佳景探訪 - 国鉄志布志線今町駅跡（宮崎県都城市）

宮崎県都城市と鹿児島県志布志市を繋いで、かつて国鉄志布志線が通っていた。都城市の南部にかつての志布志線今町駅の跡が残され、今は鉄道記念公園として整備されている。夏の盛りの八月中旬、国鉄志布志線今町駅跡を訪ねた。

宮崎県都城市の南端部近くに、旧国鉄志布志線今町駅の跡が残されている。駅跡には線路やホーム、信号機などが残され、往時の風景を偲ばせる。線路上にはC1264号機関車も保存展示されており、鉄道ファンには嬉しいものだろう。駅跡周辺の一帯は「今町鉄道記念公園」として整備され、遊具を設けた広場なども併設されている。また志布志線の線路跡は自転車歩行者専用道路として整備されており、鉄道ファン、特に旧国鉄のファンならぜひ訪ねておきたいところだ。

国鉄志布志線は1923年（大正12年）に都城－末吉間で開業した。その後延伸を続け、都城ー志布志間が開通したのは1925年（大正14年）のことだ。1932年（昭和7年）には都城ー西都城間が日豊本線に編入されている。

一方、志布志からは宮崎県方面へと延伸、1935年（昭和10年）に志布志ー榎原間が延伸開業、さらに延伸を続け1941年（昭和16年）には北郷まで延伸したが、1963年（昭和38年）に志布志ー北郷間が日南線に編入され（この時、日南線が全線開業した）、西都城ー志布志間が志布志線となっている。

やがて1980年代、志布志線は国鉄再建法の施行により第2次特定地方交通線に指定、1987年（昭和62年）3月27日を最後に全線廃止となるのである。

その後、都城市内の志布志線跡の一部が1990年度（平成2年度）から1996年度（平成8年度）にかけて「志布志線ウエルネスロード」という自転車歩行者専用道路として整備されている。この鉄道記念公園はその一環として、かつての今町駅跡に設けられたものだ。

今町駅は西都城駅と末吉駅との間に設けられた駅だった。西都城駅とは4.3km、末吉駅とは4.0kmの距離があった。廃止されてからすでに時が経ち、駅跡は時の流れの中でひっそりと往時の記憶を留めている。線路跡もホーム跡も夏草に覆われ、自然の風景の中に同化しようとしているようにも見える。のんびりと駅跡を散策しながら、列車が走っていた時代の光景を想像してみるのも楽しい。

線路跡の一角に場所を設けてC1264号機関車が保存展示されている。この機関車は1932年（昭和7年）から製作されたC12形式の小型機関車で、1934年（昭和9年）から1974年（昭和49年）まで北海道で使用されていたものだという。その後鹿児島県の吉松機関区に移り、山野線を走っていたが、ディーゼル車の時代となって現役を退いている。

1975年（昭和50年）からは都城総合運動公園に設置保全されていたが、現在地の鉄道記念公園が整備されたのに合わせて移設されたものという。旧志布志線との直接の関連はないわけだが、昭和初期の鉄道遺産として、シンボル的な意味合いでの保存展示というわけである。

今町駅跡の周辺は前述のように「今町鉄道記念公園」として整備されており、広場が設けられ、複合遊具も設置されている。訪れたときは暑い盛りだったこともあってか、公園内に人の姿はなかったが、普段は地元の人たちの憩いの場として親しまれているのだろう。

都城市内の旧志布志線跡を整備した「志布志線ウエルネスロード」は甲斐元町から末吉町まで約6100mの距離があるそうだ。時間と体力が許せばのんびりと辿ってみるのも楽しいに違いない。かつてここを走っていた志布志線の列車の姿を思い浮かべながら、時代の変遷というものに思いを馳せたい。

今町駅跡（鉄道記念公園）はJR日豊本線西都城駅から5kmほどの距離があり、徒歩では一時間以上かかる。車での来訪が便利だ。宮崎自動車道都城ICから国道10号、国道269号へと辿って南下、13kmほどの距離だ。

場所がわかりにくいが、国道269号に「今町鉄道記念公園」を指し示す標識が設けられているので見落とさないようにしよう。国道から入った先に、無料の来園者用駐車場が設けられている。駐車スペースは数台分だが、有名な観光名所というわけではないので普段なら駐めることができるだろう。

国道269号沿いに飲食店が点在しているが、数は少ない。選択肢を増やそうと思うなら国道269号を北上して都城市の中心市街へ、あるいは南下して曽於市の中心市街へ移動するのが賢明だ。

来訪前にお弁当などを調達しておいて、公園のベンチなどを利用してアウトドアランチを楽しむのも楽しい。

今町駅跡（鉄道記念公園）から国道269号を4kmほど南下すれば鹿児島県曽於市の中心市街だ。末吉町本町２丁目に志布志線末吉駅跡がある。鉄道記念館も併設されているから併せて訪ねてみたい。

末吉駅跡からさらに国道269号を6kmほど南下すれば岩北駅跡、さらに国道269号から県道110号へと逸れて辿れば大隅松山駅跡へも遠くない。志布志線の駅跡巡りを楽しもう。