油津駅から南へ下る日南線は
大堂津の町に入る手前で「山王(さんのう)」と呼ばれる地区を抜ける。行政上の住所としては「日南市大字隈谷(くまや)甲」の一部なのだが、昔から地元の人はこの辺りを「山王」と呼ぶ。山王の海岸部は
猪崎鼻の北側の小さな入江で、小さな砂浜を抱えており、砂浜の奥は家々が集まって集落を成している。この入江に隈谷川という小さな川が流れ込んでいる。海岸の崖下を走ってきた日南線は隈谷川を越えて集落を横切り、猪崎鼻の根元を短いトンネルで抜けて大堂津の町へ至っている。この隈谷川河口に架かる橋梁を走るときの日南線の姿が美しい。日南線の線路よりさらに入江の奥を走る国道220号から眺めれば、橋梁の向こうには猪崎鼻の姿やその下の磯辺、山王の浜辺などが視界に収まり、沖合いには「七ツ八重」と呼ばれる小さな島々が並ぶ。隈谷川河口部の川岸でカメラを構えれば、「七ツ八重」の姿は橋梁の下に見える。橋梁の近くから見上げるようにカメラを構えれば、緑の山々を背景に日南線の車両を捉えることができる。山王の風景はたいへんに美しく、その中に溶け込むように走る日南線の車両も橋梁の姿も良い風情を漂わせている。
隈谷川河口部の河岸、橋梁の向こうに「七ツ八重」が見える場所を探し、日南線の車両を待った。お昼近く、南から北へ向かう列車が通り過ぎ、しばらくして今度は北から南へ向かう列車が走ってゆく。それをそれぞれ写真に収めた。後者は前者のものより少し寄ってみた。薄雲の広がる日だった。「七ツ八重」も橋梁も列車も、シルエットになって海が輝いていた。
(2019年夏撮影)
隈谷川河口、橋梁のすぐ近くで南からやってくる「海幸山幸」を撮影した。青い夏空と緑の山肌が鮮やかなコントラストを見せ、その中に日南線の線路が美しい弧を描いて延びている。2枚目の写真は、橋梁を過ぎて海岸を走ってゆく「海幸山幸」を撮影したものだ。3枚目の写真では、北からやってくる車両を山王の浜の南側から撮影した。こちら側から隈谷川橋梁を走る日南線を捉えた写真は少ないと思うが、美しい風景である。
(2018年夏撮影)
国道220号の歩道から撮影したものだ。線路の向こうには山王の浜と猪崎鼻の姿が見えている。沖合いに浮かぶ、三角に尖った姿で並ぶ大小の島々が「七ツ八重」だ。国道220号が山裾を辿る坂道になっており、日南線の線路より少し高みにあるため、うまく場所を探せばこうした角度での撮影が可能だ。
(2017年夏撮影)