能登有料道路の別所岳サービスエリアには別所岳スカイデッキ「能登ゆめてらす」という展望台が設けられている。展望台からは東に視界が開け、眼下に七尾湾を一望する。夏の暑さの残る九月の初旬、別所岳スカイデッキ「能登ゆめてらす」を訪ねた。
能登有料道路は2013年(平成25年)3月31日正午から全区間が無料化された。無料化後の愛称は公募によって「のと里山海道」が選定されている。能登有料道路の無料化に伴い、石川県道路公社も2013年(平成25年)3月31日をもって解散となった。本頁本文中の記述「能登有料道路」は「のと里山海道(旧能登有料道路)」と解釈されたい。
別所岳スカイデッキ「能登ゆめてらす」
石川県の北部、金沢市近郊から能登半島とを繋ぐように能登有料道路が延びている。南側では海岸に沿っているが、北側では能登半島の山岳地帯を辿っている。その北端に近い辺り、七尾市と穴水町との市境付近に「別所岳サービスエリア」というサービスエリアが設けられている。SAのすぐ北に別所岳という山があり、そこから名付けられたものだろう。この別所岳SAには別所岳スカイデッキ「能登ゆめてらす」という展望施設がある。
別所岳スカイデッキ「能登ゆめてらす」
別所岳スカイデッキ「能登ゆめてらす」
別所岳スカイデッキ「能登ゆめてらす」
能登有料道路は2007年(平成19年)3月25日に発生した能登半島地震で大きな被害を被り、あちこちで路面が崩壊、通行不能の状態に陥った。特に別所岳SAは比較的震源に近かったこともあって周辺に被害が集中した。別所岳SAそのものは大きな被害を免れたものの上下線とも通行は不可能、駐車中だった観光バスが取り残され、137人が孤立(当日中に避難が完了した)、その様子がニュースで伝えられたことは記憶に新しい。

能登有料道路は懸命の復旧工事が進められた結果、地震から8ヶ月後の2007年(平成19年)11月30日には全面復旧を迎えた。別所岳SAは、この復旧工事に用いる土砂の採掘場として使われたという。その採掘場の跡地を利用して、いわば“復興のシンボル”として造られたのが別所岳スカイデッキ「能登ゆめてらす」、完成したのは2010年(平成22年)4月25日のことだ。「能登ゆめてらす」とう名称は公募によって決定したものという。「ゆめ」はもちろん「夢」だと思うが、「てらす」は英語の「terrace」と「(夢を)照らす」とのダブルミーニングなのだろう。駐車場横には「能登有料道路における能登半島地震復旧の歩み」と題したパネルが設置されている。訪れたときにはこれにも目を通しておきたい。
別所岳スカイデッキ「能登ゆめてらす」
別所岳スカイデッキ「能登ゆめてらす」
別所岳スカイデッキ「能登ゆめてらす」は鉄骨で組まれた基部の上に展望デッキを載せた構造で、展望台は地上から13mの高さがあるそうだ。展望デッキへはエレベーターが設置されている他、橋状のスロープが二基の階段塔によって繋がれている。車椅子やベビーカーを利用している人などはエレベーターを利用せざるを得ないが、可能であれば橋状のスロープを辿って展望デッキへ上がるのがお勧めだ。スロープを辿って高みへ上がるほどに周囲には視界が開け、爽快な開放感を味わうことができる。
別所岳スカイデッキ「能登ゆめてらす」
別所岳スカイデッキ「能登ゆめてらす」
展望デッキからは正面眼下に七尾湾を見下ろし、能登島へと架けられた橋の姿なども眺めることができる。天候に恵まれれば立山連峰の姿も見ることができるという。展望デッキはフロアの上にコの字形の筐体を載せた形状の特徴的な構造をしており、中央部辺りには自然石を用いたベンチが置かれている。後ろに下がって眺めると、筐体によって四角く切り取られた七尾湾の景色があたかも額縁の中の絵画のように見える。そうした演出を意図した設計なのだろう。自然石のベンチもひとつのオブジェのような存在感があり、全体が美術館のような佇まいを見せている。その中から眺める七尾湾の景色は、まさに絶景と言っていい。

別所岳スカイデッキ「能登ゆめてらす」は別所岳SAの上り線側からも下り線側からも訪れることが可能だ。能登有料道路を利用して車で能登観光に訪れた人なら絶対のお立ち寄りスポットだと言っていい。
参考情報
別所岳スカイデッキ「能登ゆめてらす」は入場料などは必要ないが、夜間と冬期は利用できない。

交通
別所岳スカイデッキ「能登ゆめてらす」は「のと里山海道(旧能登有料道路)」の別所岳サービスエリア内に設けられている。別所岳SAは横田ICと越の原ICの間にあり、住所では穴水町に位置するが、ちょうど穴水町と七尾市の市境付近である。

飲食
別所岳サービスエリア内にはドリンク類の自動販売機が設置されている程度で、レストランや売店は無い。駐車場の周囲には芝生のスペースなどもあるので、お弁当などを持参している人はシートを広げてアウトドアランチを楽しむことも可能だ。

「のと里山海道(旧能登有料道路)」には下り線にはこの先サービスエリアはなく、上り線もかほく市に位置する「道の駅」を兼ねた高松サービスエリアまで行かなければ食事のできる施設はない。別所岳SAの周辺で飲食店を探すには上り線方向なら横田ICで降りて七尾市中島町地区(旧中島町)の中心部へ、下り線方向なら穴水ICで降りて穴水町中心部へ向かうのが得策だ。

周辺
「のと里山海道(旧能登有料道路)」を横田ICで降りて東へ向かえば七尾湾岸、七尾湾には能登島が浮かび、橋で渡ることができる。七尾湾の南岸へと辿れば有名な和倉温泉、その先は七尾市街で、古い町並みも残っている。

「のと里山海道(旧能登有料道路)」を穴水ICで降りて東へ向かえば七尾湾北岸に位置する穴水町だ。中居地区には寺社が多く点在し、風情ある散策が楽しめるようだ。由比ヶ丘台地の下には湾岸に沿った遊歩道も整備されているようだ。ひととき海を眺めながらの散策を楽しむのも悪くない。
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