油津駅から大堂津駅へ向かう日南線は、大堂津に着く直前、山王の集落を抜けてゆく。山王地区は猪崎鼻の北側に位置する入江で、小さな浜辺を抱えている。「山王」の名は少し内陸部に入ったところに山王神社が鎮座することに由来するのだろう。行政上の住所では「隈谷甲」なのだが、地元の人は「山王」と呼んでいる。「山王」は正しくは「さんおう」らしいが、「さんのう」と発音することが常だ。この山王地区に設けられた日南線の踏切が「山王踏切」である。山王の集落は線路によって東西に分断された形であるため、線路より東側、すなわち海側の家々の人たちにとってはなくてはならない踏切である。