日野市新井
向島用水親水路
Visited in May 2008
京王線高幡不動駅の北方、日野市新井の地区に小川に沿った遊歩道が整備されている。「向島用水親水路」という。その名が示しているように、かつて農業用水として使われていた水路を親水公園として整備したものという。親水路は木々が茂って緑濃く、長閑な風情の中で散策を楽しむことができる。
向島用水親水路は京王線高幡不動駅から北へ数分の距離だ。若宮神社横を抜けて進んでゆくと左手に潤徳小学校があり、その北側に親水路が東西に延びている。小学校裏から西へ辿るとすぐに浅川河畔だ。水路の水は浅川から取られており、小学校裏手を抜けて東へと流れてゆく。浅川河畔には親水路に隣接して向島緑地があり、緑地内には雑木林が残されている。林の中には散策路が辿っており、ひととき林の中の散策を楽しむのもいい。
向島用水親水路はかつての農業用水路を利用したものだが、自然に触れることのできる親水路として整備の手が加えられ、向島緑地横では水際まで降りて行くこともできる。小学校裏手には小さな池があり、これはビオトープとしての位置付けのようで、小学校の子どもたちの学習の場としても活用されているようだ。訪れたとき、このビオトープでコサギの姿を見た。コサギにとってはいつもの餌場なのだろうか。人の姿にもあまり警戒することはないようだった。
小学校裏から下流側へ辿って行こう。水路の岸辺には鬱蒼と木々が茂り、その中を小径が辿っている。ところどころに設けられた橋も素朴な意匠の小橋で、なかなか良い風情だ。水路途中には水車小屋も設置されている。もちろん本来の目的に使用されている水車小屋ではないが、木々に包まれた水車小屋の佇まいは古い時代の農村の風景を彷彿とさせるものだ。水路の周辺は今では住宅地となり、水田が広がっていたかつての風景を探すのも難しくなってしまったが、それだけに向島用水親水路の風景には郷愁を誘うような風情がある。水路に沿って東へと歩いてゆくと、やがて広い道路へと出て、目の前には多摩都市モノレールの軌道が横切っている。水路そのものはさらに続いているようだが、向島用水親水路はそこで終わっている。
向島用水親水路は500メートルほどの長さしかなく、散策路としては少し物足りなさもあるが、緑濃い様相はなかなか魅力的なものだ。水辺の植物などを観察しながらのんびりと歩いてみるといい。西へ抜けて浅川河畔に出ると開放感に富んだ眺めが爽快だ。少し下流側には美しい意匠の「ふれあい橋」が架かっている。浅川河畔の散策も一緒に楽しむのがお薦めだ。