鎌倉駅東口からそのまま東へ数十メートル進めば若宮大路だ。駅入口交差点のやや北方に二の鳥居が建ち、そこから北へ有名な段葛が延びる。若宮大路は鶴岡八幡宮の参道で、由比ガ浜から八幡宮までほぼ真っ直ぐに鎌倉の市街地を貫いて延びる。源頼朝は鶴岡八幡宮とその参道である若宮大路を中心に、その周囲に町を造っていったのだという。
その若宮大路の中心部にあるのが段葛だ。段を設けて葛石を並べて造られたことからその名がある。段葛は北条政子が懐妊したとき、安産を祈願して造営されたもので、御家人たちと共に頼朝自らも土石を運んで築いたという。造営された当時の段葛は由比ガ浜の一の鳥居から延びていたということだが、現在は二の鳥居から三の鳥居までの部分を残すのみだ。現在の段葛は若宮大路の真ん中に延びる舗道という佇まいで、両脇の車道を行き交う車を横目にのんびりと散策することができる。段葛は春は桜の名所として知られ、またツツジも見事なものだが、訪れたのは五月の半ば、緑濃い桜の葉に覆われて木漏れ日が美しかった。この段葛、鶴岡八幡宮に近づくにつれて狭く、遠ざかるほど広く造られている。遠近法を利用して実際以上に長い道のように錯覚させようという、軍事的目的があったと言われている。
段葛は周囲の石組みが緩んできたことや、桜の樹勢が衰えてきたことから、2014年(平成26年)11月から2016年(平成28年)3月にかけて改修工事が行われ、桜並木は177本の若木へ植え替えられた。改修工事が終了した2016年(平成28年)3月30日には竣工式や「通り初め」などの奉祝行事が執り行われ、歌舞伎役者の中村吉右衛門さんらも参加して大いに賑わったという。
若宮大路の両脇には飲食店や土産物店が建ち並び、行き交う人の姿も多く、いかにも観光地的な賑わいを見せる。建ち並ぶお店の中にはなかなか古そうな建物もあって良い風情だ。