神奈川県厚木市飯山に花菖蒲の名所として知られるところがある。「飯山あやめの里」という。小鮎川河畔の田園風景の中、休耕田を利用した菖蒲園に一万株ほどの花菖蒲が咲く。花菖蒲が見頃を迎えた六月半ば、「飯山あやめの里」を訪ねた。
飯山あやめの里
「飯山あやめの里」は花菖蒲の名所として神奈川の花名所百選のひとつにも数えられている。小鮎川河畔の田園地帯の中、休耕田を利用した菖蒲田に数多くの花菖蒲が咲き誇る様子は見事なものだ。その数は八千株とも一万株ともいう。
飯山あやめの里
飯山あやめの里
「あやめの里」という名だが、植えられているのは花菖蒲だ。正確に言えば「アヤメ」と「ハナショウブ」は異なる花なのだが、アヤメとハナショウブ、そしてカキツバタの三つは花の形がたいへんに似ており、それらを総称して「あやめ」と呼ぶことも少なからずある。この「飯山あやめの里」の「あやめ」もそうした意味で用いられているものだろう。

「飯山あやめの里」は厚木市飯山地区の小鮎川河畔、水田の広がる長閑な風景の中に設けられている。農業振興と地域の人々とのふれあいを目的としたものだそうで、もちろん入場料などは必要ない。一万株ほどの花菖蒲というのはなかなか大きな規模だが、広々とした田園風景の中ではなかなかその規模を実感しにくい。一見するとこぢんまりとしたものにも感じてしまうのは、周辺が開けた開放感のための錯覚だろう。
飯山あやめの里
飯山あやめの里
菖蒲田は休耕田を利用して整然と造られており、畦道を辿って間近に花菖蒲を観賞することができる。日本庭園の中に造られた菖蒲園のような風情は望めないが、開放感のある田園風景の中で見る花菖蒲もそれなりに良いものだ。咲き誇る花菖蒲の向こうには田植えの終わった水田が広がり、その向こうに緑濃い丘陵が横たわる。そうした風景も興趣のあるものだ。数多くの花菖蒲が見せる花そのものの美しさももちろんだが、河畔の水田地帯の風景と花菖蒲との取り合わせの妙を楽しめるのが「飯山あやめの里」の最大の魅力と言えるかもしれない。

花菖蒲はさまざまな品種のものが植えられているようだが、品種の名を記したプレートなどは設けられておらず、それが少しばかり残念なところだ。菖蒲田脇の農道にはテントが設けられ、地元の係の人が常駐されているようだった。テントでは花菖蒲の苗も販売しているように見えた。花菖蒲が見頃となる頃には「あやめ祭り」が開催され、大いに賑わうという。
飯山あやめの里
飯山あやめの里
花菖蒲の植えられた菖蒲田横の農道脇にはタチアオイの花が咲き、田植えの終わった水田を背景に美しい姿を見せてくれていた。また小鮎川河岸の堤防道には紫陽花が植え込まれており、花菖蒲が見頃を迎える時期にはそろそろ紫陽花も花期を迎える。田園風景の中を流れる川の畔に咲く紫陽花には良い風情がある。訪れる時期によっては花菖蒲と紫陽花の双方を楽しむことができるだろう。
参考情報
交通
飯山あやめの里は小鮎川の右岸、久保橋の袂に位置している。小鮎川の北側には川に沿うように県道60号(厚木清川線)が通っており、車での来訪であればこの県道60号を利用するのが便利だが、飯山あやめの里へは県道を逸れて細道へと入り込まなくてはならず、それが少しばかり分かりづらいのが難点だ。県道60号以外では、小鮎小学校前を抜ける道路から北へ逸れて辿ってくるルートもあるが、これも土地勘のある人でなければ分かりづらいだろう。車での来訪の際には地図やナビでしっかり確認しておくことをお勧めする。県道60号へは厚木市街から、あるいは県道63号(相模原大磯線)の「千頭橋」交差点からのアクセスが便利だ。

菖蒲田の設けられている休耕田の一角に無料駐車場が設けられていたが、残念ながら十数台分のスペースしかない。周辺の道路脇に駐車している車も少なくなかったが、それも黙認といったところか。「あやめ祭り」の開催時には別の場所に臨時駐車場が設けられ、シャトルバスが運行されるようだ。

バスを利用する際には小田急線本厚木駅北口から上飯山行きや宮ヶ瀬行きの路線に乗り、「小鮎久保(こあゆくぼ)」バス停で降りるのが近い。本厚木駅から「小鮎久保」バス停まで30分ほど、バス停から飯山あやめの里まで徒歩で10分ほどだ。

飲食
飯山あやめの里の近辺にはお店などは無く、最寄りの飲食店やコンビニなども県道60号を車で少し走らなくてはならない。その意味ではお弁当持参がお勧めだが、飯山あやめの里にはお弁当を広げられるような広場はない。久保橋の袂に小さな緑地スペースがあり、ベンチが設けられているから、そこを利用してもいい。また小鮎川の堤防道の脇に腰を下ろし、咲き誇る花菖蒲を眺めながらお弁当を食べている人たちの姿もあった。それも一案かもしれない。周辺は水田が広がるばかりののどかな田園風景だ。シートを持参していればお弁当を食べる場所を見つけることはできるだろう。

周辺
飯山あやめの里の周囲は小鮎川河畔の水田地帯で、丘陵地に抱かれるようにして田圃が広がっている。そうした風景の中をのんびりと散策してみるのもお勧めだ。県道60号をさらに西へ向かえば飯山観音や飯山温泉、飯山白山森林公園などがある。足を延ばしてみるのも悪くなさそうだ。
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