現在の知覧は鹿児島県南九州市の一地区だが、2007年(平成19年)以前は川辺郡知覧町という自治体だった。2007年(平成19年)12月1日に知覧町と同じ川辺郡に属していた川辺町、さらに揖宿郡頴娃町の三町が合併し、南九州市が誕生した(ちなみに、この合併によって川辺郡と揖宿郡が消滅している)。まだ知覧町だった1975年(昭和50年)、「知覧武家屋敷庭園保存会(現在の「知覧武家屋敷庭園有限責任事業組合」)」が発足、地域住民と行政が一体となった町町づくり、知覧麓の景観の保存へ向けた取り組みが始まった。現在、知覧の武家屋敷群が美しい景観のままに残るのは、この活動のお陰である。
そうした活動が奏効してか、1981年(昭和56年)2月には武家屋敷群の七つの庭園が「知覧麓庭園」として国の「名勝」の指定を受け、さらに同年11月には「伝統的建造物群及び地割がよく旧態を保持しているもの」として「重要伝統的建造物群保存地区」にも選定されている。さらに1986年(昭和61年)には建設省と「道の日」実行委員会によって制定された「日本の道100選」にも「武家屋敷通り」として選定されている。知覧の武家屋敷群は、名実共に全国に誇る景勝であり、貴重な歴史遺産だ。