横浜線沿線散歩公園探訪
相模原市中央区上溝〜陽光台
道保川公園
Visited in April 2022
道保川公園
相模川の支流のひとつに道保川という川がある。相模原市上溝から下溝にかけて河岸段丘の斜面の下に沿って流れる小さな川だが、その源流部に自然溢れる公園が整備されている。道保川公園という。そのせせらぎと野鳥のさえずりが環境庁が1996年(平成8年)から公募して定めた「残したい“日本の音風景100選”」のひとつに選定されてもいる。湧水の湿地と河岸段丘の斜面林を生かした園内には遊歩道が設けられており、木々の緑に包まれての散策が楽しい。
道保川公園 道保川公園のメインエントランスは公園南側に設けられている。エントランス脇に管理事務所が置かれ、園内の案内図も置かれているので初めての人はこれを貰っておくとよいだろう。

園内に入ると左手の池の様子に心惹かれる。池の周囲は植栽が整備され、池の中ほどには木製のデッキが延びており、庭園風の佇まいが落ち着いた印象を与えてくれる。池は「水鳥の池」と名付けられている。亀や鯉などの姿もあるが、冬には鴨などの愛らしい姿が見られるのだろう。

道保川公園 「水鳥の池」から北に向かって湿地が続き、その両脇に散策路が延びている。ところどころに湿地を跨ぐ橋が設けられ、また湿地に茂る葦の間を縫って辿る木道なども整備されている。

湿地の周囲は木々の緑が濃く、特に東側の一帯を占める雑木の斜面林は山深い谷戸に入り込んだような錯覚さえ覚えるほどだ。それらの木々と湿地の織りなす風景は穏やかに美しく、小径を辿っての散策が楽しい。せせらぎの水は充分に澄んで、さまざまな水辺の植物の姿を見ることができる。

道保川公園 湿地は公園の西側の端を南北に延びているが、そこから東の斜面林の中へと大小いくつかの沢が延びている。「さえずりの沢」や「こもれびの沢」などといった名の付いたそれらの沢からさらに雑木林の中を辿る小径へと歩を進めることもできて、明るい水辺から少々薄暗い林の中へと辿る散策はそれなりの変化を伴っていて飽きない。

公園のほぼ中央部、林の中に木々に抱かれるようにして「双子沢」という場所がある。このあたりは林の直中にぽっかりと開いたような空間だ。天蓋のように木々が頭上を覆い、木漏れ日が揺れる沢の風情は少しばかり密やかな印象もあって楽しい。沢の中ほどを延びる木道を歩くと、沢の縁に石垣が組まれているのに気付く。実はここはかつてわさび田であったのだという。わさび田というと山深い清流という印象があるが、こんな身近にもあったのかと少々嬉しい驚きを感じる。わさび田がその役目を終えてからどのくらい経つのかは知らない。今では残された湿地にセリやクレソンなどが育っている。初夏には今でも蛍の姿を見ることができるという。
道保川公園 「こもれびの沢」と「双子沢」の間を東の高所へ小径が登っている。小径を辿るとやがて林を抜け出て住宅街の端へ出る。陽光台五丁目の西端の辺りだ。木立の間に遊具やベンチの置かれた一角があり、その横にはちょっとした広場もある。この場所も道保川公園の一部であるようで、公園はこの「上段」部分と斜面林や湿地から成る「下段」とによって構成されている形だ。

「上段」部分と「下段」部分は基本的にフェンスによって隔てられている。この上段部分は傍らの住宅街に暮らす人々にとってのちょっとした憩いの場であるのだろう。道保川公園の下段部分とは印象が異なり、その一部というより隣接する別の公園のようでもある。
道保川公園 深い雑木林と水辺から構成される道保川公園はさまざまな生き物たちの住みかでもある。野鳥のさえずりが絶えず響いているところなどは「日本の音風景100選」の名に恥じない。案内図に書かれた説明によれば、沢の中ではドジョウやサワガニ、カワニナなども観察できるという。

園内は西側の水辺に沿った「水生動植物観察ゾーン」、「さえずりの沢」の辺りの「野鳥観察ゾーン」、「こもれびの沢」の「山野草観察ゾーン」、双子沢の「森林生態観察ゾーン」に指定されていて、それぞれに特徴的な自然の様相を観察できるようだが、散策の際にはそういった「ゾーン」をそれほど意識する必要もないだろう。気の向くままに散策を楽しみ、水辺や雑木林の魅力を肌で感じればよいようにも思える。
道保川公園
園内は常に美しく整備されて荒れた印象などはない。公園西側の道路を走る車の音が届いてしまうのは残念なところだが、林の木立の中に分け入ってゆけばそれほど気にならない。水辺の涼やかな風情はやはり初夏から夏にかけてが楽しいと思えるが、秋の紅葉や冬の野鳥観察なども良いものだろう。四季折々に訪ねて、その表情を楽しみたくなる、自然溢れるお薦めの公園だ。

園内は虫取り網や虫かごの持ち込みが禁止されており、持ち込んだ際は管理事務所に預けることになっている。公園は昼間だけの開園で、時間外は閉門されて利用することはできない。開園時間は季節によって異なる。開園時間の詳細は公式サイトを参照されたい。トイレは南側入口の管理事務所脇にあるだけだが、それほど広い公園ではないので充分だろう。駐車場は公園西側の道路脇に「第1駐車場」、公園南側に「第2駐車場」が用意されており、合わせて40台分ほどが駐車可能だ。
道保川公園
道保川公園
道保川公園
道保川公園