横浜市港北区小机町〜神奈川区菅田町
小机町から菅田町
Visited in October 2005
(本頁の内容には現況と異なる部分があります)
横浜市神奈川区の西端に位置する菅田町と羽沢町は畑地の広がる農耕地帯で、「菅田羽沢の農業地域」として「神奈川区ビューポイント36景」のひとつにも選ばれている。その菅田町の辺りを歩いてみたいと思い、秋晴れの日を選んで出かけた。菅田町へはどのように向かえばいいだろうかと地図を睨み、横浜線小机駅から南下してみるのも楽しそうだと、ルートを決めたのだった。
小机駅を南へ出て、横浜上麻生道路を西へ向かう。少し行けば「小机辻」だ。「小机土居谷戸」交差点から南へと向かう。丘陵に挟まれた谷戸の地形の中を道が辿っている。周囲は住宅が並ぶが、畑地も残り、その向こうには木々の茂る丘が見えている。少し進むと、左手(東)に入り込んだところに横浜市の名木古木に指定されたモミの木がある。昔の面影を残す風景の中に堂々とした姿で立っている。樹木に興味のある人なら見ておきたいところだろう。本法寺の山門を左に見ながらさらに南へ進むと、谷戸は奥まってくる。道は狭くなり、やがて急な上り坂になる。坂を登りきると、尾根道と交差する。道は十字路を成している。そのまままっすぐに尾根を越えて南へ降りてゆく。かなり急な下り坂で、石段になっている。坂を下りると砂田川の河畔に出た。下村橋という橋が架かっている。この辺りは町の境になっており、北東側は港北区鳥山町、南が神奈川区菅田町になる。川に沿って、菅田町の西部へと進むことにしよう。
砂田川は護岸工事が施されており、河畔は基本的に住宅地だ。川には橋がたくさん架かっている。東前田橋、東前田一之橋、平成橋と辿りながら、上流側へと向かう。横浜市環境創造局水・緑管理課と横浜市神奈川土木事務所による「砂田川」の案内板が建てられている。東前田橋の辺りで鳥山川合流点から1.24kmである旨が記されている。上流側に行くに従って河畔には畑地が多くなった。畑地にはキャベツが並んでいる。「菅田羽沢の農業地域」はキャベツの生産量で市内一なのだそうだ。畑地の向こうには緑の丘が横たわり、のどかな風景が広がっている。道脇ではコスモスが風に揺れて散策の目を楽しませてくれる。
やがて川の合流点があった。南からの流れに沿って進むことにしよう。すぐにバス通りだ。「菅田道路」と呼ばれる道路のようだ。これを横切り、小さな川に沿って進む。周辺はますますのどかな農村風景の様相を呈してくる。右手には尾根が迫り、左手には畑地が広がっている。緩やかな斜面に横たわる畑とこんもりと木々の茂った丘の景色が美しい。畑は、やはりキャベツ畑が多いように見える。地図を確認すると右手の尾根の向こうには第三京浜が近づいているようだ。進んでゆくと、やがて第三京浜が眼前に迫り、道路はその下をくぐってゆく。
第三京浜をくぐると道沿いの川はますます細くなった。道路は広々とした畑地の中をほぼまっすぐに辿っているが、旧道らしき道が右手に逸れている。その道へと進む。旧道らしき道は細い川に沿い、右手は林が迫る中に住宅が点在している。その中に入り込む路地の向こうにずいぶんと立派なケヤキの姿が見えた。誘われるように近づいてみると横浜市の名木古木に指定された樹木だった。道沿いの佇まいには昔ながらの里山の風情が残っており、のんびりと歩くのは楽しい。民家の庭先の柿の木やピラカンサなどを眺めながら歩く。道は細いが舗装路だ。その上にカマキリの姿があった。このような出会いもなかなか楽しい。
かつては小さな谷戸の奥まったところだったのだろうか、そのような様子を感じながら細くなった道をさらに辿るとふいに視界が開け、バス通りに出た。地図を確認すると小机町の「泉谷寺」交差点から南下してきた道路のようだ。すぐ近くには池上小学校があるらしい。道路の向かいには広々とした丘陵地帯に畑地が広がっている。バス通りを横切ると、丘陵の畑地へと進む道路の脇に「菅田羽沢農業専用地区」を示す標識があり、その傍らには「神奈川区ビューポイント36景」のうちの「菅田羽沢の農業地域」である旨を示す案内標識があった。ここがそうか、と、畑地の中を辿る道路へと歩を進めた。
広々とした丘の上に、見渡す限りに畑が続いている。キャベツ畑が多いが、他にもサトイモやネギなど、さまざまな作物が育っている。ビニルハウスの中で花が栽培されているところもあった。ほぼ直線を描く道路によって碁盤の目のように区切られた畑地は現代的な佇まいで、郷愁を誘われるような風情というものはそれほど感じないが、それでも「農」の風景というものにはどこか心休まるような思いがする。道は緩やかにわずかな勾配を伴って上ってゆく。丘を渡る秋の風が爽快だ。空の青、畑の土の色、そこに育つ農作物の緑色、そうした色彩の組み合わせがとても美しい。何しろ「丘の上」という開放感が爽やかだ。ふとふりかえるとキャベツ畑の向こうに遠く霞んでランドマークタワーのシルエットが見えた。
丘の上に広がる畑地の中を西へ進むと、やがて畑地の西端に達する。そこから北西側の谷戸へと降りてゆく。「神奈川区ビューポイント36景」のひとつに選ばれた「菅田いでと公園」に立ち寄ってゆこう。「
菅田いでと公園」は谷戸の奥まった立地で、木々に囲まれてひっそりとしている。砂田川の源流域に当たる谷戸であるらしい。広場と木々の茂る「裏山」とで構成された公園は、もともとは江戸期から続く個人宅の敷地であったという。広場の脇には水路が設けられ、水の流れが穏やかな表情を見せている。この水路は公園からそのまま北へ、住宅街の中へと導かれている。「菅田町小川アメニティ」として整備されたものだ。この小川に沿って進んでゆくと西菅田団地だ。西菅田団地のバス停から、鴨居駅行きのバスを待って帰路を辿ろう。
「菅田羽沢の農業地域」は以前から訪れてみたいと思っていた場所だった。丘の上に広がる畑の風景はとても美しく、爽快なものだった。今回はただ通り抜けただけだったが、次の機会には花々の美しい春を選んでゆっくりと歩いてみたい。菅田町の北西部には2001年(平成13年)に開園した「菅田みどりの丘公園」があるが、これも訪れるのは別の機会に譲ることにした。
【追記】
平成2年(1990年)に選定された「神奈川区ビューポイント36景」は、平成18年(2006年)4月、「わが町かながわ50選」にリニューアル、さらに平成21年(2009年)、横浜開港150周年に合わせて「わが町 かながわ とっておき」にリニューアルされている。