神奈川県綾瀬市の中央部に光綾公園という公園がある。野球場やバラ園の設けられた公園で、大型の複合遊具が子どもたちの人気を集める。バラが見頃の五月半ば、光綾公園を訪ねた。
光綾公園は神奈川県綾瀬市のほぼ中央部に設けられている。あるいは海上自衛隊厚木航空基地の南西側に位置すると言った方がわかりやすいかもしれない。面積は4.4haほどで、特筆するほど規模の大きな公園というわけではないが、綾瀬市内では屈指の広さを誇る地区公園で、市民の憩いの場として親しまれている。1976年(昭和51年)に開園したものという。
光綾公園は深谷通り(市道1629−1号線)沿い東側にあり、深谷通りと交差する市道12−2号線によって南北に分断され、二つの区域から構成される形になっている。北側の区域は南側に比べて広く、野球場や「芝生広場」、「日本庭園」、「バラ園」、駐車場などが設けられている。南側の区域は北側区域の半分ほどの広さで、「ふれあい広場」や「わんぱく広場」、「いこいの広場」と名付けられた広場を設けている。園内は広々とした開放感には乏しいが、限られた面積の中にさまざまな楽しみ方に応えるための施設を設けた結果だと考えれば仕方のないところだろう。
園内は双方の区域とも樹木が茂って緑濃い印象だ。西側を抜ける深谷通りが交通量が少なくないために車の音が聞こえてくるのが少しばかり難点だが、木々に包まれた園内ではそれほど喧噪感を感じるほどではない。日本庭園やバラ園などを設けた北側の区域はのんびりと散策するのによく、特徴のある遊具を設けた南側の区域は特に子ども連れの家族に人気のようだ。バラ園の見事さは広く知られ、バラの花期には比較的遠方から訪れる人もあるようだ。園内には桜も多く、春には花見客で賑わうという。遠方からの来園者を広く迎えるような行楽地的性格は持っていないが、近隣に暮らす人たちの憩いの場としては充分に魅力的で、お弁当を持って手軽なピクニック感覚で来園しても楽しめるだろう。
バラ園
光綾公園のバラ園は神奈川県内のバラの名所のひとつとして広く知られている。バラ園は公園北側の区域のほぼ中央部、長方形に区画を区切って設けられている。28種、約900本のバラが植えられているという。
バラ園は南側と北側に出入口が設けられ、出入口にはバラのアーチが設けられている。南北のバラのアーチを繋いで広い園路が南北に延び、その園路にはクスノキなどの樹木が植えられて景観にアクセントを添える。バラ園中央部には円形の花壇が設けられ、その花壇を囲むように円形のベンチが置かれている。両脇には幾何学的なデザインで花壇が配され、花壇の間を園路が抜ける。園路を辿ればさまざまなバラを間近に楽しむことができる。園路をゆっくりと辿りながらバラの花のそれぞれを観賞してゆくのもよく、バラ園の風景そのものを楽しむのもいい。中央部のベンチに腰を落ろし、周囲に広がるバラ園の景観を眺めていると時の経つのを忘れる。
花壇は品種によって分けられているという様子ではなく、さまざまな品種、さまざまな色のバラが組み合わされて植えられているようだ。そのことによって視界の中にさまざまなバラの色彩が飛び込んできて美しい景観を楽しむことができる。各品種のバラのそれぞれを愛でるという楽しみ方より、さまざまなバラの咲き誇るバラ園の景観を楽しむということに主眼が置かれているのだろう。バラの品種名を記したプレートなども見当たらなかった。
バラ園はそれほど広いものではない。28種、約900本という数も特筆するほど多いものではない。しかし丹精込めて育てられていることが窺えるバラの数々は見応えがあり、端正に整えられたバラ園内の景観も美しく、遠方から訪れても期待に応えてくれるバラ園と言っていい。
丘
バラ園の南側に隣接して小高い丘がある。おそらく人工的に土を盛って造ったものだろう。バラ園のすぐ南側に大きなものがひとつ、その南側に少し小さめのものが二つ並ぶ。高さは小さい方でも3mほど、大きい方は5m以上あるのではないか。
これらの丘は、特に想定した目的があるようではない。子どもの遊び場として、あるいは丘の上に登って高みからの眺めを楽しんだり、利用者が自由に使えばよいのだろう。大きい方の丘は子どもたちが滑って遊ぶためか、バラ園側の中央部が抉れて溝ができ、土の滑り台と化している。田舎育ちの身としては、子ども時代に山の斜面を滑り降りて遊んだことを思い出す。土の上で遊ぶというのは楽しいものだ。
大きい方の丘はバラ園の南側に隣接していることもあって、頂上部に立つとバラ園の全景を俯瞰することができる。バラの花期に訪れたなら、この丘の上からの眺めを楽しんでおくことをお勧めする。
日本庭園
バラ園の北側には「日本庭園」が設けられている。東側は緩やかな傾斜で小高くなった林地で、西側には「たちばなの池」と名付けられた池を設けている。
「たちばなの池」は岸辺の石組みも凝った造りで、石橋や石灯籠なども配して日本庭園としての風情が演出されている。岸辺には四阿も建ち、松などの植栽も日本庭園らしさを醸している。岸辺を辿ればなかなか美しい庭園美を見つけることができる。池の水があまりきれいとは言えず、すぐ西側を深谷通りが通っているために車の騒音が聞こえてくるのが少しばかり残念なところだが、岸辺の四阿で池の景観を眺めながらのんびりとしたひとときを過ごすのも良いものだろう。
東側の林地はそれほど日本庭園としての表情を持っていないように思えるが、程良く木々が茂ってしっとりと落ち着いた佇まいだ。木陰にシートを敷いてお弁当を広げるには好適なところかもしれない。
芝生広場
公園の北側区域の南東側には広場が設けられている。「芝生広場」ということだが、残念ながら芝の状態はあまり良くないようで、(少なくとも今回訪れたときには)芝が取れて土が剥き出しの部分が多かった。広場そのものは木立に囲まれて穏やかな空気感が好印象だ。
「芝生広場」の南東側、すなわち公園北側区域の南東側の隅には三角形の区画を設けてブランコや砂場などの遊具が設けられている。光綾公園内では遊具類は南側区域が充実しているため、この一角はあまり人気がないようだ。今回訪れたときにも一組の親子の姿があるだけだった。
ブランコの脇ではクスノキの大木が大きく枝を広げている。なかなか立派な姿だ。遊具を設けた区画と「芝生広場」との間には両者を区切るように藤棚が置かれている。花期には藤の花が楽しめるだろう。
ふれあい広場、わんぱく広場、いこいの広場
公園の南側区域は深谷通りに沿って細長く長方形の形状をしている。「ふれあい広場」、「わんぱく広場」、「いこいの広場」、「ふるさとの森」と名付けられた区画に分けられて整備されているが、それほど明確に分けられているわけではなく、全体でひとつの広場を成し、その中に表情の異なる区画が設けられていると考えた方がわかりやすい。
南側区域のメインは何と言っても中央部の「わんぱく広場」だ。その名から容易に推測できるように、子どもたちのための遊具を設けた広場なのだが、その遊具がたいへんに特徴的だ。「わんぱく丸」と名付けられた、船の形(海賊船をイメージしたもののようだ)をした大型の複合遊具で、その“甲板”部分や“マスト”を模した柱などを利用して子どもたちのための遊び場が造られている。2本の“マスト”と“甲板”は橋で繋がれ、1本の“マスト”からはチューブ状の滑り台が降りている。大砲に模した部分は覗き込んで遊ぶのだろう。“甲板”の下にも潜り込んで遊べるようになっている。“海賊船”は海に浮かんでいるという設定なのだろう、船の横では鯨が潮を吹き、船の甲板から降りてくる少し長めの滑り台には魚の形状の“ゲート”も取り付けられている。そうしたさまざまな工夫が楽しく、子どもたちにとってとても魅力的な遊び場であるに違いない。ここまで凝った造形の複合遊具はなかなか他に類例がない。「わんぱく丸」は、2歳くらいから小学校に上がるくらいの年齢の子どもたち向けといったところか。「わんぱく丸」の脇には、いわゆる“ターザンロープ”も設けられており、こちらはもう少し上の年齢の子どもたちの人気を集めている。
「わんぱく広場」と「ふれあい広場」の間には水遊びの可能な小川も設けられている。暑い季節になれば水遊びの子どもたちで賑わうのだろう。小川は「裸足で入らないでください」との旨の注意書きがあった。訪れる時には水遊び用の靴を準備しておいた方がいい。小川の周辺は大きな木々が葉を茂らせ、木陰を落としてくれるのが嬉しい。親たちは木陰で休みつつ、遊ぶ子どもたちを見守ることができるというわけだ。今回訪れたのは五月の半ば、すでに汗ばむ陽気で、水に入って遊ぶ子どもたちの姿があった。
「わんぱく広場」の南側には小さな芝生の丘があり、外縁部には花壇が設けられてバラが植栽されている。「いこいの広場」と名付けられた一角だ。クスノキやケヤキなどの樹木が葉を茂らせ、その下にはベンチが置かれ、「いこいの広場」の名の通り、潤いのある空間になっている。木陰にシートを敷いてお弁当を広げるには良い場所だろう。
「ふれあい広場」は設備を設けず、土の地面のままの広場として置かれている。深谷通りに沿った西側に木々が茂って「ふるさとの森」と名付けられている。その木々が深谷通りを走る車の騒音を和らげる緩衝地帯として機能しているのだろう。
「ふれあい広場」から「わんぱく広場」、「いこいの広場」まで、木々に囲まれて穏やかな空気感を湛えていると言っていい。広場内の木々には桜の大木も多く、春には花見を楽しむ人たちで賑わうようだ。初夏から夏にかけては緑の木陰が涼やかなひとときを提供してくれる。小さな子どものいる家族ならお弁当持参で訪れるのがお勧めだ。公園での一日を存分に楽しめるだろう。
光綾公園の最寄り駅は相鉄線さがみ野駅だが、3kmほどの距離があり、徒歩では遠い。さがみ野駅と長後駅西口とを繋ぐバス路線を利用し、「上深谷」バス停で下りれば近い。
光綾公園は米軍厚木基地の西南側に位置している。車で来園する場合、藤沢方面からは県道42号を北上、座間方面からは県道42号を南下するとわかりやすい。県道42号の「市民スポーツセンター入口」交差点から東へ折れて進めば丁字路になった「光綾公園前」交差点に出る。目の前が光綾公園、交差点から南へ100mほど進んで丁字路を東へ折れれば駐車場入口がある。
公園には無料駐車場が設けられており、40台分ほどが駐車可能だが、行楽シーズンの週末休日には終日満車状態が続くようだ。近くに民間駐車場も無い。余裕を持って出かけた方がいい。
駐車場脇にドリンク類の自動販売機が設置されているが、公園内にはレストランや売店などはない。近辺にも飲食店はないので、特に子ども連れで来園するならお弁当持参がお勧めだ。
深谷通りを挟んで公園西側には「
長峰自然の森
」という樹林地がある。快適な雑木林散策が楽しめる。ぜひ立ち寄っておきたい。
光綾公園(綾瀬市)
長峰自然の森