横浜線沿線散歩街角散歩
八王子市鑓水〜上柚木
鑓水から上柚木へ
October 2008
鑓水から上柚木へ
10月下旬のよく晴れた日、八王子市鑓水から上柚木にかけて、大栗川に沿うように歩いてみた。大栗川の南側の丘は多摩ニュータウン域の西端に当たり、造成地の中に住宅街が形成されつつあるが、北側の丘には緑濃く木々が茂り、その裾には昔ながらの風景も残っている。そうした風景を探しながら歩いてみようと思ったのだった。
鑓水中央バス停
南大沢駅と橋本駅を結ぶバス路線が柚木街道を通っている。このバス路線の「鑓水中央」バス停で降りよう。このバス停のすぐ東側に「谷戸入口」という交差点がある。十字路になっており、南へ入り込んだところに都有形民俗文化財に指定された小泉家屋敷がある。茅葺き屋根の入り母屋造りの農家で、1878年(明治11年)に建てられたものだ。当時の養蚕農家の佇まいが残されているのだという。小泉家屋敷は現在も住まいとして使っておられるので内部の見学などはできないが、興味のある人は外観だけでも見学させて頂くといい。「谷戸入口」交差点を北へ入ると、すぐに大栗川を渡る橋がある。橋の名は「嫁入橋」という。この北方にある谷戸を「嫁入谷戸(娶入谷とも書く)」といい、それが橋の名の由来となったようだが、そもそも「嫁入(娶入)」という地名が起こった由来に興味を覚えるところだ。

永泉寺
その「嫁入谷戸」の方へと入り込み、老人ホーム手前の小道を東へ入り込むと、北側の山裾に永泉寺という寺がある。設置されている「永泉寺由緒」に依れば、寺の開創は1555年(弘治元年)だそうだ。甲斐武田家永野和泉が同族争いから逃れて家臣と共に鑓水に移住、一宇を建てて家宝の正観音像を奉安したのが始まりであるらしい。1885年(明治18年)に火災で本堂が焼失、鑓水商人八木下要右ェ門から母屋の寄進を受けて移築、一部を改築して現在に至っているという。永泉寺の門脇には大きなイチョウが立っている。イチョウはそろそろ黄色く染まり始めている。

大栗川
永泉寺を後にして先へ進もう。柚木街道の北側の斜面には新しい住宅地が造られている。住宅の白い外壁が秋の日差しを浴びて輝いている。この辺りで柚木街道と大栗川は寄り添うように北へ曲がる。柚木街道の大栗川側の舗道はケヤキ並木だ。大きく枝を張ったケヤキもそろそろ秋の色に染まり始めている。「由木西小入口」交差点がある。現在の柚木街道は片側二車線の広い道路だが、昔は片側一車線の道路だった。その旧道が「由木西小入口」交差点から西側へ逸れている。バス路線は今も旧道を通っている。旧道を歩いて行こう。

お地蔵様
旧柚木街道を北へ歩く。「由木西小入口」を過ぎた辺りで鑓水から出て上柚木へ入っている。東へ目をやると柚木街道と大栗川の向こうに木々の茂った丘が見えてくる。「上柚木公園」だ。上柚木公園は競技場やテニスコートなどを置いた運動公園で、広い面積を有している。旧柚木街道をさらに進むと、「神明神社前」バス停がある。その先を左手(西側)に入り込んでゆくと丘に神明神社が建っている。長い参道が続いているが、参道入口には小さな十字路があって、その十字路脇にはお地蔵様が佇んでおられる。その近くには碑が建っており、日露戦争役の凱旋記念である旨が記されている。参道の両脇には昔ながらの多摩丘陵の姿が残り、畑の一角で柿が実っている。

丘に沿った細道
お地蔵様の十字路から旧柚木街道に沿うように丘の麓に小径が延びている。旧柚木街道よりさらに古い道なのだろう。この道を行こう。道は細く、ようやく車一台が通れるだろうかという程度だ。道脇の民家は昔からの農家なのだろう。道沿いの石垣や大きく育った庭木の様子が良い風情だ。道は大栗川河岸より少し高みで、右手には大栗川河畔の風景が望める。やがて少し広い道に出た。その道を左手、西側の丘の方へと入り込んでゆくと山々に抱かれるようにして由木西小学校が建っている。さきほどの柚木街道の「由木西小入口」交差点の「由木西小」はこの由木西小学校のことだ。小学校側へ少し行ってみよう。谷戸の地形となった道沿いに畑地などがあり、長閑な風景だ。

上柚木の丘
再び旧柚木街道に戻ろう。この辺りで大栗川は東寄りに曲がり、柚木街道も旧道も寄り添うように曲がっている。旧道を少し進んで北側の丘へと続く小径を辿ろう。坂道を上ってゆくと丘の上に広がる畑地の直中に出る。この丘の上の畑地の風景がとても好きだ。以前に桜の咲く頃に中山から南大沢までを歩いたときにもこの辺りを歩いた。あの時は春の風景だったが、今は秋の風景だ。視界の開けた丘上の畑地の中を抜けてゆく道の、緩やかな曲がり具合が美しい。丘の上を吹き渡る秋の風が爽快だ。この風景を存分に堪能しながらのんびりと歩こう。丘上から降りてゆくと柚木街道の「上柚木」バス停近くだ。少し進めば「中山入口」交差点、大栗川を渡って南へ入り込めば上柚木公園の東端部だ。上柚木公園に立ち寄ってから帰路を辿ることにしよう。
鑓水から上柚木まで柚木街道の北側の丘の麓を辿って歩いてみたいと、以前から思っていた。柚木街道を車で通りかかるたびに、その風景が気になっていたからだった。今回、ようやく機会を設けて歩くことができた。古き良き多摩丘陵の姿を感じながらの、充分に満足できた散策だった。
鑓水から上柚木へ