西武秩父駅には「西武秩父仲見世通り」という商店街が併設されている。“商店街”とは言っても駅から一続きの建物の中だから駅の施設の一部という印象が強い。「西武秩父仲見世通り」には食事処や土産物店などが軒を並べている。当然のことながら、なかなか賑わっている。西武秩父線を利用する人はもちろんだが、そうでない人も立ち寄ってみるといい。食事も可能だし、秩父名物を扱う店も揃っているから土産物の購入にも便利だ。
西武秩父駅前には一本の樹木が印象的な樹形で立っている。ラクウショウの木だ。ラクウショウは「落羽松」と書き、北アメリカ大陸南部が原産のスギ科の落葉高木だ。西武秩父駅前のラクウショウは、傍らに設置された案内板の説明によれば、1900年(明治33年)に秩父郡立乙種農業学校(現在の埼玉県立秩父農工科学高等学校)が創立されて間もない頃に植えられたものと推定されるものだそうだ。樹高は20m超、その樹高やラクウショウの渡来時期などから樹齢は80年以上だろうという。
長く学校のシンボルとして親しまれてきた樹木だということだが、秩父農工科学高等学校は1965年(昭和40年)に大野原に移転(移転時は秩父農工高等学校)、旧校地には西武秩父駅が造られた。ラクウショウの木はそのまま残されたのだろう。今は西武秩父駅のシンボルツリーのように受け継がれ、訪れる人々を迎えている。ちなみに、西武秩父駅は「関東の駅百選」のひとつに選定されている。
西武秩父仲見世通りを含む西武秩父駅舎は複合型温泉施設「西武秩父駅前温泉 祭の湯」(2017年4月24日オープン)に建て替えられ、「西武秩父仲見世通り」は今は無い。「西武秩父駅前温泉 祭の湯」には温泉施設の他、フードコートの「呑喰処 祭の宴」や物販エリアの「ちちぶみやげ市」などが設けられている。駅前のラクウショウの木は今も残っているようである。