岸壁を離れ、海岸線を辿る県道17号(沼津土肥線)を渡って港町の中へ入り込んでみる。家々が密集して建つ中を細い路地が抜けてゆく様子は昔ながらの港町の風情だ。建ち並ぶ家々や石垣の佇まいには郷愁を誘われるような興趣があり、町中を抜けて入り江に注ぐ川筋の景観やそこへ架けられた小さな橋の様子も素敵だ。
町中の細道を辿っていると、「〜ぶらり〜戸田歴史の散歩道」と記したプレートが設置されているのに気付く。プレートには「へだ号絆プロジェクト実行委員会」の名がある。「へだ号絆プロジェクト」はNPO法人や観光協会、商工会などによる町おこしのプロジェクトらしい。このプロジェクトによって、簡単な解説などを記した案内プレートが随所に設置されているということのようだ。
歩いて行くと、路地の交差点の角に立派な石垣があった。「へだ号絆プロジェクト」の解説プレートによると防潮堤だそうだ。伊豆石を空積みで積み上げたもので、この場所がかつて波打ち際だったことを物語るものという。「戸田南北境界線」と記されたプレートも見つけた。幕末までここが領地の境界線で、北は小笠原藩領、南は沼津藩領だったそうだ。進んでゆくと古そうな立派な建物にも出会った。旧杉山商店の建物だそうだ。案内プレートの記述によれば、杉山家は海運業などで栄えた家で、明治期から昭和期にかけて現代の総合デパート的な役割を担っていたという。
観光に訪れて町歩きを楽しむとき、こうした案内板のようなものが設置されているのは嬉しい。気付かずに通り過ぎてしまうようなものや、どのようなものかわからないままになってしまうようなものが、こうした案内によって“発見”や“出会い”に変わる。「へだ号絆プロジェクト実行委員会」の方々に、この場を借りて謝意を表しておきたい。