横浜線沿線散歩公園探訪
八王子市七国
宇津貫公園
Visited in May 2023
宇津貫公園
八王子市七国六丁目の町に「宇津貫公園」という公園がある。周辺は「八王子みなみ野シティ」として造成された住宅地で、公園はその「八王子みなみ野シティ」のほぼ中央に位置している。この辺りは住宅地として造成される以前は里山の風景の広がる長閑な土地柄だったところで、雑木林の丘を中心に据えた宇津貫公園はその頃の面影を色濃く残している。
宇津貫公園 公園の名となった「宇津貫」は住宅街として造成される以前の町名「宇津貫町」に由来する。「うつぬき」と読む。「宇津貫」はかつて江戸時代には「武蔵野国多摩郡宇津貫村」だったところで、明治時代には「南多摩郡由井村宇津貫」となり、1955年(昭和30年)に八王子市に編入されて「八王子市宇津貫町」となった。

「八王子みなみ野シティ」の造成とともに「宇津貫」の名も消えつつあるが、その名を冠した公園として、園内には「宇津貫」の名を記した碑が建てられている。碑には造成される以前の宇津貫の様子や宇津貫の変遷などが記されている。初めて訪れたときにはぜひ目を通しておきたい。

ちなみに公園の位置する町の名である「七国」は、公園の南西側、八王子市と町田市との市境の尾根にある「七国峠」に由来している。

宇津貫公園 公園のすぐ東側には法華寺という寺が建っている。現在の公園内の丘はかつては寺の”裏山”のようなところだった。

宇津貫公園はその丘をひとつそのまま使って整備されたような公園で、園内の南側、ほぼ半分ほどを雑木林の丘が占め、丘の北側周辺部に広場などを置いた構成になっている。雑木林の丘には木々を縫って散策路が辿り、造成以前の宇津貫の里山風景を彷彿とさせる佇まいだ。
宇津貫公園 北東側の角、法華寺の裏手に当たる部分にはグラウンドを思わせる広場が置かれている。広場は周囲から一段低くなった平坦なスペースで、地域のイベントなどに使われることもあるのだろう。

広場の南東部分には展望デッキのように設えられた場所があり、ベンチが置かれている。それほどの高みではないが、広場の向こうには公園外縁部の緑が連なり、その向こうに「みなみ野シティ」の住宅街の風景が見え隠れする。

宇津貫公園 公園の北西側の外縁部は草はらの広場になっている。公園の北方に広がる住宅街に面し、すぐ横を道路が通っているが、道路からは一段高くなっており、丘に茂る木々を南に背負って穏やかな佇まいだ。

五月の半ば頃には広場の草はらは白詰草の花がたくさん咲く。道路側のスロープになったところには桜の大木が並んでおり、春には美しい景観を見せてくれる。この一角の西端、公園の北西端の入口横に「宇津貫」の名を記した碑が建てられている。

宇津貫公園 公園北西端の入口から西側の外縁部を南へ回り込むと、丘の西側の麓に子どもたちのための遊具を設けたスペースがある。木々に包まれたように横たわる草はらの広場で、すぐ横は道路だが交通量が少なく、静かな佇まいなのが嬉しい。

広場には滑り台や砂場、水飲み場などが置かれ、隅には四阿も設けられている。遊具類はそれほど充実しているわけではなく、必要最小限といったところだが、近隣に暮らす子どもたちの日常的な遊び場としては充分なものだろう。

宇津貫公園 公園の中央部、公園の大部分を占めて雑木林の丘が残されている。ある意味ではこの雑木林の丘こそが宇津貫公園の本質と言っていい。雑木林にはその名の通り、さまざまな木々が茂り、ニュータウンとして開発される以前の宇津貫の姿を濃厚に残している。林の中の小径を辿れば木漏れ日も美しく、雑木林散歩の醍醐味を存分に楽しむことができる。

林の一角に「七国六丁目町会」の名で「カブトムシ クワガタムシ 育成床」と書かれた表示板があった。おそらく地域の子どもたちのために、町会が主体となってカブトムシやクワガタムシの育成が行われているのだろう。かつての里山風景がみなみ野シティの住宅街に姿を変え、その街に新しく暮らし始めた人たちにとって、宇津貫公園の自然は貴重なものだろう。それを活用しようという試みなのだろう。

宇津貫公園 丘の東側、北側斜面の一部の木々を取り払い、草はらのスロープとしたような広場がある。スロープを上っていけば北東側への視界が開け、北東側には兵衛川河畔に広がる住宅街と、その向こうの丘が見える。スロープにはコンクリート製の白いベンチがオブジェのように置かれている。まるで眺望を楽しむための観覧席のようだ。丘を渡る風に吹かれながら、のんびりと眺望を楽しむのも素敵なひとときだ。

スロープの頂上部分まで登ると、南西側への眺望も開け、七国六丁目の住宅街と、その向こうには町田市との境の尾根筋の木々が見えている。天候に恵まれれば遠い山並みの向こうに富士山の山頂も見える。
宇津貫公園 公園の北側を通る道路は八王子市幹線1級46号線で、東は国道16号の「東京工科大前」交差点からみなみ野シティの住宅地を抜けて、西は大船町で都道506号に接続している。それほど交通量の多い道路ではなく、公園内でも車の騒音に悩まされることは少ない。

この道路、ちょうど公園脇の部分ではエゴノキの並木だ。エゴノキが街路樹として植えられているのは珍しいのではないか。しかもほとんどがベニバナエゴノキだ。木はまだ小さいが、初夏には美しい花を咲かせてくれる。花好きの人には魅力的なものだろう。
宇津貫公園
雑木林の丘を中心に構成された宇津貫公園は自然溢れる素敵な公園だ。園内のあちこちでエゴノキが花を咲かせ、初夏の青空に映えていた。陽気の良い季節に、お弁当を持ってピクニック感覚で訪れるのがお勧めの公園と言っていい。遊具類はあまり充実していないが、草はらや林そのものが子どもたちにとっては良い遊び場になってくれるに違いない。

公園西側に駐車場が設けられているが、駐車スペースは10台分ほどと少ない。JR横浜線八王子みなみ野駅から歩いても15分ほどだから、駅から遠足感覚で歩いてみるのもいい。駐車場横の入口脇にドリンク類の自動販売機があるが、公園内には売店などはない。公園北側の道路を100mほど東へいったところの交差点にコンビニエンスストアが建っているので利用するといい。
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