そうしたバラ園の在り方が、この立地ではとても功を奏しているのではないかと思える。間近まで迫る緑の山肌がまるで庭園の延長のように視界に収まり、庭園をより広く見せてくれるようでもあり、緑濃い風景の中にうまく馴染んで溶け込み、“自然美”を演出してバラの花をより引き立ててくれている印象だ。随所に置かれたベンチや荷車などもイングリッシュ・ガーデン的な雰囲気に似合って気が利いている。
決して広大なバラ園ではないが、それを逆手にとるかのように凝縮された美しさを感じさせるのが見事だ。園内に巡らされた小径を辿れば、さまざまなバラの花に包み込まれるような感覚を味わいながらの散策が楽しめる。趣向を凝らして植えられたバラの数々は小径を進むほどにさまざまに表情を変え、どこから見てもフォトジェニックで美しく、その景観に飽きることがない。ところどころに設けられたバラのアーチも素敵だ。脇の方にはまるで“バラのトンネル”のように長く造られたアーチもあり、これも楽しい。