田吉駅は宮崎空港線の起点駅でもあり、駅の南側で宮崎空港線が日南線から分岐して宮崎空港へと延びている。「起点駅」とは言っても宮崎空港駅へと向かう電車はすべて宮崎市方面からの乗客を乗せて日豊本線からそのまま乗り入れており、駅は、だから主として日南市方面から日南線を利用して空港へ向かう人々の乗換駅として機能していると言っていい。普段はあまり乗客の姿もないが、上りの日南線と空港へ向かう電車とが接続する時間にはホームで電車の到着を待つ人々の姿を見る。
一般には1996年(平成8年)の宮崎空港線開業に併せて新設された駅と思われているが、実は田吉駅は昔にも存在したことがある。その旧田吉駅は1971年(昭和46年)に廃止されているから、今では知らない人も多いかもしれない。廃止の理由は何だったのか、よく知らないが、おそらく交通事情の変化によって乗降客が減少したから、といったものだったのではないか。その田吉駅が宮崎空港線の開通に併せて実に四半世紀を隔てて復活したことになる。新設された宮崎空港線は電化された路線で、当然のことながら新しい田吉駅も電化され、各種の電気設備によって日南線の他の駅とは違った佇まいを見せる。
「宮崎空港線の起点駅」とは言っても駅自体は小さな無人駅で、島式のホームの両側に日南線のディーゼル車と宮崎空港へと向かう電車が行き交っている。駅舎の横手には狭いながらも広場のようなスペースがあるが、車の進入はできない。広場の隅には十台ほどの自転車が無造作に置かれている。日南線利用客の自転車なのだろう。