日南線の旅〜踏切の風景
千本越踏切
千本越踏切
日向大束駅から南下してゆく日南線は3kmほどの距離を経て日向北方駅へと至っているが、日向北方駅の700mほど手前で、この「千本越踏切」を通過する。「千本越(せんぼんごえ)」という踏切の名が素敵だ。古くからの土地の名なのか、その由来に興味を覚える。こうした名との出会いも踏切探訪の醍醐味だ。土地の人に「千本越」の由来を尋ねてみたいが、夏の盛りのお昼前、辺りにまったく人影は無かった。
千本越踏切
千本越踏切
踏切を渡ってゆく道路は車1台分がようやく通れるほどの幅だ。東へ辿れば200mほどで国道220号へ出る。「秋山岐れ」交差点のすぐ南側だ。国道220号の東側には福島川が流れている。国道220号との間には細道が辿り、その沿道に家々が並んで集落を成している。辻角にお地蔵様がたたずんでおられるところを見ると、古くからの道なのだろう。西へ辿ればすぐに広々とした農地が広がる。福島川と大平川に挟まれた「大束原台地」の南端部に当たる。「シラス」と呼ばれる火山灰土壌を活かしてサツマイモ(この辺りでは「甘藷」と呼ぶ)の栽培が盛んなところだ。踏切は東側の集落と西側の農地とのちょうど境に位置していると言っていい。

踏切の周囲は古くから人々の営みのあった「里」の風情を漂わせて美しい景観を見せる。川と台地(あるいは山)との間、昔からそうした立地に人々は暮らしの場を求め、家を建て、集落を築いた。昔から続けられてきた、そんな日々の積み重ねが感じられて、郷愁を誘われるような魅力を漂わせている。踏切から少し離れて集落の中を歩いてみれば、そうした「里」の雰囲気を楽しむことができる。
千本越踏切
千本越踏切
踏切の脇に、白い百日紅が咲いていた。真っ直ぐに伸びる線路脇には夏草が茂っている。踏切を、ときおり地元の人の車が行き過ぎる。国道を走る車の音はここまでは届かない。蝉時雨だけが辺りを埋め尽くす。静かな夏のお昼時である。
千本越踏切
千本越踏切
INFORMATION
千本越(せんぼんごえ)踏切(71K107M)
【所】串間市串間
このWEBページは「日南海岸散歩」内「日南線の旅」カテゴリーのコンテンツです。
ページ内の写真は2016年夏に撮影したものです。本文は2018年2月に作成しました。