横浜線沿線散歩街角散歩
横浜市神奈川区
大口通
November 1998
大口通
横浜線の大口駅を西口に降りると、左手に商店街がある。大口通商店街という。アーケードになった通り沿いに昔ながらの個人商店が軒を並べる姿に惹かれて、この商店街を訪れてみた。
大口通商店街でのひとこま
大口通商店街は横浜市神奈川区の、その名も「大口通」に位置し、大口駅の西口前から南に500メートルほど続いている。第二京浜(国道一号)を越えると「大口通一番街」と名を変え、商店街は京浜急行の子安駅前まで続いている。そもそもは京浜急行子安駅前の商店街だったものが、北へと伸びて現在の姿になったのだという。

アーケードとなった両脇の歩道に挟まれた狭い車道は、もっぱら商店の車輌や商品搬入の車輌しか通行せず、通り抜ける車輌はほとんどいないようだ。決して広い通りではなく、歩道も広くはないが、並ぶ商店はその歩道にまで商品を並べている。行き交う人も多く、なかなかの賑わいを見せている。人の流れも車道、歩道の区別がない。ここは単なる道路ではない。通り全体でひとつのマーケットを形成しているのだ。

スポーツ用品店
客はほとんど地元の人々なのだろう。あちこちに客と店の人とが談笑する姿がある。昔はこんな商店街がどの町にもあったものだ。並ぶ商店は多岐に及ぶ。金物屋、八百屋、魚屋、雑貨屋、鞄屋、衣料品店、レストラン、蕎麦屋、花屋等々、無い店は無いといってよい。どの店も間口は狭く、一様に古びた感じが歴史のある下町風で楽しい。通り沿いだけでなく、交差する道路にも別の商店街があったり、ちょっとした路地にも商店が並ぶ。ところどころ真新しい看板を掲げたコンビニエンスストアに改装された商店があるのは、やはり時代の流れというべきか。行き交う人の表情も心なしか和やかだ。訪問者であるこちらも歩いているだけで楽しくなってしまう。

雑貨屋さんの雑然とした店先
商店の店先はほとんどが整然さとはほど遠い。店先から歩道まで雑然と商品が並べられている。スーパーなどの整然とした商品レイアウトを見慣れた目にはかえって新鮮だ。歩道の車道寄りにワゴンを並べて、その上に帽子が山積みになっているスポーツ用品店。たわしやら洗剤やら徳用マッチやらがごちゃごちゃに積まれている雑貨屋。どれかひとつの商品を手に取るとたちまち崩れ落ちてしまいそうで、そんな様子も見ているだけで楽しい。

商店街に二、三軒の店舗を構えるカメラ屋に入り、フィルムを購入したが、こちらがカメラを携えているのを見て取った店の人が「今日はいい天気だね」と声をかけてくる。スーパーやコンビニの無機質な対応に慣れると忘れてしまいがちだが、「モノを買う」とはいったいどういうことなのか、ふとそんな瞬間に思い出す。「モノを買う」という行為に於いて人と人とが対峙する時、本来「売る」側と「買う」側と対等な、人としてのコミュニケーションが介在していたのではなかったか。中には無用な会話を好まない人もいるのかもしれない。それならそれでもいい。しかしせめて笑顔だけは忘れず、「買う」側は決して「お客様」などとおだてられて無礼の輩に成り下がってはなるまい。
商店街の横を通る横浜線

商店街の横を通る横浜線

商店街から東へ入り込むとすぐに横浜線の線路に行き当たる。商店街を歩いていても並ぶ建物の間から電車の走る姿が見えたりする。大口駅を出た横浜方面行きの電車は京浜急行に添うように大きくカーヴを描き、やがて横浜線の起点駅である東神奈川駅のホームにすべり込む。

京浜急行が間近に走る大口通の人々にとって、もしかしたら横浜線はそれほど便利な路線ではないのかもしれない。かつて百年近く昔、東神奈川駅を起点にして横浜線の前身の鉄道路線が造られた時の、この地に住まう人たちの思いをふと想像してみたりする。
「大口通商店街」は古き佳き商店街の面影を今も残す、数少ない町のひとつと言ってもよいのかもしれない。体温を感じるような町の雑踏が心地よい。年末の慌ただしい雰囲気の商店街の様子も見てみたい気がした。
大口駅で電車を待つ親子