八王子市堀之内
堀之内芝原公園
Visited in October 2021
八王子市堀之内2丁目に堀之内芝原公園という公園がある。住宅街の中に小高い丘のような様相で横たわる公園で、供用開始は1996年(平成8年)。種別としては「街区公園」だが、約6700平方メートルの面積は街区公園としては充分に広い。園内はさまざまな樹木があって緑濃く、その中にいろいろと工夫が凝らされた公園だ。
西側のエントランスから園内に入ると小規模ながらもイチョウの並木がある。ほんの数本が並ぶだけだから“並木”と呼ぶのも憚られるが、これがなかなか美しい。春の新緑や秋の黄葉はきっと素晴らしい景観を見せてくれるに違いない。
“富士塚状の丘”の頂上からは、特に南と北に眺望が開けている。それほどの高みではないが、周囲に広がる住宅地を見下ろしながら風に吹かれるのは気分の良いものだ。
園路にはベンチも設けられている。単に“ベンチを置いた”というのではなく、三角形の形状の、いわば“造り付け”のベンチだ。なかなか凝っている。
園内には一般的な複合遊具などはなく、特に小さな子どもたちのための遊び場としては物足りなさもあるかもしれない。そうした意味でも、“子どもたちの遊び場”としてより、散策を楽しむための“憩いの場”としての役割を担う公園だと言っていい。
おそらく埴輪(はにわ)をモチーフにデザインしたものだろう。埴輪と一口に言ってもさまざまな形状のものがあるが、堀之内芝原公園のポールは黒い丸で描かれた目と口、両脇に付けられた半円形の金具などが、一般的に「踊る埴輪」(または「踊る男女」、「踊る人々」)と呼ばれる形状の埴輪を思い起こさせる。なかなか愉快なデザインだ。
この“埴輪ポール”は公園エントランス部分の歩道、さらに園内にも設置されている。訪れたときには探してみるといい。特に公園南西側の交差点角に“埴輪ポール”が並ぶ様子は見事だ。幾体もの“埴輪ポール”が並んで車両の進入を阻んでいる。なかなか頼もしい姿である。
石のベンチにお尻の形に施された三つの窪みはそれぞれに大きさが違う。一つは大きく、一つは少し小さく、その二つに挟まれた真ん中の窪みはさらに小さい。おそらく、両脇がお父さんとお母さん、真ん中が子どもという設定なのだろう。なかなか“小技が効いている”という印象で、見ているだけで楽しい。
堀之内芝原公園はあくまで近隣に暮らす人たちのための街区公園であり、遠方からわざわざ訪ねてくるほどの特徴があるわけではない。当然のことだが、来園者用の駐車場も用意されていない。巧みにデザインされた園内は景観も美しく、中央部の丘の頂上からの眺望も素晴らしい。公園周辺に暮らす人たちにとっては素晴らしい散策コースであることだろう。“埴輪ポール”やお尻の形の窪みが施されたベンチや、地中から顔を出したようなオブジェなど、楽しい工夫もあるから公園巡りの趣味の人にもお勧めだ。素敵な公園である。