横浜線沿線散歩街角散歩
相模原市中央区矢部新町〜鹿沼台
矢部新町から鹿沼台
Visited in October 2012
矢部新町から鹿沼台
秋晴れに恵まれた十月半ば、矢部駅に降りた。矢部駅の周辺を歩いてみたいと思ったのだった。普段は矢部駅を利用する機会がなく、駅の周辺を歩いたこともなかった。いつもは横浜線の車窓から眺める風景の中に新たな発見があるかもしれない。
矢部駅に降りたことがあっただろうか、と、ふと思った。横浜線にはこれまで数え切れないほど乗ったが、矢部駅で降りたことはあっただろうか。記憶を探ってもその覚えがない。自分でも意外だが、もしかしたら矢部駅で降りるのは初めてかもしれない。そんなことを楽しく思いながら矢部駅の改札を抜けた。

矢部駅北口
矢部駅の北口へ出ると目の前は美しく整備され、クスノキやケヤキが大きく枝を広げている。駅前の風景として違和感を覚えるのは路線バスの発着所が無いからだ。矢部駅には北口にも南口にも路線バスのバス停が無い。隣駅の淵野辺駅まで1kmも離れていないから、淵野辺駅のバス発着所が役割を担っているのだろう。矢部駅では北口と南口とを繋ぐ地下通路を造るための工事が進行中のようだった。

横浜線の前身である横濱鉄道が1908年(明治41年)に開業したとき、矢部駅は設けられていなかった。1950年(昭和25年)に在日米軍相模総合補給廠の人員輸送の目的で設けられた仮乗降場が矢部駅の前身で、その後、1957年(昭和32年)になって矢部駅となったものという。

在日米軍相模総合補給廠
在日米軍相模総合補給廠は矢部駅から相模原駅にかけての横浜線北側に位置している。そのフェンスが駅北口前から見える。近くまで行くとフェンスに取り付けられた警告表示が目に留まる。英語表記のものと日本語表記のものが並んでいる。当然のことだが、基地とその活動について“Photographing”や“Making Notes”、“Drawings”などを行ってはならないそうである。

矢部駅北口の正面、交差点の角に当たるところに三角形の敷地で上矢部公園という小公園がある。公園は平坦な広場で、その中に各種の遊具が設置されている。訪れたのは土曜日のお昼過ぎ、公園内では子どもたちの遊ぶ姿があった。
県営上矢部団地
上矢部公園の東側の道を北へ辿ってみよう。少し進むと右手に麻布大学がある。麻布大学の門を通りすぎるとY字の交差点があり、道は少し右に曲がる。交差点で左に逸れると県営上矢部団地の中だ。

このY字交差点の角に立派なイチョウの木があった。堂々と枝を広げた姿が見事だ。保護のためか、根方はフェンスで囲まれている。保存樹木なのだろうかとも思ったが、探してみてもそれを示す標識などは見つけられなかった。

県営上矢部団地
そのイチョウの向こうには団地の建物が見えている。さらに交差点に近づいてみると、団地の建物の向こう、頂上に独楽(こま)を乗せた塔のような、特徴的な意匠の構造物の姿が見えた。おそらく団地の給水塔だろう。日を浴びて輝く真っ白な給水塔の姿はひとつのモニュメントのようでもあり、なかなか興趣があって美しいものだ。
上矢部団地の横を抜けてさらに北へ辿っても楽しそうだが、それはまた次の機会にして、今回は矢部駅前に戻り、淵野辺駅へ向かうことにしよう。

矢部踏切
矢部駅のすぐ東側には矢部踏切という小さな踏切がある。車両の通行のできない、小さな踏切だ。幅員1.8メートルだそうだ。何故か、こうした小さな踏切の姿に心惹かれる。踏切の傍らに佇み、何枚か写真を撮りながら、横浜線の車両が何度か通り過ぎるのをやり過ごした。踏切が閉まると、地元の人たちが遮断機の前で待ち、電車が通り過ぎて踏切が開くと、待っていた人たちが渡ってゆく。その様子を見ていると不思議に飽きない。

横浜線に沿って歩く
踏切を渡り、線路の南側を辿って淵野辺駅に向かおう。線路の南側には線路のすぐ横を併走するように道路が通っている。矢部駅南口近くでは商店なども建っているが、駅から離れると商店はなくなり、基本的に住宅街だ。歩いていると横の線路を上り下りの横浜線が走り過ぎてゆく。

矢部踏切から300メートルほど歩くと、横浜線の線路と線路脇の道路とを一跨ぎにして矢淵陸橋が架かっている。矢部の「矢」と淵野辺の「淵」を取ってその名となったのだろう。矢淵陸橋の下には「矢淵子どもの広場」という子どもたちのための遊び場が設けられている。

歩道橋から横浜線を見る
矢淵陸橋から数十メートル淵野辺駅寄りで、歩道橋が横浜線の線路を跨いでいる。この歩道橋に上って線路を見下ろしてみた。西を見れば間近に矢淵陸橋が見える。その下を上り下りの横浜線が行き過ぎる。特に鉄道趣味というわけではないが、電車が行き交う様子を見下ろすのは意外に飽きないものだ。

歩道橋を降りて淵野辺駅を目指そう。ここまでずっと横浜線の線路に沿ってすぐ横を辿る道があったのだが、少し行ったところでその道が途絶えてしまった。少し南へ回り込んで駅を目指す。住宅街の中を抜けてゆくとすぐに淵野辺駅だ。

淵野辺駅の南口には大きなロータリーが設けられており、さまざまな路線のバスが発着する。駅のすぐ南には鹿沼公園があるが、今回は立ち寄らずにおこう。駅近くのお店で一休みして、淵野辺駅から帰路を辿ることにしたい。
矢部駅から淵野辺駅まで、今回の散策はほんの短い距離だったが、普段は歩くことのないところで楽しいひとときだった。ほとんどの行程を線路の南側に沿った道を歩いたのだが、線路の北側の町中を歩くのも楽しそうだ。それはまた次の機会ということにしよう。
矢部新町から鹿沼台