横浜線沿線散歩公園探訪
八王子市南大沢
清水入緑地
April 2014
清水入緑地
南大沢地区の南東端、南北に長く清水入緑地が横たわっている。南大沢二丁目の南端部に位置し、東側には都道503号線が南北に延び、西側は南大沢三丁目の住宅街だ。この辺りは都道の東西が丘陵地で、その間に挟まれた低地に都道が抜けている地形だ。容易に推測できるが、すなわち昔からの谷戸地に現在は都道が抜けており、その谷戸地の名が「清水入谷戸(あるいは単に「清水入」ともいう)」というわけだ(「清水入谷戸」の名は現在はバス停の名に残っている)。清水入緑地は清水入谷戸の西側の斜面林の一部を残して整備したもので、緑地内の雑木林には多摩ニュータウン造成前の多摩丘陵の植生がよく残っている。その面積は7haを超えるようで、住宅地の中に残された緑地としてはかなり広い方だと言えるだろう。
清水入緑地

清水入緑地

清水入緑地

清水入緑地
清水入緑地の大部分を占めるのは鬱蒼とした雑木林だ。その林の中、木々の間を縫うように散策路が整備されており、林の中を歩けば雑木林散策の楽しみを存分に味わうことができる。林は造成以前の多摩丘陵の林相を残したもので、多摩ニュータウンとして造成される以前の風景を彷彿とさせるものだ。林の中には高さ20mを超えるシラカシなどもあり、その傍らには簡単な解説板も設置されていた。樹木に興味のある人は木々のそれぞれを丹念に観察してゆくと興味が尽きないだろう。

北側の林は「野鳥の森」と名付けられたバードサンクチュアリになっており、野鳥観察のための「観察舎」も設けられているが、老朽化のためか、訪れたときには「観察舎」には立ち入ることができず、利用できなかった。

南側の林には鉄骨造りの「観察塔」が設置されており、こちらは利用することができた。観察塔の上部に登れば木々の高みの梢を眼前に見ることができる。観察塔も野鳥観察を目的としたものだろうか。残念ながら間近に野鳥の姿を見ることはできなかった。この塔はあくまで「観察塔」であり、「展望塔」ではないという前提か、上部に登っても眼前には木々が鬱蒼と茂るばかりで展望が開けるわけではない。冬を迎えて落葉樹が葉を落とせば観察塔から見える景色も違うのだろう。

観察塔近くから東側の谷戸へと下りる散策路脇、シャガが群生しているところがあった。緑地内に入り込んだ小谷戸の斜面に、埋め尽くすようにシャガが咲いている。自生しているものか。シャガは清水入緑地内の他の場所でも見ることができ、それほど珍しい花というわけでもないが、数多くが集まって咲く景観はなかなか見応えのあるものだった。
清水入緑地

清水入緑地

清水入緑地

清水入緑地
清水入緑地の東側外縁部は斜面の裾に沿って散策路が辿り、散策路脇には小川もある。小川は人工的なもので、訪れたときには水の流れはなかった。東側外縁部の南側部分は“公園”として整備が施され、広場があり、パーゴラが設けられ、舗装された広い園路が辿っている。小川には風雅な意匠の橋が架けられ、穏やかな憩いの場として演出されているという印象だ。

パーゴラは藤棚を兼ねており、訪れたとき(2014年4月下旬)、藤の花がそろそろ見頃を迎えつつあった。その前の広場脇ではまだ八重桜の花が残り、緑地の林を背景に鮮やかな景色を見せてくれていた。園路脇では小川に沿ってシャガが並んで咲いている。これは植栽したものか。

パーゴラと広場のある一角の東側、道路を挟んで南大沢長谷戸公園という小公園がある。南大沢長谷戸公園は清水入緑地と都道503号線との間に位置している。特徴のある公園ではないが、大きく枝を広げたクスノキの姿が印象的だ。都道脇の外縁部ではハナミズキが美しい。

清水入緑地の東側外縁部をさらに南へ辿れば緑地の南東端、緑地内から外へ出れば「南大沢南」交差点に近く、交差点の斜向かいの丘上には長池公園の木々が見えている。交差点から長池公園の北側に沿って東へ延びる道路はヨウコウという種類の桜の並木で、三月下旬から四月上旬にかけけて鮮やかな紅色の花を咲かせる。

「南大沢南」交差点側の一角が清水入緑地のメインエントランスという位置付けだろうか。端正に整備された中を園路が緑地の奥へと辿り、進んで行けばパーゴラや広場を設けた区画に至る。園路脇にはカツラやイロハモミジ、トチノキ、サクラなど、さまざまな木々が植栽されている。ここでも八重桜の花がまだ残り、緑の風景の中に鮮やかな色彩を加えている。
清水入緑地

清水入緑地
清水入緑地は、端正に整備された南東部の区画と、緑地内の大部分を占める斜面林の区画とから構成される、二つの表情を持つ緑地と言っていい。南東部の区画は“緑地”と言うより一般的な“公園”の佇まいで、穏やかで寛いだ空間を成している。交通量の多い道路が近いために少しばかり車の騒音も聞こえてくるが、木々に囲まれた空間の印象はそうした短所を補ってくれるだろう。斜面林の区画は清水入緑地のメインとなる部分で、多摩丘陵の本来の姿を残した林相が貴重であり、魅力的だ。

林の中の散策路を辿って雑木林散策を楽しみ、その後は南東側の区画のベンチなどを利用して一休み、あるいはお弁当を広げるのもいい。清水入緑地の名の通り、さまざまな木々の茂った緑濃い園内は春の新緑や秋の紅葉などが特に魅力的だろう。四季折々に訪ねてみたい緑地である。

清水入緑地の西側は南大沢三丁目の住宅街で、住宅街の中の舗道を辿れば大平公園にも近い。緑地の南東端から「南大沢南」交差点の斜向かいへ道路を渡り、長池公園へと散策の足を延ばすのもお勧めだろう。
清水入緑地