横浜線沿線散歩公園探訪
多摩市連光寺
桜ヶ丘公園
April 2001
桜ヶ丘公園
多摩市連光寺五丁目のほとんどを占めるように広大な雑木林を抱える公園がある。都立の桜ヶ丘公園だ。南西側に接する多摩ニュータウンの聖ヶ丘の街から見ると、整然と造成されたニュータウンの向こうに昔ながらの多摩丘陵がそのままに残っているように緑濃い丘が横たわっている。その名の通り桜の名所として有名な公園だが、多摩丘陵の自然の保全という目的も持っており、園内のほとんどはかつての里山の自然を彷彿とさせる雑木林が占めている。雑木林の中を散策路が辿り、野鳥の声を聞きながらの木立の中の散策は心和むものだ。
桜ヶ丘公園 旧多摩聖蹟記念館
桜ヶ丘公園は旧多摩聖蹟記念館が置かれていることでもよく知られている。かつて1880年代、明治天皇が兎狩りなどの目的で四回ほど多摩連光寺を訪れており、園内にもその際の「明治天皇御野立所」の碑が残っている。「聖蹟」とはこうした天皇の行幸の地を指し、この記念館も本来は1930年(昭和5年)に明治天皇の顕彰を目的に「多摩聖蹟記念館」として田中光顕によって建てられたものだ。

田中光顕は1843年(天保3年)土佐に生まれた維新の志士のひとりで、幕末には薩長同盟実現に尽力、明治新政府のもとでは警視総監や貴族院議員などの要職を歴任、1898年(明治31年)からの12年ほどの間は宮内大臣を務めた。田中光顕は多摩聖蹟記念館の他、佐川町立青山文庫などを創立(「青山」は田中光顕の号である)し、文化的事業の功労でも知られている。

記念館は財団法人多摩聖蹟記念会が管理運営していたが、やがて建物は老朽化し、一時は取り壊しも検討されたという。昭和初期の建築物として評価の高かった記念館は取り壊しを惜しむ声も多く、多摩市が1986年(昭和61年)に有形文化財に指定し、改修を経て管理運営を引き継ぐことになった。以来、記念館はその文化財としての建物の保存と公園来訪者のための憩いの場に目的を変え、「旧多摩聖蹟記念館」と、「旧」の文字を付加して呼ばれることになった。

旧多摩聖蹟記念館のホール中央には渡辺長男作の明治天皇騎馬像が置かれ、その周囲に田中光顕が収集したという幕末の志士たちの遺墨などが展示されている。記念館の収蔵資料は松下村塾関連、薩長同盟関連、明治新政府関連など200点余りに及ぶという。この他、園内をはじめとした多摩市内で見られる植物の写真なども展示、「多摩市植物友の会」の協力の下に自然観察会なども実施しており、公園の自然に触れるための拠点としても記念館は機能している。記念館の概要、収蔵資料の詳細、ギャラリーとしての利用方法や企画展示の案内など、記念館のパンフレットや「雑木林」という名の会報に詳しい。
桜ヶ丘公園 丘の上広場
旧多摩聖蹟記念館の建つあたりは桜ヶ丘公園内では最も高所の丘の上で、この丘は「大松山」というらしい。旧多摩聖蹟記念館の傍らには丘の上広場と名付けられた広場があり、ベンチや四阿などが置かれている。このあたりは春の桜秋の紅葉の名所で、それらの見頃の季節には訪れる人で大いに賑わう。新緑に染まる季節も味わいがあって、のんびりと風に吹かれて野鳥の声を聞きながら一休みするのもいい。丘の上広場の周囲を取り囲むように雑木林の中を散策路が辿っており、ひととき木立の中の散策を楽しむのも桜ヶ丘公園の醍醐味と言えるだろう。
桜ヶ丘公園 大谷戸の池
公園の西端部分、道路を隔てて西に聖ヶ丘の街と接する部分はかつての谷戸であったらしく、低所となった地形に沿って散策路が設けられている。この谷戸部分は南北に長く、北の端では西に大谷戸公園に隣接している。大谷戸公園駐車場の傍らには小さいながらも池があって、大谷戸の池という名称がある。大谷戸の池の南にはしょうぶ池がある。このあたりはかつては湿地帯だったのだろう。これらの池は大谷戸公園の一部だと思う人も多いのではないかと思うが、公園の案内図によれば桜ヶ丘公園の範囲内であるようだ。

大谷戸公園の傍らから散策路に沿って南へ歩を進めると、右手に芝生の広場のある一角に出る。公園西中央口の置かれたあたりで、案内図には「杉の辻」という名もあるが、これは昔からのこのあたりの地名なのだろう。このあたりから公園南端の管理事務所のあるあたりまで、緩やかなスロープの芝生の広場が続く。西に聖ヶ丘の街があり、公園外周に沿って道路が通っているのだが、交通量はあまり多くはなく、比較的静かでのんびりとしたひとときを過ごすことができる。

桜ヶ丘公園 ひぐらし坂付近
公園管理所の傍らの広場は「お花見坂」という名が付けられている。ここも春の桜が美しい広場だ。管理所の脇から雑木林の中を縫うように東へ散策路が延びている。「あじさいの道」という。その名の通り、小径の脇には紫陽花が多く、その花期には風情のある散策が楽しめそうだ。「お花見坂」から東へ登ると「ひぐらし坂」だ。何とも風情のある名だが、公園として整備される以前からある地名なのだろうか。訪れた時には散策路脇にツツジが美しく咲いているのが印象的だったが、この散策路に沿って高所に辿ると西方に視界の開けた一角がある。眼下に「お花見坂」のあたりから聖ヶ丘の街を一望できてなかなか爽快だ。四阿も置かれているので、散策の足を止めて一休みするのもいい。

「ひぐらし坂」の上の四阿の横あたりから北に向かって雑木林の中に小径が延びている。木立の中を縫って進むと、やがて多摩市立の連光寺公園の傍らへと出る。連光寺公園はテニスコートや子どもたちのための遊具、広場などからなる小さな公園だが、雑木林は桜ヶ丘公園から隔たり無く続いており、両者がうまく融合している雰囲気だ。連光寺公園からさらに北に向かって降りると、やがて桜ヶ丘公園の駐車場の下あたりへと抜け出る。
桜ヶ丘公園 大松山の散策路
緑豊かな桜ヶ丘公園は雑木林散策の楽しみを存分に味わうことのできる公園だ。特に大松山を巡る散策路がいい。公園西中央口から大松山の南側を登る「おもいでの道」などはお薦めと言っていいだろう。腰を下ろしてのんびりとくつろぐときなどには、西側の谷戸部分の芝生の広場も穏やかな雰囲気に包まれていて良い場所だ。谷戸部分を南北に辿る散策路や西中央口から駐車場下までを繋ぐ散策路(訪れた際にはちょうど整備工事中だった)は舗装されていてベビーカーや車椅子の人なども特に不便を感じることはないだろう。桜ヶ丘公園内には特に遊具類はないが、大谷戸公園連光寺公園と合わせてひとつの公園として機能しているような側面もあり、特に北西側に隣接する大谷戸公園は子どもたちの遊び場としてもお薦めだ。周囲は住宅街でお店などはなく、のんびりと訪れる時にはお弁当持参がよいだろう。駐車場は東側の旧多摩聖蹟記念館入口の横にあり、60台ほどが駐車可能だ。
桜ヶ丘公園

桜ヶ丘公園