町田市本町田
菅原神社
Visited in November 1998
木々が紅葉に染まり始めた11月の初め、町田市本町田の菅原神社を訪ねた。菅原道真公を祀り、地元の氏神様として親しまれている神社だ。時期が近いせいもあって、境内には七五三を祝う家族連れの姿があった。
町田市本町田の鎌倉街道と鶴川街道とが交差する場所にこの菅原神社がある。その名の通り、菅原道真公を祭神とした神社で、1630年(寛永7年)、当時の本町田村の大沢氏が土地を寄進し、建立されたものであるという。
菅原道真は宇多天皇、醍醐天皇に仕えた平安期の人物だが、後に五十六才で右大臣となった菅原道真が藤原時平一派の妬みによって福岡の太宰府に左遷された話は有名だ。以来、太宰府天満宮と京都の北野天満宮を総本社として菅原道真公は学芸の神として人々の信仰を集めており、全国に道真公を祀る神社が数多く存在する。この菅原神社もそうしたもののひとつで、建立以来地元の氏神として人々の信仰を集めている。学芸の神である菅原道真が祭神とあって、合格祈願などの絵馬が数多く奉納されている。
交差点のすぐ横の鳥居をくぐって参道を進み、石段を上がると、目の前に神社の本殿が見える。境内は主要道路のすぐ横とは思えないほど静かで、向かって左手は林になっている。参道からの石段を上がってすぐ右手、町田市の名木百選にもなっているモミの木がある。この他にもイチョウの木や、境内横の林の中の木々など、菅原神社の周囲は昔からの木立がそのまま残っている印象で、その中に佇んでいると心安らぐ思いがする。
本殿向かって左手、林の一角に鳥居と小さな社があるが、これは京都右京区の愛宕神社を本社とする愛宕社で、祭神は火之夜藝速男神だということだが、創立年代は不明であるらしい。小さな社だが、周囲の薄暗さも手伝って何やら幽玄の雰囲気漂う社だ。
古来、この辺りは神社の横の崖に湧き出る清水に因んで、「井出の沢」と呼ばれていたという。鎌倉街道に面し、湧き出る清水はここで休んで干飯を食するのに都合が良かったらしい。ここより以北は多摩丘陵の山道を辿る鎌倉街道が平坦に開ける場所にも当たり、鎌倉街道がその名の通り、本来の目的での鎌倉街道であった時代、ここは要衝の地であったのだろう。またこの地は1335年、北条時行と足利直義が戦った「中先代の乱」の戦場跡としても有名で、菅原神社本殿左手の林の脇に「井出の沢」の石碑が立っている。これは東京都の旧跡にも指定されているものだ。
訪れた日はまだ紅葉には早かったが、境内のイチョウや参道脇のモミジなどが染まる頃は訪ねるのに良い時期だ。また桜の名所でもあるので、その季節に訪ねてみるのも楽しめそうだ。