九月下旬の座間谷戸山公園は、緑濃い園内に彼岸花が彩りを添える。田圃や湿地を残した谷戸とその周囲の雑木林から構成された公園は昔ながらの里山を彷彿とさせる風景が魅力だが、そうした風景の中に彼岸花はよく似合い、郷愁を誘うような初秋の風情に溢れている。

彼岸花は園内の随所で見ることができ、林の中にぽつりと咲く様子を見つけることもあるが、最も多く見られるのは「里山体験館」の前辺りだ。「里山体験館」前の田圃との間の斜面を中心に、彼岸花が数多く咲いている。田圃から湿地の脇へと散策路を歩けば、その道脇にもぽつりぽつりと彼岸花の姿がある。ほとんどの彼岸花は赤い花だが、わずかながら白い彼岸花も見つけることができた。「里山体験館」と田圃のある一角の北側の丘は「伝説の丘」と名付けられたところで、昔は観音堂のあった丘らしいが、この丘にも彼岸花が咲いており、こちらもなかなか興趣のある風景が楽しめる。

古民家風に造られた「里山体験館」とその前に横たわる田圃、古い言い伝えの残る丘と、そしてその中に咲く彼岸花とが織りなす風景は昔懐かしい風情が漂い、ひととき日常を忘れてのんびりと素敵な散策が楽しめる。彼岸花の咲く季節、園内の田圃は稲穂が黄金に実っている。古い時代の農村の初秋の風景を思い起こさせるような風景が魅力だ。