日向大束駅から
日向北方駅へ向かって南へ、数百メートル下った辺りに、日南線の線路と国道220号が隣り合って走る区間がある。国道を車で北から南へ走っていると、大束の町中を抜けた辺りで日南線の線路が右手から国道に近づき、やがてぴたりと寄り添い、ほんの数百メートルの区間だが、真っ直ぐに並んで走る。日南線は便数が少ないから機会は希だが、車で通りかかって日南線の車両と並走することもあって楽しいところだ。その区間のちょうど真ん中辺りに小山踏切が設けられている。
小山踏切には警報機と遮断機が設けられているが、幅は狭く、車一台がようやく通れるほどの道幅しかない。国道から踏切を渡った西側には農地が広がっている。この辺りは福島川と大平川に挟まれた台地で、「大束原台地」と呼ばれる。「シラス」と呼ばれる火山灰土壌で、水捌けの良い特性を活かしてサツマイモの栽培が盛んだ。
国道220号の東側は日向大束駅周辺の町並みが延びる形で家々が集まった集落を成している。日南線と国道とが通るところは台地の端に当たり、東側は緩やかな斜面を成して川へ向かって低くなってゆく地形だ。家々の建つところは国道から一段低く、踏切脇に建って東を向けば家々の屋根だけが見えている。
台風が接近し、空には雨雲が垂れ込め、時折激しく雨の降る日だった。道路も線路も草木も家々の屋根もしっとりと濡れている。踏切の西側には、路面が少し窪んでいるのだろう、大きな水溜まりができていた。