日南市南郷町榎原の榎原神社の境内には、かつて「創建の飫肥杉」と呼ばれる杉の巨木があった。飫肥藩三代藩主伊東佑久が1658年(万治元年)、榎原神社創建の際に植えた杉であることから、この名があった。神社創建の際には五本の杉が植えられたということだが、時を経るうちに老朽や災害のために伐採されてその数を減らし、やがて一本だけとなって近年まで残っていた。樹齢約330年、太さ4メートル、高さ25メートルという堂々とした巨木だった。社殿のほぼ正面に、まさに御神木に相応しい風格で立っていた。
しかし、最後まで残った「創建の飫肥杉」も時の経過には勝てなかった。2005年9月の台風14号の際に落雷を受け、さらにシロアリの被害を受けていることも判明、衰弱は著しく、ついに伐採を余儀なくされたのだった。最後の「創建の飫肥杉」の伐採は2006年4月21日、お祓いの後に、地元の人々に見守られながら行われた。伐採された枝の一部は宮崎県林業技術センターで挿し木され、榎原神社境内に植樹される予定という。