鹿児島県指宿市の西端に魚見岳という小高い山がある。頂上部分には展望台が設けられ、眼下に知林ヶ島を見下ろし、錦江湾越しに桜島も見える。夏の盛りの八月中旬、魚見岳展望台を訪ねた。
魚見岳展望台
魚見岳展望台
鹿児島県指宿市の西端、錦江湾に突き出すような形状となった地形のところに、魚見岳という小高い山がある。魚見岳は標高215メートル。東側(海岸側)から見ると切り立った岩肌の断崖がハワイのダイヤモンドヘッドのようだと形容されている。かつて漁師が漁に出る際に、この山の山頂から魚の群れを見つけたというので、この名がある。山頂付近は「魚見岳自然公園」として整備され、桜の名所としても知られている。

その魚見岳の山頂付近に展望台が設けられている。展望台からは漁師が魚群を探したという名の由来の通りの眺望を楽しむことができる。東側には錦江湾が横たわり、眼下には知林ヶ島を見下ろす。北には遠く桜島の姿も見える。南には指宿市街が広がっている。絶景である。
魚見岳展望台
魚見岳展望台
魚見岳展望台からの眺望の最大の見所は、やはり眼下に見下ろす知林ヶ島だろう。知林ヶ島の陸繋砂州について、詳細は「知林ヶ島」の頁に譲るが、知林ヶ島は春から秋の中潮、大潮の干潮時、陸繋砂州によって陸地と繋がることで知られる。繋がれば歩いて渡ることができ、多くの観光客が訪れて賑わう観光地だ。その様子を標高200mを超える高みから眺めることができるのだ。

陸繋砂州の出現や消失の様子を展望台から眺めるのは楽しい体験と言っていい。知林ヶ島と田良岬とを隔てていた海面に少しずつ砂州が現れ、砂州は次第に広く大きくなっていく。現れた陸繋砂州は曲がりくねって延び、知林ヶ島と田良岬を繋ぐ。やがてその砂州の上を人が歩き始める。見ていると時の経つのを忘れる。

この光景を見るために魚見岳展望台を訪れても後悔しない。まさにここでしか見られない絶景である。
魚見岳展望台
魚見岳展望台からの眺望の魅力は、もちろん知林ヶ島だけではない。北に目を向ければ横たわる錦江湾の向こうに遠く桜島の姿を見ることができる。ここからは桜島をほぼ真南から見ることになり、鹿児島市街から見る桜島とも、垂水側から見る桜島とも、錦江湾北岸側から見る桜島とも違った表情の桜島を見ることができる。
魚見岳展望台
魚見岳展望台から南に目を向ければ眼下に指宿市の市街地が広がる。魚見岳の足元には野球場や「フラワー公園」や「オーストラリアの森」といった施設を設けた公園エリアで、その向こうに市街地が広がっている。港湾の様子もよく見える。爽快な眺望である。
魚見岳展望台
南西の方向、低く連なる丘陵の稜線を注意深く眺めると、ひょっこりと頂上部を覗かせる開聞岳を見つけることもできる。地形の関係でほんのわずかしか見えないのが残念だが、頂上部だけでも“薩摩富士”の美しさはよくわかる。
魚見岳展望台
魚見岳展望台
魚見岳展望台は車やバイクでなければアクセスしにくいのが少しばかり難点だが、指宿観光の際にはぜひ訪ねてみて欲しいところだ。展望台から見える景色はまさに絶景。東側に広がる錦江湾の景色は特に素晴らしい。できれば予め満潮干潮の時刻を調べておき、知林ヶ島の陸繋砂州が現れる時刻、あるいは再び波間に消えてゆく時刻に訪れることをお勧めする。
参考情報
交通
魚見岳展望台は標高215メートルの魚見岳山頂付近に設けられている。車で登ることができるので、車やバイクの利用がお勧めだ。展望台付近に無料駐車場が設けられており、80台ほどが駐車可能だ。

鹿児島市中心部からは、ルートにもよるが約50km。所要時間は1時間と少しといったところだろう。大隅半島側からならフェリーを利用して根占から山川へ渡る方法もお勧めだ。

飲食
魚見岳の山頂には飲食店も売店もない。食事や休憩は指宿の中心市街へ移動して楽しもう。

お弁当を用意しておいて、爽快な眺めを楽しみながらランチタイムを楽しむのもお勧めだ。

周辺
魚見岳展望台から知林ヶ島の眺望を楽しんだら、陸繋砂州が現れる時間を狙ってぜひ歩いてみよう。楽しい体験ができる。

指宿市を訪れたら、長崎鼻や池田湖などの景勝地にも訪ねておきたい。いろいろな場所から見える開聞岳の姿を楽しもう。長崎鼻近くの「長崎鼻パーキングガーデン」や「フラワーパークかごしま」を訪ねるのもお勧めだ。長崎鼻近くにはR日本最南端の駅として有名なJR指宿枕崎線西大山駅がある。ホームの向こうに見える開聞岳の景観が美しい。

温泉好きの人なら砂蒸し温泉も楽しんでおきたいところだ。宿泊してのんびりと楽しむのもいいし、日帰りで体験してみるのも悪くない。
海景散歩
鹿児島散歩