町田市小山田桜台
風の展望台
Visited in April 2010
町田市小山田桜台の住宅街には、造成前の地形を彷彿とさせる窪地や池などが点在しているが、住宅街の北西端の辺りにもそうした池が横たわっている。住宅地として造成される以前はおそらく谷戸の奥まったところだったのだろう。池の周囲は小高くなって池を見下ろしている。池は昔からあったものか、今は調整池としての役割を担っているのだろう。この池を見下ろす周囲の斜面は緑地や公園になっており、気持ちの良い散策が楽しめる。
小山田桜台の住宅地の中を巡る八重桜並木の道の北西端の辺り、道脇に遊具を置いた小公園がある。「小山田けやき公園」という名の小公園だ。この公園の北西側、住宅地の中にぽっかりと窪地があり、その中央部に池がある。池の周囲の斜面は緑地になっており、「小山田けやき公園」の横から舗道を辿って池の周囲を巡ることができる。池の周囲の緑地はひとつの緑地ではなく、複数の緑地や小公園から構成されているようだ。
「小山田けやき公園」から舗道を辿ると、その北側に緑地が連なり、「小山田8号緑地」、「小山田11号緑地」といった名がある。「小山田11号緑地」はちょうど池の北側の斜面に当たり、池を見下ろす草原のスロープに舗道が辿り、ベンチなども置かれている。スロープにはパラグライダーを彷彿とさせる意匠のモニュメントが印象的に設置されており、特に「風の展望台」という愛称が付けられているようだ。この中央部の池は「風の池」という愛称もあるようだ。なかなか素敵なネーミングだ。「風の展望台」からは周囲に視界が開け、広い空の下で爽快な気分を味わうことができる。ベンチに腰を降ろし、しばらくのんびりと時を過ごし、その名のように風に吹かれていたくなる。
「風の展望台」の西側には「小山田1号遺跡」がある。「小山田1号遺跡」は平安時代末から室町時代にかけての有力武士の居館跡であるらしい。小山田遺跡群と呼ばれる遺跡群の中のひとつで、1970年代に小山田桜台の造成に先立って発掘調査が行われたものという。現在では住宅地の中に横たわる池の北側斜面だが、かつては多摩丘陵の真っ直中、谷を見下ろす南向き斜面だったわけで、有力武士が館を構えるには良いところだったのだろう。この辺りは平安時代末期に小山田有重が開いた小山田莊の中心部に近く、この遺跡も小山田氏との関連があるらしい。現在の遺跡はガラス繊維と樹脂セメントで表面が固められて保存がなされ、自由に立ち入ることができる。遺跡を見学しつつ、遠い昔の武士の暮らしに思いを馳せるのも楽しい。その頃には見渡す限りに緑の山々が連なっていたのだろう。
「小山田1号遺跡」からさらに西に回り込むと、「小山田桜台こぶし公園」という公園だ。「小山田桜台こぶし公園」は「風の池」を西側から見下ろす斜面で構成される公園で、その斜面に散策路が辿っている。「小山田桜台こぶし公園」は池を取り巻く緑地や公園の中でも比較的広く、園内の高低差もあって池近くまで降りてゆくこともできる。高所から見下ろす爽快感がやはり素晴らしいが、スロープを降りてのんびりと散策するのも楽しめる。公園内には八重桜(カンザンのようだ)の木も数本植栽されており、風景にアクセントを添えてくれているのも素敵だ。
「小山田桜台こぶし公園」から西へ回り込んでゆけば「小山田けやき公園」付近へと戻ることができるが、緑地で繋がっているわけではないようで、住宅街の中の道を辿らなくてはならない。
「小山田桜台こぶし公園」から西へ回り込んでゆけば「小山田けやき公園」付近へと戻ることができるが、緑地で繋がっているわけではないようで、住宅街の中の道を辿らなくてはならない。
「風の池」を囲むスロープに設けられた緑地や公園は「小山田けやき公園」、「小山田桜台こぶし公園」、「小山田8号緑地」、「小山田11号緑地」と、それぞれ異なった緑地や公園であるわけだが、それらが一体となって、さらに「小山田1号遺跡」も加えた池の周囲全体が、ひとつの大きな公園として機能していると言っていい。近辺の住宅街に暮らす人たちのための憩いの場であり、散歩コースとしての役割を担うもので、遠方からの来訪者があることは前提としていないようだが、近くを散策する機会があれば立ち寄ってみたいと思えるところだ。遺跡などに興味のある人なら「小山田1号遺跡」はぜひ見ておきたいところだろう。