八王子市横川町
横川弁天池公園
Visited in October 2018
八王子市横川町の東部に「横川弁天池公園」という公園がある。小さな公園だが、園内には湧水池を抱え、八王子の主要な湧水のひとつに数えられている。
横川弁天池公園があるのは八王子市横川町の東部、東に200mほど行けば南浅川というところだ。北には北浅川との合流点が近く、さらにその合流点の手前では北浅川に城山川が合流している。いわば川に囲まれた地形であるため、この辺りは地下水位が高く、昔から湧水に恵まれた土地だったという。そのお陰だろう、古代から人の営みがあった土地のようで、周辺からは縄文時代後期の土器や石器などが出土し、当時、集落があったと考えられている。
公園内に残る池は、そうした湧水を集めた湧水池で、かつて池の辺に弁天様を祀る祠があったことからその名がある。池の周辺には清流が流れ、ワサビの栽培も行われていたという。現在、池とその周辺は八王子市立の横川弁天池公園となり、住宅地の中の小公園といった佇まいだ。弁天様を祀る祠も、周辺の清流も今は無く、池の湧水も少なくなってしまったが、池の水は澄んで美しい。その中を鯉が悠然と泳いでいる。
池の北側の岸辺は水辺近くまで降りていけるように整備されており、池の風情を間近に楽しむことができるのは嬉しい。池の岸辺はほとんどが石垣などで整備されているが、西側の岸辺だけは草木が茂って自然の池のような様相を見せる。その緑が住宅地の景観の中に潤いを与えている印象だ。住宅地の中の小さな自然である。時にはカワセミが飛来してくることもあるという。
横川弁天池公園は1999年(平成11年)に供用が開始されたもので、2000平方メートルに満たない面積の小さな公園だ。そのほとんどを弁天池が占めており、その周囲にわずかに広場スペースが設けられている。残念ながらトイレも設けられていない。弁天池の東側に道路を挟んで“分園”が設けられており、こちらは住宅一軒分ほどの面積より小さく、そこに小さな子ども向けの遊具が設置されている。
横川弁天池公園は住宅地の中の小さな街区公園に過ぎない。子どもたちのための遊び場としても、あまり魅力的とは言えないだろう。この公園の最大の魅力は弁天池である。弁天池を整備保存することが目的の公園と言ってもいい。昔からこの地にあった湧水池を今に残し、後世に伝えることが、この公園の存在意義である。
横川弁天池公園は小さな公園で、弁天池の他には特筆するような特徴はなく、誰にでも来園をお勧めできるような公園ではないが、各地の湧水を巡っている人なら一度は訪ねておくべきところだろう。横川弁天池公園には来園者用の駐車場はない。来園するときにはバス利用が賢明だ。