日南線の旅〜駅の横側
大隅夏井駅
大隅夏井駅
福島高松駅を出た日南線は幾つかのトンネルを抜けながら県境を越え、宮崎県から鹿児島県へと入り、やがて大隅夏井駅に到着する。駅名は「大隅」の「夏井」の意味だ。「大隅」は鹿児島県東部地域を指す地名で、大隅半島の名などで一般に知られている。そもそもは古い時代の日本の行政区分である「国」として「大隅国(おおすみのくに)」があった。713年(和銅6年)に日向国の中から肝坏、贈於、大隅、姶良の四郡を分け、新たに「大隅国」として成立したものという。「夏井」は駅周辺の地名で、行政上は「志布志市志布志町夏井」である。「夏井」という地名は他県にもあり、特に駅名としての「夏井駅」は福島県にあり、また岩手県には「陸中夏井駅」が存在するため、それらと区別するために「大隅夏井」という駅名になったものだろう。
大隅夏井駅
大隅夏井駅 大隅夏井駅
大隅夏井駅の建つ辺りでは日南線の線路は緩やかな孤を描いており、片側使用のホームもそれに沿って緩やかな孤を描いている。駅のすぐ南は線路と併走する国道220号で、線路と国道との間に小さな駅舎が建っている。もちろん無人駅で、普段は人の姿もなくひっそりとしている。駅舎の傍らには「夏井集落案内板」が建てられており、駅周辺の地図が記されている。駅の建つ辺りは海岸から少し高みとなった台地になっており、駅付近から国道の向こうに志布志湾と大隅半島とを見ることができる。駅の北側は山林と畑が広がるばかりの長閑な風景だ。駅のすぐ西側に「夏井踏切」があり、線路の北側と南側とを繋いでいる。
夏井踏切 夏井踏切
駅から国道を渡って海岸部へと坂道を降りてゆくと夏井の集落だ。小さな漁港を抱えるように海岸部の斜面に家々が集まって夏井の集落を成している。夏井の集落は鄙びた佇まいが良い風情だ。駅舎横の「夏井集落案内板」を参考にひととき散策を楽しむのもいい。
夏井集落
大隅夏井駅はもちろん夏井の集落に暮らす人たちのためのものだが、夏井の集落のすぐ東側には景勝地である「ダグリ岬」があり、かつてはそこへ訪れる行楽客のための最寄り駅という役割もあった。しかし車社会となった今では日南線を利用して大隅夏井駅からダグリ岬へと向かう行楽客はあまり多くはないだろう。大隅夏井駅を出て西へ向かう日南線は、次はいよいよターミナルである志布志駅へと向かう。
夏井集落
INFORMATION
大隅夏井駅
【所】鹿児島県志布志市志布志町夏井
【開】1935年(昭和10年)4月15日
このWEBページは「日南海岸散歩」内「日南線の旅」カテゴリーのコンテンツです。
ページ内の写真は2007年夏に撮影したものです。本文は2009年6月に改稿しました。