。そこまで戻って十字路を南へ折れていこう。

番田駅から原当麻駅へ 十字路から150mほど進むと、再び十字路がある。これを右手へ、すなわち県道46号方面へと折れる。少し行くと相模線の線路を背負って諏訪神社が鎮座している。

この諏訪神社は上溝諏訪神社、あるいは番田諏訪神社と通称される神社で、創建の年代は不明ながら鎌倉時代頃に村の鎮守として祀られたもののようだ。1913年(大正2年)に亀ヶ池八幡宮に合祀されたが、1918年(大正7年)に復祀されている。

かつては長閑な農村の鎮守だったのだろうと思うが、今は周辺は住宅地で、社殿のすぐ背後には相模線の線路が通っている。静謐さには欠ける環境だが、境内は凜とした空気を纏って古くからの鎮守らしい佇まいを見せている。今回の散策の無事を願って参拝していこう。
番田駅から原当麻駅へ 諏訪神社横から西へ向かえば相模線の線路を踏切で越えてすぐに県道46号に出るが、県道には向かわず、東へ戻って県道46号と鳩川との間に広がる住宅地の中を辿って南へ向かう。

しばらく歩くと住宅地から農地が広がるところに出た。住宅が点在する中に畑地が横たわり、長閑な風景だ。その風景の中に送電鉄塔が聳えている。2本の送電路が併走しているようだ。ひとつは佐久間東幹線、もうひとつは麻溝線だ。田園風景の中に建つ送電鉄塔の姿が独特の興趣を漂わせている。2本の経路が並んでいるのもいい。送電マニアの人ならぜひ訪ねてみたいところではないだろうか。

番田駅から原当麻駅へ 送電鉄塔が建つところの南側に東西に延びる小径がある。昔からの道らしい佇まいで、東は鬱蒼と木々の茂る中を分け入るように延びている。興味を覚えてその道を辿ってみる。

両脇に木々が茂って薄暗いほどの道が緩やかに下り坂になっている。すでに9月の半ばだが、道の両脇の木々からはうるさいほどの蝉の声が聞こえている。坂を下りきったところで鳩川を渡る。鳩川に架けられた橋は「一之沢橋」。小さな橋だが、その名から昔からあった橋だろうということが推測できる。この辺りでは昔、鳩川の流れのことを「一之沢」と呼んだらしい。ということは、この道も昔からの街道筋なのだろう。
番田駅から原当麻駅へ 「一之沢橋」を渡って、そのまま東へ進む。河岸から緩やかに上って台地の上に出た。広々とした風景の中に畑地が広がっている。

十字路がある。「十字路」というより、「四つ辻」というべきか。その角に石碑らしいものが建っている。ひとつは歌を刻んだ歌碑のようだが詳細はわからない。もうひとつはおそらくお地蔵様の台座部分か。何らかの理由で、お地蔵様は身体の部分が失われ、台座部分だけが残って、しかしそのまま祀られているということではないだろうか。

番田駅から原当麻駅へ この辻を通って「一之沢橋」を渡ってさらに西に延びる道は、相模原市南区当麻の無量光寺への参詣道のひとつだったらしい。無量光寺への参詣道はいくつかあったようだが、これはそのうちのひとつで、現在の町田市方面から無量光寺へと向かう道だったらしい。今はほとんど人の通らない細道だが、かつては参詣の人たちが行き交っていたのだろう。道は、今は相模原市中央区上溝と南区当麻の境に当たっている。そのことからも昔からの道だったことがうかがえる。

「四つ辻」の南西側には百日紅が植えられていて、まだ紅い花を残していた。青く澄んだ秋空を背景に百日紅よく映えていた。

番田駅から原当麻駅へ 「四つ辻」を南へ折れて、畑地が広がる風景の中を進んでいく。この辺りはすでに相模原市南区下溝になる。道は車一台がようやく通れるほどの幅しかない。地元の人の車がときおり通りかかる。その度に横に寄って車をやり過ごす。

この辺りは鳩川と姥川との間に広がる平地部分だ。周囲には畑地が広がり、開放感に溢れ、空の広さを実感する風景だ。その風景の向こう、東の方角に低く連なる木々の緑は道保川の東に連なる斜面林だろう。そんな風景を楽しみながら、のんびりと歩いて行こう。
番田駅から原当麻駅へ 畑地が広がる中を歩いて行くと、やがて左手(東側)には真新しい住宅が建ち並ぶ一角に出た。右手(西側)には木々が茂っている。鳩川の流れが近くなり、その河岸に保全された樹林地がすぐ道脇に迫っているのだ。

その保全緑地は立ち入ることも可能で、鳩川の河原近くまで降りていくことができる。河岸には鬱蒼と木々が茂り、緑濃い風景だ。周辺では市街化が進んでいるが、それ故にこうした保全緑地は貴重だろう。訪れたとき、川遊びを楽しむ親子連れの姿があった。川遊びのできる河原というものも、今では貴重かもしれない。

番田駅から原当麻駅へ 保全緑地のすぐ南側を交通量の多い道路が通っている。西側では原当麻陸橋で相模線を跨ぐ道路だ。その道路が「新一の沢橋」で鳩川を跨いでいる。期せずして「一之沢橋」で鳩川の右岸側から左岸側へ渡り、「新一の沢橋」で左岸側から右岸側へ戻ることになった。

「新一の沢橋」から西へ向かうと100mほどで「あざみがや」交差点だ。漢字表記はなく、ひらがな表記で「あざみがや」だ。ひらがな表記のみというのはちょっと珍しい。すぐ近くに「あざみがや公園」という小公園があるが、こちらも漢字表記は無く、ひらがな表記で「あざみがや公園」だ。個人的な推測だが、昔から「あざみがや」と呼ばれる地名があり、口承のみで伝えられた地名であるために漢字表記がそもそも存在しないのではないか。こうした地名表記からさまざまな想像を巡らすのも散策の際の楽しみのひとつだ。

番田駅から原当麻駅へ 「あざみがや」交差点の少し北側で、「水道みち緑道」が斜めに交差している。

1887年(明治20年)、津久井郡三井村(現在の相模原市緑区津久井町)から横浜村の野毛山浄水場(現在の横浜市西区、野毛山公園内にあった)まで近代水道が創設された。当時、資材や機材を運ぶために軌道を敷き、トロッコを使って水道管を敷設したという。その跡を緑道としたものが現在の「水道みち緑道」だ。その「水道みち緑道」が、ちょうど「あざみがや」交差点脇を通っているというわけだ。

番田駅から原当麻駅へ 「あざみがや」交差点から西へ向かえば原当麻陸橋だ。陸橋が相模線と県道46号を一跨ぎにする。側道へ逸れて相模線の線路脇まで行き、線路脇の道を南へ辿る。原当麻陸橋から100mと少し行くと「東谷第二踏切」だ。踏切を渡って県道46号に出る。そこから300mほど辿れば「原当麻駅入口」交差点だ。

「原当麻駅入口」交差点の近く、県道46号の西側に観心寺という寺がある。1361年(康安元年)に遠藤左近景宗が創建した寺だという。正観世音菩薩を祀り、武相観音札所の三十一番札所だそうである。観心寺に参拝したら、そろそろ原当麻駅へ向かい、帰路を辿ることにしよう。
番田駅から原当麻駅へ
今回はJR相模線番田駅から原当麻駅まで、気ままにルートを選んで歩いてみた。楽しい散策だったが、選んだルートによって立ち寄れていないところもある。それはまた次の機会に訪ねてみたい。鳩川にフォーカスを当てての散策も楽しそうだが、それもまた次の機会だ。
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